第1228回 ルクセンブルク、クロアチアと連戦 (1) パトリス・エブラとフランク・リベリーが復権

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■5連勝で迎える3月末の連戦

 前回までの本連載でご紹介した通り、今季の欧州カップでフランス勢はベスト8に残ることができないという3年ぶりのさびしい春となった。ファンの注目は国内のタイトル争い、そして今回の連載から紹介するフランス代表の戦いぶりである。
 フランス代表は3月下旬のインターナショナルマッチデーで、25日は欧州選手権予選でルクセンブルク、29日は親善試合でクロアチアとそれぞれ戦う。昨年夏までの暗黒のような状態から、完全に立ち直り、今年初めての試合では王国ブラジルに勝利し、昨秋からの連勝を5に伸ばしている。フランスにとっては一気に来年行われる欧州選手権で優勝争いをするまでチームの調子をあげたいところである。
 また、この3月末の連戦の次の試合はシーズン終了後の6月上旬まで間があくことから、シーズン中の選手をテストする最後の機会となる。この連戦に向けてローラン・ブラン監督は17日に23人の代表選手を発表した。

■連戦に向けて選んだ23人

 GKはウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダ、セドリック・カラッソの3人で完全にメンバーが固定した。DFは8人、ガエル・クリシー、バカリ・サーニャ、アディル・ラミ、フィリップ・メクセス、ママドゥ・サコ、ローラン・コシールニー、パトリス・エブラというメンバーである。
 MFは7人、アルー・ディアラ、ヤン・エムビラ、フローラン・マルーダ、ヨアン・グルクフ、アブー・ディアビ、サミール・ナスリ、ジェレミー・メネスである。
 そしてFWはケビン・ガメイロ、ギヨーム・オラオ、カリム・ベンゼマ、ロイック・レミー、フランク・リベリーの5人である。

■ワールドカップで処分を受けたパトリス・エブラとフランク・リベリー

 この23人のうちの最大の驚きは昨年のワールドカップ以降、メンバーから離れていたエブラとリベリーの復帰であろう。この2人は昨年のワールドカップでの練習ボイコットによりエブラは5試合出場停止、リベリーは3試合出場停止という処分を受けている。これ以外に出場停止の処分を受けたのは18試合のニコラ・アネルカ、1試合のジェレミー・トゥーラランである。ワールドカップに登録した23人の選手全員が1試合出場停止の処分を受けているが、彼ら4人の処分はそれ以降に決定されており、特別に処分を受けた4人のうちの2人が復権したことになる。ちなみに昨年8月17日に処分を下されてからフランス代表はブラジル戦まで6試合を戦っており、実際に彼らの復権は処分以上の時間を必要とした。

■サミール・ナスリも復活、メンバーから外れたエリック・アビダル

 また、この2人以外にサミール・ナスリも復帰している。ナスリはワールドカップのメンバーではなかったが、ワールドカップに出場できなかったのは2008年の欧州選手権の際にチームの中の人間関係が理由である。ブラン監督はそれ以降フランス代表から外れてしまったナスリを新チーム発足とともに復帰させ、代表チームで活躍するとともに、所属チームのアーセナル(イングランド)でも活躍した。有力選手は国外で活躍するのが当たり前になったフランスのサッカー界で、フランスフットボール誌はナスリを2010年フランス人最優秀選手に選出した。ナスリの活躍なしに現在のフランス代表は考えられなかったが、ブラジル戦は負傷のためメンバーから外れていた。
 この3人の復帰は今回のメンバー構成に波紋を落としている。まず、エブラの復帰と入れ替わるようにDFのリストから名前が消えたのが内臓を患うエリック・アビダルである。アビダルはワールドカップの処分の際はボイコット首謀者と目されながら処分を免れ、昨年11月のイングランド戦から復帰している。処分を受けた際にリベリーがこの決定が不公平であると反応していることから、2人の復帰とアビダルの残留を天秤にかけたという疑問を持つファンは少なくない。
 リベリーとナスリの復帰、ブラジル戦ではFW登録していたメネスがMFに登録されたことにより、MFでメンバーから外れたのは、負傷しているブレーズ・マツイディとヨアン・カバイエというブラン新体制下になってから招集された選手だったのである。(続く)

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