歴史を切り開くアフリカの雄――チュニジア代表 自主独立の精神がもたらした3度目のワールドカップ(3/4)

■雪辱への序章

 98年ワールドカップ・フランス大会での敗退を受けて、代表監督にはイタリア人のフランチェスコ・スコグリオがイタリアのジェノアから就任した。スコグリオ監督の初仕事となったのは2000年のアフリカ選手権予選。リベリア、アルジェリア、ウガンダと同じグループで難なく5連勝。2つ目の仕事となる本大会出場を決めた後の最終戦こそリベリアに0-2と敗れたが、5勝1敗、得点13、失点3という見事な成績でナイジェリアのラゴスに乗り込む。初戦で地元のスーパーイーグルスことナイジェリアに2-4と敗れ、続くモロッコ戦はまたもや0-0のドロー。そして最終戦のコンゴ戦で1-0と勝ち、決勝トーナメントに進出する。決勝トーナメントではエジプトに1-0と勝利するが、準決勝で優勝したカメルーンに0-3で敗れる。3位決定戦でも南アフリカにPK戦で3-4と敗れるが、4位はワールドカップ・フランス大会の雪辱を期すに十分な成績である。
 スコグリオ体制の第3幕は、2002年のワールドカップとアフリカ選手権の予選の突破である。この2つの予選は並行して行われるが、ワールドカップ予選の方が一足先に始まった。一次予選でモーリタニアを下したチュニジアは、コートジボワール、コンゴ、コンゴ民主共和国、マダガスカルと同じグループDに入る。6月に最大のライバルであるコートジボワールとアウエーで引き分け、7月にはマダガスカル相手にホームで1-0の辛勝とし、ここでアフリカ選手権の予選に切り替わる。アフリカ選手権予選は宿敵モロッコ、ガボン、ケニアと同じグループ3に入り、9月のケニアとの開幕戦ではアウエーでスコアレスドロー、10月のホーム開幕戦ではガボンを4-2と下し、新世紀を迎える。
 新世紀最初の試合はホームにモロッコを迎えたアフリカ選手権予選。しかし、この試合を0-1で落としてしまう。これは両国のワールドカップ予選、アフリカ選手権予選の試合を通じて、初めてホームチームが敗れた試合にもなった。その後、再びワールドカップ予選に切り替わり、アウエーでコンゴ、ホームでコンゴ民主共和国に連勝し、前半戦を終えた2月末の段階でグループトップに躍り出る。しかし、ここで思わぬアクシデントが起こる。スコグリオ監督が古巣のジェノアに戻るため、代表監督を辞任する。そのため、国内リーグの強豪のCSスファクスの監督であったドイツ人のエクハルト・クローツェンが指揮を執ることになる。クローツェン監督のデビューは3月のアフリカ選手権予選、アウエーでの対モロッコ戦。ホームで敗れているだけに雪辱を果たしたいところであったが、再び0-2と敗れる黒星デビューであった。

■復活の地「キンシャサ」で決めた3度目のW杯出場

 ワールドカップ予選の後半戦最初の試合は、5月5日のマダガスカル戦。決して強敵ではないが、チームの結束を図るため、クローツェン監督は4月24日から5月2日までの間、マダガスカルの隣島となるフランスの海外県レユニオンで合宿を行った。チュニジアはマダガスカルを2-0と下した後、天王山となった5月20日のホームでのコートジボワール戦を迎える。結果は限りなく勝利に近い1-1の引き分けで、ワールドカップ本大会に向けて前進する。
 6月にはアフリカ選手権予選が2試合行われ、アウエーでガボンに1-1と引き分ける。最終戦を残して首位モロッコは勝ち点10。チュニジアはガボンと勝ち点5で並び、得失点差の勝負となる。得失点差は、ケニアをホームに迎えるチュニジアが-2、モロッコに乗り込むガボンは-1。6月17日の最終戦で逆転を狙うチュニジアは、攻撃陣が期待にこたえ、アリ・ジトゥニ、ジエッド・ジャジリが前半にそれぞれ2得点を挙げ、後半のケニアの反撃を1点に抑えて、4-1の勝利。勝ち点を8に伸ばし、得失点差も+2とする。一方、ガボンはモロッコに1-0と勝つが、得失点差は0にとどまり、チュニジアはライバルモロッコの後塵を拝しながらも、アフリカ選手権本大会の切符を手に入れたのである。
 残るはワールドカップへのチケットである。6月末の段階で首位チュニジアは勝ち点14で残り試合は2試合。勝ち点11で追う2位コートジボワールは残り試合がチュニジアよりも1試合多い。7月1日、チュニジアはコンゴを、コートジボワールはマダガスカルをそれぞれホームに迎え、両者とも6-0と大勝する。チュニジアの最終戦は7月15日、キンシャサでのコンゴ民主共和国戦。同日同時刻にコートジボワールはザイール川の対岸のブラザビルでコンゴと戦う。この川を挟んだ2つの戦いが明暗を分けた。
 コートジボアールは旧フランス領で、1-1の引き分けに終わる。チュニジアは旧ベルギー領で、まず15分にカレッド・バドラがヘッドで先制点、後半に入って51分、53分と立て続けにズベイル・ベヤが連続得点し、3-0で見事に勝利を収めた。モハメッド・アリが復活したキンシャサの地で、チュニジアは3度目のワールドカップ本大会出場を決めたのである。<続く>

このページのTOPへ