伝説を築く「ブルー」の真価（１） ～知られざる団体球技の王国フランス～
――１９９８年ワールドカップ、２０００年欧州選手権とサッカー界の国別対抗戦のタイトルを連取したフランス。日本でも来年のワールドカップに向けてフランス・サッカーに関心が高まっているであろう。このコラムではサッカーを通じて、フランスという国を少しでも日本の皆さんに理解していただければ幸いである――
世界チャンピオン、欧州チャンピオンとなり新世紀に向けて自信あふれるサッカーフランス代表チーム。しかし忘れてならないのは、ほかの団体球技においてもフランス勢が活躍していることである。
新世紀最初の世界選手権はフランスで行われた第１７回男子ハンドボール世界選手権。３８年に創設されたこの世界選手権のフランス開催は７０年に続き２回目。名将ダニエル・コスタンティニ率いる「ブルー（フランス代表チームの愛称）」は決勝に進出する。パリ・ベルシー多目的スポーツセンターで行われたディフェンディング・チャンピオンのスウェーデンとの戦いは、規定の６０分が終了する１４秒前にグレッグ・アンケティルの同点ゴールで追い付き、２２－２２のタイスコア。１０分間の延長戦に突入し、２８－２５で９５年大会に続く２回目の優勝を果たし、新世紀を迎えたフランス国民に対して勇気と希望を与えたのである。
オリンピックやワールドカップ、欧州選手権などの国際大会はフランスの提唱で始まったものだが、１９２４年のパリ・オリンピックの男子水球で優勝したことはあるものの、意外なことにそれ以来、団体球技でフランスがオリンピック、世界選手権で世界一になったことはつい最近までなかった。８４年のロサンゼルス・オリンピックのサッカー競技で、フランスは団体球技で６０年ぶりの金メダルを獲得する。この時はブラジルを破っての優勝だったが、サッカーの場合、オリンピックでは選手のエントリーに年齢制限などがあるため、金メダルは獲得したものの、世界の頂点に立ったとは言えないだろう。
フランスが団体球技の世界選手権で初めて優勝したのは、前述の９５年の男子ハンドボール世界選手権だった。アイスランドで開催された大会の初戦、フランスは日本を３３－２０と一蹴。決勝ではクロアチアを２３－１９と破り世界の頂点に立ったのである。そして、男子の活躍に触発された女子も９９年の世界選手権で準優勝を果たした。
同じく準優勝に終わったものの、昨年のシドニー・オリンピックでも男子バスケットボールチームが決勝に進出、アメリカ“ドリームチーム”を相手に互角に戦った。オリンピックでのメダル獲得数も９６年のアトランタ大会では３７個、シドニー大会では３８個、第２次世界大戦以降の最高を更新している。
今年の６カ国対抗ではアイルランド、ウェールズに不覚を取ったが、ラグビーも９９年のワールドカップでは準決勝でニュージーランドに快勝。決勝ではオーストラリアに敗れたものの、８７年の第１回大会に続く２度目の準優勝は北半球の国では最も優れた成績である。
サッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、ラグビーが男子の団体球技の中ではメジャーな存在だが、これらの競技の過去１０年間に行われた世界選手権、オリンピックの双方でフランスは３度の世界一（９５年ハンドボール世界選手権、９８年サッカーワールドカップ、２００１年ハンドボール世界選手権）に加え、準優勝３回（９３年ハンドボール世界選手権、９９年ラグビーワールドカップ、２０００年バスケットボールオリンピック）、３位３回（９２年ハンドボールオリンピック、９５年ラグビーワールドカップ、９７年ハンドボール世界選手権）と素晴らしい成績を残している。世界一になった回数だけを比べると、男子バスケットボールでオリンピック３回、世界選手権１回の優勝を果たしているアメリカには及ばないが、フランスはバレーボール以外の４種目で準優勝以上の成績を残している。これに迫る成績を残しているのはバレーボールとバスケットボールで活躍しているユーゴスラビアぐらいであろう。
また歴史的に見ても、この成績は５０年代から６０年代にかけてのチェコスロバキア、７０年代のソ連、ポーランドに勝るとも劣らない。これらは冷戦下において西側諸国ではサッカー以外のプロ化が未成熟であった時代のものであり、近年のフランスの成績を再認識する次第である。
次回以降は、この団体球技の王国フランスで最も愛され、注目を集めているサッカーについてご紹介することにしよう。（続）
| 1924年 | オリンピック（パリ） | 水球 | 優勝 |
| 1984年 | オリンピック（ロサンゼルス） | サッカー | 優勝 |
| 1987年 | ワールドカップ（ニュージーランド・オーストラリア） | ラグビー | 準優勝 |
| 1993年 | 世界選手権（スウェーデン） | ハンドボール | 準優勝 |
| 1995年 | 世界選手権（アイスランド） | ハンドボール | 優勝 |
| 1998年 | ワールドカップ（フランス） | サッカー | 優勝 |
| 1999年 | ワールドカップ（イギリス・フランス） | ラグビー | 準優勝 |
| 2000年 | オリンピック（シドニー） | バスケットボール | 準優勝 |
| 2001年 | 世界選手権（フランス） | ハンドボール | 優勝 |
