第1229回 ルクセンブルク、クロアチアと連戦 (2) 攻撃的メンバー、不完全燃焼、ルクセンブルクに辛勝

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■議論となったパトリス・エブラとフランク・リベリーの復帰

 前回の本連載では3月末のルクセンブルク戦とクロアチア戦に向けて昨年の南アフリカでのワールドカップの際の練習ボイコットで処分を受けたパトリス・エブラとフランク・リベリーの2人を選出したことを紹介した。この2人の選出についてはもちろん異論はあった。スポーツマンシップの観点から処分を受けた選手を代表に選ぶことを非難する声が早速上がったが、逆に2人の選出を当然と受け止める意見もある。
 いずれにせよ、この2人を選出したローラン・ブラン監督としてはこの2試合で結果を出さなくてはならない。
 まず、ルクセンブルク戦はアウエーで行われる欧州選手権予選であるが、相手との力量差を考えるならば大量得点差をつけて勝利したいところである。昨年10月にホームのメッスで行われた試合は2-0というスコアであり、ファンにとっては物足りない点差であった。そして、クロアチア戦は親善試合であるが、ホームのスタッド・ド・フランスで行われることもあり、イングランド、ブラジルに勝利したフランスとしては勝利が要求されるだけではなく、内容と得点差のある試合がファンから期待されている。

■メンバー発表後の選手の変更

 前回の本連載で紹介した23人のうち、アブー・ディアビが負傷のため辞退し、リールのヨアン・カバイエが招集され、21日から始まる代表合宿に備えていたが、カバイエは19日に行われたフランスリーグのブレスト戦で負傷してしまい、クレールフォンテーヌには着いたものの、メディカルチェックをしたところメンバーから離脱することになる。結局ブレーズ・マツイディが加わることになり、ブラジル戦を経験したMF陣は何らかの形で全員招集された。

■ルクセンブルク唯一の金メダリスト、ヨジー・バーテル

 23人のメンバーは試合の前日の24日にルクセンブルク入りする。ルクセンブルク戦の舞台はヨジー・バーテル競技場である。メインスタンドの一部に屋根があるだけで他は屋根のないこの競技場は1931年に国立競技場として建造され、1990年に改装されており、収容人員8000人強というルクセンブルク最大の競技場である。このスタジアムはサッカーグラウンドの周りに陸上トラックがある。ヨジー・バーテルというのはルクセンブルクの陸上選手の名前であり、1952年のヘルシンキ五輪の1500メートルで優勝しており、ルクセンブルクがこれまでに獲得した唯一の金メダルである。バーテルは陸上競技から引退後も活躍し、陸上連盟やオリンピック委員会で活躍しただけではなく、環境・運輸大臣も務めており、1992年に65歳の生涯を閉じているが、その翌年にこの国立競技場はヨジー・バーテル競技場と命名されたのである。またバーテルは科学者としても活躍し、ヨジー・バーテル高校が2003年に開校している。

■復帰組3人を含む攻撃的布陣も2点どまり

 さて、フランスからのファンも含めて8400人が集まり、文字通り立錐の余地もないヨジー・バーテル競技場、GKはスティーブ・マンダンダの起用も予想されたが、第1GKのウーゴ・ロリス、DFラインは右からバカリ・サーニャ、アディル・ラミ、フィリップ・メクセス、エブラである。MFは攻撃的な布陣となり、ヤン・エムビラとヨアン・グルクフが引き気味で、攻撃的な位置には右にリベリー、中央にサミール・ナスリ、左にフローラン・マルーダというメンバーである。そして1トップにはカリム・ベンゼマという攻撃重視のメンバーである。
 今回復帰したエブラ、リベリー、ナスリの3人がそのまま先発メンバーということもあり、ファンの大量得点への期待は高まったが、フランスはなかなかゴールをあげることができず、ようやく28分にナスリのFKからメクセスがヘディングでゴールをあげる。しかしこの先制点の後フランスの攻撃陣は沈黙する。前半のフランスの得点は1点に終わる。後半に入ってもなかなか追加点をあげることができず、72分に最後尾のメクセスから前線のロングボールをあげ、リベリーが繋いだところを最後はグルクフが決める。
 結局2-0というスコアにとどまり、ファンにとっては不満の残る結果となったが、地元でのクロアチア戦でイレブンはファンに借金を返したいところである。(続く)

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