第336回 欧州連覇目指すフランス(2) 「引き算方式」と10人のバックアップメンバー

■シーズン終了前に発表されたポルトガル行きのメンバー

 23人のフランス代表が発表されたのが5月18日。実はこの段階ではまだシーズンが終了していない。本連載の読者の皆様ならよくお分かりと思うが、19日にはUEFAカップ決勝(マルセイユ-バレンシア)、21日と23日にはフランスリーグ最終節、26日にはチャンピオンズリーグ決勝(モナコ-ポルト)、29日にはフランスカップ決勝(パリサンジェルマン-シャトールー)というクラブレベルでの試合がある。一方、代表チームは20日にはFIFA創立100周年記念試合(フランス-ブラジル)を戦い、24日から29日までモンペリエ近郊のグランド・モットで第一次合宿に入り、28日にアンドラと親善試合を行う。そして第二次合宿は6月1日から8日までクレールフォンテーヌで行い、6日にウクライナと親善試合、第二次合宿終了後、決戦の地ポルトガルへ飛び立つ。

■代表入りにもれた10人はバックアップメンバーに

 すなわち、メンバーを発表してから、それぞれの選手が少なくとも1試合あるいは2試合を消化してから、第一次合宿に入り、その後も親善試合や第二次合宿を行うため、アクシデントも十分考慮しなくてはならない。そのアクシデントに備えて、ジャック・サンティーニ監督は23人のメンバーに漏れた10人の選手をバックアップメンバーとして位置づけ、代表に帯同させることになった。GKのウルリッヒ・ラメ、DFのフィリップ・メクセス(オセール)、パトリス・エブラ(モナコ)、セバスチャン・スキラッチ(モナコ)、ベルナール・メンディ(パリサンジェルマン)、MFのウスマン・ダボ(ラツィオ・ローマ)、ジョアン・ミクー(ベルダー・ブレーメン)、オリビエ・カポ(オセール)、FWのペギー・リュインデュラ(リヨン)、シドニー・ゴブー(リヨン)と言うメンバーである。代表歴の全くないスキラッチ、メンディ、エブラという20代そこそこのメンバー、サンティーニ体制になってから代表入りしたが、一歩とどかなかった20代前半から半ばのゴブー、メクセス、カポのようなメンバー、そしてラメやミクーのように2002年のワールドカップのメンバーにエントリーした経験のある30代の選手の3つに大別される。

■代表招集の「引き算方式」と「足し算方式」

 2年前のワールドカップ時には直前の親善試合でジネディーヌ・ジダンが負傷したが、ジダンのバックアップのメンバーが不在であったことがグループリーグ敗退の理由であると言うのは本連載第71回で論じたとおりである。そして1998年ワールドカップの際は代表候補選手として多めにメンバーを招集し、そのメンバーを絞るという「引き算方式」であったが、代表選手の国外流出に伴い、2000年の欧州選手権からはシーズン後に集まることができる選手を順次招集するという「足し算方式」になり、2002年ワールドカップでも踏襲されたことは本連載第65回で紹介している。
 しかし、この「足し算方式」が2002年ワールドカップの場合はバックアップメンバーの不在につながってしまったことはいうまでもない。今回は2002年ワールドカップ敗退の反省を踏まえ、「引き算方式」をとり、あらかじめバックアップメンバーを準備しておくことになったのである。

■「引き算方式」の問題点

 もちろん、この「引き算方式」にも問題点はある。それは選に漏れた「バックアップメンバー」がショックを受けることである。1998年ワールドカップの際はイブラハム・バ、ニコラ・アネルカ、リオネル・レティジなど5人がメンバー落ちを宣告され、大きなショックを受けた5人はクレールフォンテーヌの合宿所から姿をくらまし、レティジなどはタクシーで当時所属していたメッスまで帰ってしまう。この反省ならびにクラブチームの日程の多様化により2000年欧州選手権からは「足し算方式」に変更したが、結局2002年ワールドカップの失敗を受けて「引き算方式」に戻したわけである。しかし、今回も、ミクーだけはメンバー落ちに納得が行かず、代表チームからの離脱を早々に表明している。
 そして、チャンピオンズリーグでも活躍してきたジウイーは本連載第333回でご紹介したとおり、所属クラブでの今季最後戦となったチャンピオンズリーグ決勝で負傷しており、バックアップメンバーの中からリヨンの3連覇に貢献したゴブーが代わりに入ることになったのである。(続く)

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