第1232回 ほぼ半分の日程を終えた欧州選手権予選

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ニコラ・サルコジ大統領と菅直人首相の会談

 3月の末にフランス代表は2試合行ったが、すっかりニコラ・サルコジ大統領の訪日の陰に追いやられてしまった。サルコジ大統領が、東日本大震災の復旧、原子力発電所の事故対応に追われる日本政府のトップである菅直人首相と会談をしたことは、フランス国民にとって大きな驚きであった。両国はこのところ頻繁に外交の要である外務大臣を交代させている。先日のクロアチア戦の後半にローラン・ブラン監督は攻撃陣の選手を次々に交代させたが、それを思わせる菅・サルコジ両トップの手腕である。そして自らがトップとして外交を進めることになり、両首脳のリーダーシップが発揮される形となった。来年のフランスは大統領選の年である。日本の勝ち馬である菅首相にあやかり、サルコジ大統領も大統領選を勝ち抜きたいところである。現在のライバルは国民戦線のマリーヌ・ルペン、ドミニク・ストロスカーンなどが有力視されているが、ベルナール・ラマナンスーやジャック・グラブローのような大物が出馬しない限りサルコジ大統領も菅首相同様に安泰であろう。

■全10試合中5試合を消化したフランス

 そのサルコジ大統領の訪日というビッグニュースの陰に隠れたフランス代表の連戦であるが、その2試合の中でもファンは、力の均衡した相手であり、ホームで行われたクロアチア戦に注目した。しかし、ルクセンブルク戦が欧州選手権予選であったことを忘れてはならない。昨年9月に始まった欧州選手権予選であるが、この3月末でほぼ半分の日程を消化したことになる。チームによって消化試合数が若干異なり、フランス、ベラルーシ、アルバニア、ルーマニアが10試合中ちょうど半分の5試合消化、ボスニア・ヘルツェゴビナが1試合少ない4試合、ルクセンブルクが1試合多い6試合消化している。

■予想外のルーマニアの不振、ベラルーシとアルバニアの躍進

 初戦でベラルーシに敗れたフランスであるが、その後4連勝し、4勝1敗、勝ち点12でトップである。2位以下は思いもよらぬ順位になっている。当初フランスの最大のライバルになるであろうと思われたルーマニアは初戦でアルバニアと引き分け、第2戦でもベラルーシと引き分け、元気のなくなったところでフランスと対戦し、0-2と敗れ、ボスニア・ヘルツェゴビナにも敗れている。ようやく3月29日のルクセンブルク戦で3-1と初めての勝利をあげている。もっともこの試合も22分に先制を許し、逆転するという危ない勝利であった。
 一方、予想以上の成績を残したのが、ベラルーシとアルバニアであり、いずれも2勝2分1敗という成績で折り返している。フランスに初戦で勝利したベラルーシはルーマニア、ルクセンブルクと引き分け、アルバニアとはすでに2試合行い、お互いのチームがホームで勝利し星を分け合っている。
 アルバニアはフランスとまだ対戦していない唯一の国である。ルクセンブルクに勝利し、ルーマニア、ボスニア・ヘルツェゴビナと引き分け、ベラルーシとは1勝1敗である。ベラルーシとアルバニアは、5試合終えたところでフランスとは勝ち点4差の勝ち点8で並んでいるが、直接対決、総得失点差、いずれもベラルーシが優位に立っている。

■資格停止処分を受けたボスニア・ヘルツェゴビナとその影響

 そしてルーマニアに次ぐライバルと目されたボスニア・ヘルツェゴビナは2勝1分1敗の勝ち点7の4位である。ルーマニアとルクセンブルクに勝利し、試合消化が標準より1試合少ないことを考えれば、2位以内に入っていると考えることもできる。しかし、サッカー協会の会長がムスリム系、セルビア系、ボスニア系からそれぞれ選出される3人会長制となっており、UEFAからの再三の勧告に応じなかったため、4月1日に無期限の資格停止処分を受けた。
 この処分を反映すると、ボスニア・ヘルツェゴビナとの試合はすべて3-0の勝利となり、すでに行われた試合もその対象となる。これまでに行われたすべての試合と今後のボスニア・ヘルツェゴビナの試合を勘案すると、現在の順位は1位フランス(5勝1敗、勝ち点15)、2位ベラルーシ(4勝2分1敗、14)、3位アルバニア(4勝1分1敗、13)、4位ルーマニア(3勝2分1敗、11)となり、上位4チームは紙一重となるのである。(この項、終わり)

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