第337回 欧州連覇目指すフランス(3) アンドラ戦で意地を見せたシルバン・ビルトール

■代表発表直後のブラジル戦はスコアレスドロー

 5月18日のメンバー発表を受けて、ポルトガルへの航海の最終ステージが始まったフランス代表。メンバー発表直後のジョアン・ミクーのチームからの離脱宣言と言う事件もあったが、20日には本連載第329回で紹介したブラジルとの親善試合が行われた。この試合には19日のUEFAカップ決勝に出場したマルセイユのファビアン・バルテス、チャンピオンズリーグ決勝に備えて21日に国内リーグの最終戦が繰り上げられたモナコのジェローム・ロタン、ルドビック・ジウイーなどがメンバーからはずれ、バックアップメンバーのオリビエ・カポ、ベルナール・メンディが試合に出場し、スコアレスドローという結果に終わっている。

■今回も気がかりなリーグ最終戦と本大会初戦の間隔

 フランスリーグが23日に終了し、24日からフランス代表はモンペリエ近郊のグランド・モットで合宿に入った。欧州の主要リーグの最終戦はフランスが5月23日であり、これはスペインと同じであるが、それ以外はみなフランスよりも早くリーグ最終戦を終えている。イングランドは15日、イタリアは16日、ドイツは22日がリーグ最終戦である。
 2002年ワールドカップ敗退の理由については本連載第71回から第84回にかけて詳しく分析しているが、選手がクラブでの1年の戦いの疲労を取ることなく韓国入りしていたことはその一つである。2年前の韓国で惨敗したポルトガルは今回の地元開催の欧州選手権に向けて、リーグ日程を大幅に繰り上げ、ポルトガルリーグの最終戦は5月9日であり、選手を十分に休養させてから本大会に望むと言うスケジュールの調整を行っている。ちなみにポルトガルリーグのチャンピオンとなったポルトは休養十分な状態でチャンピオンズリーグの決勝を戦い、その結果はよくご存知であろうが、モナコのためにフランスでリーグの試合日程を1日や2日繰り上げても大勢に影響はなかったという見方もできる。
 多くのフランス代表選手が国外のリーグに所属しているとはいえ、23人中8人が所属している地元フランスリーグの最終戦とフランス代表の初戦のイングランド戦(6月13日)の間はわずか21日、実は2002年のワールドカップの際ですらリーグ最終戦と本大会での初戦のインターバルは27日存在した。この準備期間の短さは今回も気がかりな点である。

■2000年欧州選手権予選で苦戦したアンドラと対戦

 そのような日程面の不安がよぎる中、第一次合宿はモンペリエ近郊のグランド・モットで行い、23人のメンバー全員が集合した。合宿期間中の28日にモンペリエでアンドラと親善試合を行い、控えメンバー中心の陣容で試合を行った。相手のアンドラは2000年欧州選手権予選でフランスと同組に入る。1998年ワールドカップに続き2000年欧州選手権も優勝したフランスであるが、2000年欧州選手権の予選は楽に突破できたわけではない。特に欧州選手権予選に初めてエントリーしたアンドラには楽勝と予想されたが、ホームでは前半に得点をあげることができず、後半に入ってようやく2点を取って2-0の勝利、そして国内に大きなスタジアムのないアンドラはホームゲームをスペインのバルセロナで戦う。そのようなアドバンテージがあったにもかかわらず、フランスは終了間際のフランク・ルブッフのPKでようやく勝利をものにしている。実力差がありながらも簡単に勝てなかった相手を過去の教訓として本大会のスパーリングパートナーに選ぶところに、今大会のフランスの心意気を感じることができる。

■ビルトール、2得点1アシストの大活躍

 モンペリエでは久しぶりのフランス代表の試合となるが、相変わらず空席が目立つ。フランス協会は来場者へのプレゼントという企画を行ったが、あまり効果がなかったようである。サンティーニ監督は先発メンバーにブラジル戦で出番のなかった選手を5人送り出す。フランスは過去2回の対戦同様、なかなか得点を奪うことができない。そして前半終了間際にゴールネットを揺らしたのはシルバン・ビルトールであった。所属チームのアーセナルでの出場試合数が少なく、今回の代表入りに対して疑問符のついたビルトールであったが、先制点でその批判を吹き飛ばした。またビルトールは後半に入って55分にも追加点、65分のルイ・サアの3点目のアシストと大活躍、そして74分にはスティーブ・マルレが4点目を決めて、オランダ、ブラジルと強豪相手のスコアレスドローが続いたフランスは久々の勝利を上げたのである。(続く)

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