第861回 オランダに歴史的大敗(1) 1992年以来の欧州選手権イヤーの対戦

■イタリアを一蹴した第1シードのオランダ

 欧州選手権の第1戦でフランスはルーマニアとスコアレスドロー、残る2試合の相手がオランダとイタリアと言うことで、フランス中が危機感をつのらせた。ルーマニアに対しては勝ち点3をとって第2戦以降に臨むという目論見が見事に外れ、ベルンでのオランダとの第2戦の日がやってきた。
 ルーマニアと引き分けたその直後にグループCのもう1つの試合であるオランダ-イタリア戦がキックオフされ、微妙な先制点で先制したオランダは得点を重ね、イタリアを3-0と言う大差で下す。イタリアが3点差で敗れたのは実に25年ぶりのことである。
 オランダは今大会で第1シードとなっているが、その他の第1シードのチームは、開催国(オーストリア、スイス)と前回優勝(ギリシャ)であるため、事実上唯一実績で第1シードに入ったチームであると言える。この実績は最近のワールドカップならびに欧州選手権の予選の成績を指数化したものであるが、イタリア戦の勝利でその指数が間違っていないことを示したのである。

■PK戦でフランスに軍配が上がった1996年大会準々決勝

 これまでのフランスとオランダの対戦成績はフランスが8勝4分9敗とフランスが負け越している。最近の対戦成績を見ると1992年以来欧州選手権の年には必ず対戦している。
 まず1992年は欧州選手権の直前にランスで親善試合を行い、1-1で引き分けている。フランスは、1992年の欧州選手権では優勝候補と目されながら、グループリーグで敗退したが、直前のこの試合でリズムを失ったと言う意見も少なくない。
 1996年の欧州選手権では準々決勝で両国はリバプールで対戦している。両チーム無得点のままPK戦に突入し、フランスが5-4で勝利している。オランダは1992年大会でも準決勝(決勝トーナメント1回戦)でドイツにPK戦で敗れており、2大会連続でPK戦で姿を消した。オランダを下したフランスもこの試合でディディエ・デシャンを失ったため、準決勝のチェコ戦の守備を崩しきることができず、無得点のままPK戦にもつれ込み、PK戦で敗れてしまった。

■控え選手で臨んだフランスが敗れた2000年大会グループリーグ

 そして2000年はオランダとベルギーで共同開催された本大会で両国はグループリーグで対戦した。この時はグループリーグの最終戦で対戦したが、フランス、オランダともにはチェコ、デンマークに勝利してすでに決勝トーナメント進出を決めていた。アムステルダムで行われた試合でフランスは主力を休ませ、控え選手で戦ったが、オランダは地元での試合ということもありベストメンバーで戦う。好ゲームとなったが、オランダがフランスを3-2で振り切り、フランスはグループリーグ首位の座をオランダに譲る。
 しかし、グループ2位となったことからフランスは決勝トーナメントの準々決勝と準決勝をフランス語圏のベルギーで戦うことができ、さらにオランダ戦で主力選手を休ませたことが功を奏した。フランスは決勝トーナメントに入って劇的な試合を次々に制し、1998年ワールドカップに次ぐ二冠を達成したのである。

■連勝記録が止まった2004年の親善試合

 最後に2004年には本大会を控えた3月に親善試合で対戦する。この試合については本連載第310回から第313回で紹介しているが、前回の欧州選手権のメンバー決定前の最後の試合である。ちょうど今回のイングランド戦に相当する試合である。また、当時のフランスは絶好調で、14連勝中で、このオランダ戦に勝利すれば15連勝と言う世界記録を更新するところであった。しかしながらスコアレスドロー、この試合でフランスは微妙に調子を崩し、結局欧州選手権では8強にとどまっている。
 一方、1992年以降、欧州選手権の年以外に、両国は2回親善試合で対戦している。1995年にユトレヒトで1-0、1997年にパリで2-1といずれもフランスが勝利している。
 欧州選手権の年の対戦に関して言えば、フランスが控え選手で戦った2000年の本大会での対戦を除くと、引き分けあるいはPK戦による決着となっており、しかもロースコアの試合ばかりであり、まったく互角であると言えよう。ところが、今回の欧州選手権イヤーでの対戦はこれまでとはまったく違う展開になったのである。(続く)

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