第2045回 延長戦でポルトガルに敗れる(3) 決勝戦のピッチに立った最高のメンバー

 平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。

■自国開催の国際大会で2回優勝したフランス

 前回の本連載ではフランスがポルトガルに対し、過去の対戦成績が良いことを紹介したが、フランス有利の最大の根拠は地元開催ということに尽きる。
 個人主義の国フランスとはいうものの、トリコロールを背にした瞬間に彼らの国民性は変わる。テニスが好例であり、個人戦のグランドスラムではフランス人選手は優勝から遠ざかっているが、団体戦のデビスカップとなると上位に進出する。これはサッカーの世界でも例外ではない。チャンピオンズリーグでは1993年のマルセイユを除き、優勝したことはないが、ナショナルチームになるとこれまでに3回のメジャータイトルを獲得している。1984年の欧州選手権、1998年のワールドカップ、そして2000年の欧州選手権である。このうち2回は自国開催で優勝している。これまでにフランスがワールドカップ、欧州選手権を開催したのはそれぞれ2回である。1938年のワールドカップ、1960年の欧州選手権では早々と敗退したが、1984年欧州選手権、1998年ワールドカップでは無数の三色旗のはためくスタジアムでミッシェル・プラティニ、ジネディーヌ・ジダンというヒーローとともに優勝した。

■自国開催で18戦負けなしという驚異的な記録を更新中のフランス

 振り返ってみれば、過去2回の自国開催大会ではいずれも優勝、フランスが自国での国際大会では1960年欧州選手権の3位決定戦(実質的には最下位決定戦)のチェコスロバキア戦で負けたのが最後であり、1984年欧州選手権ではグループリーグ3勝、決勝トーナメントも2勝して全勝で優勝を飾っている。そして1998年ワールドカップでもグループリーグで3勝、決勝トーナメントではPK戦での勝利1試合を含み、4つの相手を退けて優勝している。そして今大会もグループリーグは2勝1分、決勝トーナメントに入って、アイルランド、アイスランド、ドイツを下してきた。すなわち、自国開催の国際大会では18戦連続して負けなし、というとてつもない記録を更新中である。19個目の勝利を期待しない方がおかしい。

■ディディエ・デシャン監督が送り出した11人

 その優勝に王手をかけたフランスの先発メンバーは、アイスランド戦、ドイツ戦と同じである。ディディエ・デシャン監督が4年前に就任してから、この体制を支えてきたマチュー・バルブエナ、カリム・ベンゼマ、ラファエル・バランという主力選手を諸事情で欠く中でようやくたどり着いたのが4-2-3-1システムで以下のメンバーである。
 GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、ローラン・コシエルニー、サミュエル・ウムティティ、パトリス・エブラである。中盤は低い位置に2人、右にポール・ポグバ、左にマツイディ、そして攻撃陣は右にムーサ・シソッコ、中央にアントワン・グリエズマン、左にディミトリ・パイエ、トップにはオリビエ・ジルーである。

■先発11人中8人が全試合出場

 ここまで全6試合に出場しているのは実に8人にのぼる。6試合540分間フル出場しているのはGKのロリス、サーニャ、エブラの両サイドバックである。この3人に加え、コシエルニー、ポグバ、マツイディ、グリエズマン、パイエは途中交代はあったものの、ルーマニア戦からドイツ戦までの6試合に出場している。攻撃陣のジルーとムーサ・シソッコは5試合出場であるが、これまでの代表キャリアはパイエやグリエズマンよりも豊富である。アイスランド戦でデビューしたばかりのウムティティは2試合出場に過ぎないが、2試合ともフル出場である。
 ベンチに控えている選手も攻撃陣のキングスレー・コマン、アンドレ・ピエール・ジニャックは5試合に出場、中盤のヨアン・カバイエ、エンゴロ・カンテは4試合出場経験がある。守備陣はアディル・ラミがいるランド船案での4試合にフル出場したほかはエリアキム・マンガラがコシエルニーに代わって出場しただけであり、ストッパーの1人がウムティティに入れ替わっただけである。
 最高のメンバーがスタッド・ド・フランスのピッチでラ・マルセイエーズを歌ったのである。(続く)

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