第2046回 延長戦でポルトガルに敗れる(4) 波乱の展開、エデルの一撃でポルトガル優勝

 平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。

■エース、クリスチャーノ・ロナウドのラストチャンス

 ポルトガルのエースのクリスチャーノ・ロナウドの国際大会のデビューは2004年、自国開催の欧州選手権である。ポルトガルの黄金世代にとってラストチャンスとなったこの大会でクリスチャーノ・ロナウドも活躍し、決勝に進出する。しかし、決勝では伏兵のギリシャにまさかの敗退、クリスチャーノ・ロナウドにとっては悲しいデビュー戦となった。しかし、当時マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)に所属していた19歳の若者は、チャンピオンズリーグ優勝など数々の栄冠を獲得し、すでに31歳となった。クリスチャーノ・ロナウドにとって今大会はラストチャンスとなった。グループリーグでは3千引き分け、エースのクリスチャーノ・ロナウドの責任を問う声もあったが、今大会では3得点、通算では9得点となり、ミッシェル・プラティニと通算ゴール数で並んだ。この決勝でもクリスチャーノ・ロナウドがキープレーヤとなるであろう。

■ポルトガルを支えるフランスのポルトガル人コミュニティ

 そのポルトガルの先発メンバーであるが、GKはルイ・パトリシオ、DFは右からセドリック・ソアレス、ペペ、ジョゼ・フォンテ、ラファエル・ゲレイロ、MFは4人、右からレナト・サンシェス、アドリエン・シウバ、ウィリアム・カルバーリョ、ジョアン・マリオ、そして2トップは右にクリスチャーノ・ロナウド、左にナニが並ぶ。
 ポルトガルの最大のサポーターはフランスにおけるポルトガル人のコミュニティである。例えば、先発メンバーの中でゲレイロとアドリエン・シウバはフランス生まれ、そして本連載の読者の皆様であればよくご存じと思われるが、控えGKのアントニー・ロペスもフランス生まれで現在はリヨンに所属している。彼らはみなポルトガルからの移民の二世である。フランス国内には約100万人おポルトガル人が居住し、その大多数はパリ周辺に集中している。パリはリスボンに次いでポルトガル人が世界で2番目に多く住む都市である。今回のポルトガルとの決勝に向けてフランスのスポーツ紙レキップはポルトガル語のページも作成した。これは2007年のラグビーワールドカップの際に英語版を作成して以来のことである。

■25分にピッチを後にしたクリスチャーノ・ロナウド

 試合は立ち上がりはフランスが優勢に進め、10分にはポルトガルの守備陣のミスからオリビエ・ジルー、ディミトリ・パイエとつなぎ、最後はエースとなったアントワン・グリエズマンがヘディングでシュートするがルイ・パトリシアがパンチングでCKに逃げる。そしてこのプレーの直前にクリスチャーノ・ロナウドとパイエが交錯し、クリスチャーノ・ロナウドは倒れてしまう。結局25分にクリスチャーノ・ロナウドは涙を流しながらピッチを去るという緊急事態が初優勝を狙うポルトガルを襲ったのである。

■ルイ・パトリシアの好守光る、エデルのミドルシュートが決勝点

 34分にもフランスはムーサ・シッソコが速いパス回しからシュートを放つもルイ・パトリシアが今度はセーブ。エースを失って揺れるポルトガルに対し、フランスは得点をあげることができず、後半に入る。フランスは大会後半に輝きを失いつつあるパイエを下げてキングスレー・コマンを投入し、コマンがフリーのグリエズマンにパスを出したが、グリエズマンがシュートミス、先制点は奪えない。フランスは決定機を何度作りながらノーゴールで試合は延長戦に入る。
 延長に入ると試合間隔が1日短いフランスの足が止まる。延長後半の108分にはゲレイロがFKを放ち、フランスのGKウーゴ・ロリスは反応できなかったが、シュートがクロスバーに当たって外れ、難を逃れる。そしてその直後、ポルトガルの3人目の出場選手、エデルがローラン・コシエルニーをかわしてミドルシュートを決める。リールで活躍するエデルのゴールでポルトガルはフランスに41年ぶりに勝利、そして初の国際大会優勝となったのである。(この項、終わり)

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