第860回 ルーマニアとスコアレスドロー(2) 負傷者2人を欠くメンバーで圧倒するが、無得点

■共同開催の2002年ワールドカップと同じ大会方式

 今回の欧州選手権で「死のグループ」となったグループC、フランスはルーマニア、オランダ、イタリアの順に対戦する。また、今大会の方式として、グループリーグの順位と決勝トーナメントの関係について確認しよう。
 今大会の決勝トーナメントはグループCの1位とグループDの2位が戦い、その勝者は準決勝でグループCの2位とグループDの1位の勝者と戦うという形式になっており、グループCとグループDのチームは決勝戦までグループAやグループBのチームと顔を合わせることがない。前回のポルトガル大会ではグループCの1位とグループDの2位が戦い、その勝者は準決勝でグループAの1位とグループBの2位の勝者と戦うという形式になっており、同一のグループリーグで1位になったチームと2位になったチームは決勝戦まで顔を合わせない方式であった。今大会の方式は2002年の韓国と日本で行われたワールドカップと同様であり、単独開催ではなく共同開催する際にチームやファン、関係者の移動のリスクを減らすために採用された方式である。アジアで最初のワールドカップが、サッカーはテレビで見るファンのためのものではなく、選手やその関係者、現地まで観戦に行く熱心なファンのものであると言うことを認識させた意義は大きい。

■2位までに入ればよいと考えることができる大会方式

 したがって、組み合わせ抽選が行われた段階で、グループCのフランスは決勝戦までグループAやグループBのチームと顔を合わせる可能性はない。テレビで見る側にとっては決勝トーナメントの組み合わせに制約があるため、面白みはないが、2000年に共同開催されたアフリカ選手権(ガーナ、ナイジェリア)、欧州選手権(ベルギー、オランダ)の反省を踏まえて、2002年のワールドカップで採用された。
 チームにとってはグループリーグを1位通過するか2位通過するかで決勝トーナメントの準々決勝や準決勝の対戦相手が大きく変わるわけではない。すなわち、グループリーグで1位であろうと2位であろうと、従来の大会方式と比較すれば影響がない。つまり、2位に入れば、いいと割り切ることができ、まず、第1戦と第2戦で確実に勝利し、第3戦は主力選手の休息のために控えメンバーで戦い、2位でもかまわない、と言う戦い方をしたいところである。

■試合直前にレイモン・ドメネク監督が2つの決断

 しかも第1戦の相手はグループCの中で若干力が落ちると見られるルーマニアが相手であり、確実に勝ち点3を獲得しておきたいところであるが、レイモン・ドメネク監督は試合開始直前まで2つの問題を解かなくてはならなかった。
 まず、負傷中の負傷中のパトリック・ビエイラの件である。このルーマニア戦には24人でチューリヒ入りしたが、試合当日の昼食後、ドメネク監督は決断を下し、ビエイラをメンバーに残し、再招集したマテュー・フラミニをメンバーから外す。フラミニにとっては5月末に続き、2回目のメンバー落ちである。
 また、ティエリー・アンリも負傷し、3日間練習から遠ざかっており、出場が危ぶまれ、ニコラ・アネルカとどちらがカリム・ベンゼマとの2トップを組ませるか、メンバー交換の直前まで悩んだ。結局、アンリを起用せず、アネルカを出場させる。ビエイラ、アンリとベテランを大事にしたドメネク監督の判断となった。

■試合を支配するもゴールが奪えず、勝ち点1

 中盤以下のメンバーは右にフランク・リベリー、左にフローラン・マルーダ、そして中盤の底にはジェレミー・トゥーラランとクロード・マケレレ、守備ラインは右からビリー・サニョル、リリアン・テュラム、ウィリアム・ギャラス、エリック・アビダル、GKにグレゴリー・クーペという陣容で、負傷のアンリ、ビエイラ以外はベストメンバーである。
 この試合、青いユニフォームのフランスは黄色いユニフォームのルーマニアを圧倒する。つい数日前のフランスは黄色いユニフォームのコロンビアと対戦したが、試合内容そのものはコロンビア戦よりも優勢であったものの、フランスはどうしてもゴールネットを揺らすことができず、無得点に終わる。
 勝ち点3を目論んでいたフランスは、勝ち点1しかあげることができず、同じ日に行われた試合でイタリアに3-0と完勝したオランダと対戦することになったのである。(この項、終わり)

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