第784回 欧州選手権予選ファイナル(2) アンリ・ミッシェル、スタッド・ド・フランスに初登場

■2年ぶり15回目のアフリカ勢との対戦となるフランス

 欧州選手権予選の最終戦となるウクライナ戦の勝利を目指しフランスはスタッド・ド・フランスにモロッコを迎え親善試合を行った。フランスにとってアフリカ勢との対戦はジネディーヌ・ジダンの代表復帰試合となった2005年8月のモンペリエでのコートジボワール戦以来2年ぶりのことである。
 これまでにフランスはアフリカの7か国と14回対戦したことがあるが、その半数はマグレブ諸国と言われるモロッコ(4試合)、アルジェリア(1試合)、チュニジア(2試合)の3か国である。そして残りの3か国はアフリカの古豪エジプト(1試合)、次回のワールドカップ開催国南アフリカ(3試合)、ワールドカップでの実績のあるカメルーン(2試合)、成長著しいコートジボワール(1試合)となっている。

■アフリカ勢の中で最多の対戦歴を誇るモロッコ

 このようにモロッコとはこれまでも4回対戦し、アフリカ勢の中では最も多く対戦している。過去の戦績はフランスの3勝1分、1998年のワールドカップの直前にカサブランカで行った試合で2-2のドローとなっている以外は、フランスがホームで2勝、アウエーで1勝している。最後の対戦は2000年6月6日のハッサン二世杯での対戦であり、フランスが5-1と勝利している。
 モロッコは1998年のワールドカップ出場を最後にワールドカップの本大会出場から遠ざかり、アフリカ選手権では2004年大会で決勝に進出したが、開催国のチュニジアに敗れている。当面の目標は来年の年明けに行われるアフリカ選手権であるが、開催国のガーナと同じグループAで戦うことになる。その準備のために11月16日にスタッド・ド・フランスでフランス戦、そして21日にはクレテイユでセネガル戦を行い、32年ぶり2度目のアフリカ王者となることを目論んでいる。

■アフリカ勢としてフランス相手に初勝利を狙うモロッコ

 しかしこのフランス-モロッコ戦はフランスにとっては欧州選手権予選のウクライナ戦の準備という位置づけであるが、モロッコにとっては単純にアフリカ選手権への準備という位置づけだけではないのである。
 モロッコはこれまでフランスに勝利したこそこそないが、密かに歴史的勝利を狙っている。これまでにフランスのアフリカ勢との対戦成績は10勝4分であり、フランス相手にアフリカの代表チームが勝利したことはない。アフリカのチームとしてフランスに勝利すれば歴史的な勝利となる。モロッコが歴史的初勝利を狙う特別な理由がある。

■母国との4回目の対戦の舞台はスタッド・ド・フランス

 それはこのモロッコを率いる監督がアンリ・ミッシェルだからである。かつてのフランス代表監督であり、1988年2月5日にフランスが初めてモロッコと対戦した際にフランスを率いていた監督である。このときはモナコで試合が行われ、フランスが2-1と勝利しているが、その年の秋から始まった1990年ワールドカップ・イタリア大会予選で苦戦を続け、予選期間中に更迭されるとはミッシェル監督自身全く考えていなかったであろう。
 フランスを追われたミッシェル監督はその後、パリサンジェルマンとギリシャのクラブチームの監督を一時期務めた以外はアフリカ、中東での代表チームやクラブチームの監督を歴任している。実は母国の代表チームとの対戦はこれが3回目である。最初と2回目はモロッコ代表の監督としてフランス相手に戦い、1998年5月にカサブランカで引き分け、1999年1月にはマルセイユで敗れている。そして3回目は2005年8月にコートジボワールの監督としてモンペリエで戦っている。このコートジボワール戦については本連載の第468回から第470回で紹介しているが、ミッシェル監督率いるコートジボワールは0-3で敗れている。そして4回目の戦いにして初めてミッシェル監督は母国の新たなる聖地でフランスと戦う。モロッコ代表監督として1998年のワールドカップに出場した際もグループリーグで敗退し、スタッド・ド・フランスのピッチに立つことなくミッシェル監督は母国を後にしている。したがってミッシェル監督にとって今回のフランス戦は待ちに待った戦いなのである。(続く)

このページのTOPへ