第2992回 ワールドカップ組み合わせ抽選前の親善試合(6) 代表初先発となるウィリアン・サリバ、ジョナタン・クロース、マイク・メニャン

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■キリアン・ムバッペが復帰した南アフリカ戦

 フランスは、コートジボワール戦が行われた南仏のマルセイユから、北部のリールに移動して南アフリカと対戦する。コートジボワール戦ではクリストファー・ヌクンク、ウィリアン・サリバ、ジョナタン・クロースの3人が代表にデビューした。そして得点をあげたのは欧州選手権以来の復帰となったオリビエ・ジルーと代表初ゴールとなったオーレリアン・チュアメニであった。ディディエ・デシャン監督としては勝敗だけではなく、新戦力のテスト、カリム・ベンゼマ、キリアン・ムバッペの不在を十分にチームとしてカバーできたことで満足であろう。
 南アフリカ戦はムバッペが体調不良から復帰したこともあり、メンバーを入れ替えて臨むことになった。GKはマイク・メニャン、3人のDFは右からサリバ、ラファエル・バラン、プレスネル・キンペンベ、MFは右からクロース、エンゴロ・カンテ、アドリアン・ラビオ、ルカ・ディーニュ、そしてトップ下にアントワン・グリエズマンが控える。FWは2トップで右にムバッペ、左にジルーを起用した。
 コートジボワール戦でデビューした3人の新人のうち、ヌクンクは先発、サリバとクロースは交代出場であった。南アフリカ戦ではサリバとクロースが先発出場となる。

■地元マルセイユで代表デビューを果たしたウィリアン・サリバ

 コートジボワール戦でサリバはマルセイユ所属としてフィリップ・トーバン以来の代表選手となり、ベロドロームでデビューを飾った。所属クラブの本拠地で代表にデビューするというのは極めて珍しいケースであり、1994年にボルドーで代表デビューを飾ったジネディーヌ・ジダンを思い出されるファンの方は少なくないであろう。また、マルセイユ所属の選手がマルセイユでの代表戦に出場するということも稀有なことである。マルセイユでのフランス代表戦は6年前の欧州選手権以来のことであるが、この大会では2試合をマルセイユで行ったが、マルセイユ所属のスティーブン・マンダンダは試合に出場できなかった。マルセイユ所属の選手がベロドロームでの代表戦に出場したのは2014年11月のスウェーデン戦のディミトリ・パイエまでさかのぼらなくてはならない。

■リールのライバルのRCランス所属のジョナタン・クロース

 歴史的なデビューを飾ることができたサリバであるが、南アフリカ戦でその逆となったのがクロースである。クロースはRCランスの所属である。RCランスとライバル関係にあるのがリールであり、リールとRCランスの試合は北部ダービーとしてリヨン-サンテチエンヌ戦、パリサンジェルマン-マルセイユ戦とは異なる盛り上がりを見せる。もともとこの地域は炭鉱産業で栄え、そこで働いていた労働者がこの地域のサッカーを支えてきた。日本の皆様には川筋気質という言葉を紹介すれば、よくご理解できるであろう。
 リールで代表戦が行われるのはマルセイユと同じく2016年の欧州選手権以来のことである。ファンの関心は高く、早々にチケットは完売となる。4万8000人という満員の観衆の中で選手紹介が行われたが、RCランス所属のクロースの名前が呼び上げられると拍手とブーイングが交錯したのである。

■昨季までリールに所属していたマイク・メニャン、リールで代表初先発

 一方、拍手喝采一色だったのがGKのメニャンである。現在はイタリアのACミランに所属しているが昨季まで長らくリールのゴールを守ってきた。年代別代表の常連であり、2019年に初めて代表に呼ばれたが、ウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダの陰に隠れてなかなか試合に出場できなかった。ようやく2020年10月のウクライナ戦、相手が新型コロナウイルスの感染者が多発したこともあり、試合は大差となる。この時に後半からマンダンダに代わって出場したのが、これまで唯一の代表経験である。そして長期間所属していたリールで初先発を飾ったのである。なお、これまで主将を務めてきたロリスに代わって、守備陣で唯一2試合連続での先発となるバランが主将を務めるのである。(続く)

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