第774回 フェロー諸島、リトアニアと連戦(2) アーセナルOBの活躍でフェロー諸島に大勝

■多くのフランス人選手が在籍してきたアーセナル

 前回の本連載ではフランス代表に招集されたメンバーのうち最大勢力がイングランドのアーセナルになったと紹介した。ほんの10数年前まで、フランス代表の選手が国外のクラブに所属することは珍しかった。ところがボスマン判決以降、代表選手の国外流出はとどまらず、代表選手ばかりか若年層の選手も国外のビッグクラブに移籍していった。特にアーセナルはフランス人監督アルセーヌ・ベンゲルの存在もあり、多くのフランス人選手が在籍し、フランス代表に選手を供給してきた。その第一号は今回は選出されなかったものの、パトリック・ビエイラであり、10年前の1997年のことである。そしてその後エマニュエル・プチ、ロベール・ピレス、ティエリー・アンリなど9人の選手をフランス代表に送り込み、チーム全体のフランス代表出場数は296、国外のチームでは最多であり、クラブ別では9位にランクされている。
 そして若手の選手が多いのも特徴である。日本からアーセナルに移籍したケースもまだワールドカップに出場したこともない稲本潤一であったことからよくお分かりであろう。
 今回フランス代表に入った5人もウィリアム・ギャラスは30歳であるが、バカリ・サーニャは24歳、ラッサナ・ディアラは22歳、アブー・ディアビーは21歳、マテュー・フラミニは23歳である。そしてラッサナ・ディアラとディアビーはアーセナルの選手として代表にデビューしている。また現在はイングランドのボルトンに所属しているが、ニコラ・アネルカも代表デビュー当時はアーセナルの選手であった。

■リヨンの若手、ハテム・ベンアルファが初招集

 本大会出場のために連勝が必要となったフェロー諸島、リトアニアとの連戦に向けてフランス代表は準備に入ったが、まずルイ・サアが負傷のためリタイアしてしまう。攻撃陣ではダビッド・トレゼゲも招集しておらず、レイモン・ドメネク監督は代わりの新人FWを招集する。それがリヨンのハテム・ベンアルファである。リヨンについては本連載でしばしば取り上げているが、読者の皆様にとっては印象の薄い名前であろう。まだ20歳でシーズン前のピースカップでの活躍をご記憶の読者の方もいらっしゃるであろうが、リーグ戦での出場機会は少なく、今季が4季目であり、昨年までのリーグ戦の通算出場試合は34試合、今季もまだ5試合しか出場していない。そのベンアルファをレイモン・ドメネク監督は抜擢し、リヨンから4番目の選手となったのである。

■ティエリー・アンリ、ミッシェル・プラティニに並ぶ41ゴール

 さて、フェロー諸島のトースハウンでのアウエーゲームは思わぬ遠い道のりとなった。パリからの飛行機は荒天に遭遇し、途中スコットランド、ノルウェーで足止めをくらい、本来はUEFAの規定どおりの前日にフェロー諸島入りする予定だったが試合の3時間前にようやく到着、そのままキックオフを迎えた。
 フランスのメンバーはいくつかの驚きがあった。まず、負傷を抱えているギャラスがベンチスタートで、中央はアビダルとテュラムが固めた。右サイドはサーニャが代表初先発となり先発の中で唯一のアーセナル勢となる。そして左サイドのMFにはフローラン・マルーダではなくジェローム・ロタンが起用された。また守備的MFのパトリック・ビエイラの欠場はジェレミー・トゥーラランが補った。
 2トップはアンリとアネルカという2人のアーセナルOBである。このアーセナルのOBが序盤から爆発する。7分にアネルカ、8分にアンリが得点し、試合展開は楽になった。アンリは代表41得点目でミッシェル・プラティニに並ぶ。

■ベンアルファ、代表デビュー戦で初ゴール、リヨンの意地を見せる

 後半開始時にアネルカに代わり、リヨンのカリム・ベンゼマが登場すると、49分にいきなりゴールを決める。65分にはロタンが代表として初ゴール、パリサンジェルマンの選手としても久々のゴールとなった。ベンゼマは79分にも得点を挙げる。そしてこの試合で代表デビューを果たしたのは前回の本連載で紹介したフラミニではなく、追加招集されたベンアルファであった。後半半ばに登場したベンアルファはロスタイムの93分に得点を挙げ、代表デビュー戦で初得点を記録し、台頭するアーセナル勢に対し、国内の雄リヨンの一員としての意地を見せたのである。
 6-0と大勝したフランスは第一関門を突破、ナントでのリトアニア戦に向かったのである。(続く)

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