第3589回 若きラグビーフランス代表、ニュージーランド遠征(3) トライが3回キャンセル、ニュージーランドが辛勝
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■メンバー23人中8人がノンキャップ、フランスBと揶揄される
7年ぶりとなったニュージーランド遠征を行うフランス、国内事情からチーム編成がこの夏も難航し、初キャップ5人を含む経験の浅いメンバー中心でニュージーランドとの第1テストに臨む。8人のリザーブメンバーもそのうち3人はノンキャップである。23人中8人がノンキャップで世界ランキング2位のニュージーランドとアウエーで戦う。フランスBと揶揄されるチームに対し、ホームのニュージーランドはナンバーエイトのクリスチャン・リオ・ウィリーとロックのファビアン・ホランドという2人の初キャップ選手こそいるものの、ほぼベストメンバー、オールブラックスが大勝するのではないかという予想の中で試合が始まった。また、この試合のアシスタントレフェリーを日本の滑川剛人氏が務めたことから、日本でも注目の一戦となった。
■代表デビュー戦でロングキックを決めたジョリス・スゴン
しかし、この試合は意外な展開の連続となる。ニュージーランドのキックオフで試合が始まったが、開始1分もたたない段階でニュージーランドのウイングのセブ・リースがフランスのスタンドオフのジョリス・スゴンにタックルした際に脳震盪、試合継続が不可能となる。早速ニュージーランドはリザーブのダミアン・マッケンジーがピッチに登場することになる。
そしてフランスは7分にハーフライン付近でペナルティを獲得する。ここで主将のガエル・フィクーはショットを選択する。トライにこだわるのではなく、得点チャンスがあればペナルティキックで3点狙うことは国際試合の定石であるが、今回はそれだけではない。初キャップとなったスゴンがキッカーであるが、バイヨンヌに所属するスゴンはロングキッカーでありプレースキックを得意とする。28歳になるまで代表に選出されなかった理由としてはスタンドオフにもプレースキッカーにも多くの人材がいたからであるが、代表初のショットは見事に成功、フランスは3点を先制する。
■8点リードで後半を迎えるニュージーランド
ニュージーランドは16分にスクラムハーフのロイガードがフランスの選手を交わしてノーマークのジョーディー・バレットにパス、ジョーディー・バレットはそのままトライラインに一直線、逆転トライかと思われたが、一連のプレーでニュージーランドのニューウェルがノックフォワードが認められ、トライは取り消され、フランスボールのスクラムとなる。フランス陣内にやや入ったところのスクラム、フランスは左に展開し、バックスラインにフルバックのテオ・アティソグベが入って、段違いのスピードを見せつけ、一気にニュージーランドのゴールラインに迫る。その後、FWとBKがボールをつなぎ、最後はフィクーが持ち込んだところをナンバーエイトのミカエル・ギヤールがゴールポストの下にトライ、ゴールも決まって10-0とリードを広げる。
20分にニュージーランドはフランスのゴールラインの前で左右に展開、最後は右隅にフルバックのウィル・ジョーダンがトライ、ボーデン・バレットが難しい角度からのゴールも成功させる。さらに26分にはゴール前のラインアウトから中央に展開してマッケンジーがゴール前に迫り、トゥポゥ・バアイがトライし、ゴールも決まって14-10と逆転する。
33分にラインアウトでニュージーランドが反則、今度はルギャレックがショットを狙い成功して13-14と1点差に迫る。ただ、ニュージーランドは前半終了間際にまたもゴール前の鮮やかなオープン攻撃でジョーディー・バレットが右大外にトライ、ボーデン・バレットがゴールを決めて21-13というスコアでハーフタイムを迎える。
■数的有利な時間帯に2回のトライキャンセルのあったニュージーランド
後半開始時に両チームは得点を重ねる。43分にフランスはギャバン・ビリエールのトライ、ルギャレックのゴールが決まって1点差とするが、47分にニュージーランドはジョーダンのトライ、ボーデン・バレットのゴールで8点差、しかし、フランスも50分にキャメロン・ボキのトライ、ルギャレックのゴールで1点差とする。
55分にビリエールがデリバレイトノックフォワードで10分間の退場、フランスは窮地を迎える。ニュージーランドは57分と63分にトライをするが、いずれもTMOでキャンセルとなり、差を広げられない。終盤にニュージーランドはペナルティゴールで3点を追加し、31-27というスコアでようやく勝利したのである。(続く)