第1169回 ルーマニア、ルクセンブルクと連戦 (10) カリム・ベンゼマが先制点、2トップでルクセンブルクに完勝

■2トップを選択したローラン・ブラン監督

 今年最後の予選の試合となるルクセンブルク戦はFWのシステムが注目を集めた。守りを固めてくるであろうルクセンブルクに対してFWの人数を増やして2トップとするか、それともボスニア・ヘルツェゴビナ戦以来採用して連勝している1トップにするのか。ボルドーで2トップシステムを採用しながら、就任直後の2試合は2トップシステムでノルウェーとベラルーシに連敗しているローラン・ブラン監督に迷いがなかったはずはないであろう。
 結局、ブラン監督の判断は2トップであった。カリム・ベンゼマとギヨーム・オラオの2人をFWとして起用し、中盤はダイヤモンド型、トップ下にはヨアン・グルクフ、両サイドのMFは右にアブー・ディアビ、左にフローラン・マルーダ、そして中盤の底にアルー・ディアラを起用する。DFライン以下はルーマニア戦と同じであり、DFは右にアントニー・レベイエール、中央にアディル・ラミとフィリップ・メクセス、左にガエル・クリシー、そしてGKはウーゴ・ロリスである。

■ルクセンブルクを圧倒、カリム・ベンゼマ先制ゴール

 試合は開始早々から一方的なものとなる。これまでのルクセンブルクとの戦い同様、フランスはボールを支配し、次々とシュートを浴びせる。プロ選手がわずか1人しかいないルクセンブルクは守勢一方となる。
 この超守備的なルクセンブルクの守備をどのようにこじ開けていくのか、超満員となったメッスのサン・サンフォリアン競技場の2万5000人近い観衆は三色旗を振り回しながら待った。
 22分、グルクフの左サイドからのCKをルクセンブルクの守備陣がクリアできないところをベンゼマがボレーシュートでゴールネットを揺らす。ブラン新体制の攻撃陣の軸としてベンゼマは地位を確立したと言えるであろう。
 後半に入ってブラン監督はベンゼマに代えてディミトリ・ペイエ、マルーダに代えてサミール・ナスリを投入する。さらに73分にはオラオに代えてロイック・レミーをピッチに送り込む。フランスの攻撃陣の人材の豊富さを象徴するような選手交代である。
 この交代選手がすぐに結果を出す。左サイドのペイエがFKを蹴る。ペイエは逆サイドのグルクフにパス、グルクフは25メートルのミドルシュートをゴールに突き刺し追加点となる。  結局、フランスのボール試合率はほぼ8割、シュート数はフランス21、ルクセンブルクは3という一方的な試合内容であり、試合のスコアは2-0となった。これまでのルクセンブルクとの対戦成績を考えれば物足りないものであったが、フランスにとっては収穫と課題の見えた試合となった。

■ブラン体制の攻撃の軸となったベンゼマ

 まず収穫はベンゼマである。所属するレアル・マドリッドでは今一つという結果しか残していないが、フランス代表としては抜群の成績を誇り、ブラン体制の看板選手となっている。レイモン・ドメネク時代は脇役でしかなく、2年前から始まったワールドカップ予選で起用されたのは重要ではない試合が多く、強豪相手の親善試合にも出場していなかった。消化試合となった昨年10月のオーストリア戦を最後にフランス代表のユニフォームを着ることはなく、今回の南アフリカのワールドカップのメンバーからも離れている。ワールドカップメンバーでなかったことが幸いし、8月のノルウェーとの親善試合のメンバーとなり、後半途中から出場する。予選初戦となるベラルーシ戦ではワールドカップ組にポストを譲る。1トップに戻したボスニア・ヘルツェゴビナ戦からの活躍は驚異的である。1トップとして先発出場し、ノルウェー戦ではあげることのできなかったゴールを決める。ルーマニア戦も1トップで出場、得点こそ挙げることはできなかったが前線での活躍は特筆すべきものがあった。そしてこのルクセンブルク戦ではグルクフとのコンビで得点をあげた。

■守備陣の真価が問われるイングランド、ブラジルとの親善試合

 一方、課題は守備陣である。特に中央の2人は失点こそないものの、安定感を欠く。ルクセンブルク、ルーマニアという攻撃陣の弱いチーム相手に無失点で乗り切ることができたが、彼らの真価が問われるのは11月のイングランド、来年2月のブラジルという強豪相手の試合であろう。(この項、終わり)

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