第2573回 競り合いの続く欧州選手権予選(3) 本大会出場への直接対決となるトルコ戦

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、この度の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■勝ち点18で並ぶフランスとトルコ

 ホームのレイキャビクで首位争いに割って入り込もうとするアイスランドに対し、フランスはオリビエ・ジルーが決めたPKで勝利し、勝ち点を18に伸ばした。
 同じ10月11日にイスタンブールで行われたグループHの注目のカードのトルコ-アルバニア戦もまた最少スコアでの決着であった。試合の前々日にトルコがシリア国内のクルド人勢力に対する軍事行動を始めたとあって、緊張の高まる中での試合開催となった。トルコは攻めながらもなかなか得点を奪うことができず、このままドローかと思われたが、90分にジェンク・トスンが決勝点をあげて、トルコが1-0と勝利、フランスとともに勝ち点を18に伸ばした。

■勝利すれば本大会出場が決まるフランス

 残り3試合となった時点での順位はトルコとフランスが6勝1敗の勝ち点18、アイスランドが勝ち点12、アルバニアが勝ち点9となった。トルコとフランスの二強が勝ち点を伸ばしたことから、10月14日にも本大会出場が決まることになった。
 14日にはフランス-トルコ、アイスランド-アンドラ、モルドバ-アルバニアの3試合が行われるが、フランスがトルコに勝利すれば2位以内が確定し本大会出場が決定する。また、フランスが引き分けた場合、アイスランドがアンドラに引き分け以下でも本大会出場のチケットが手に入る。さらにアンドラがアイスランドに勝利した場合もフランスが本大会出場となる。しかし、アイスランドがアンドラに引き分け以下ということは想定しにくいので、フランスにとっては勝利することだけが本大会出場の道といえるであろう。そしてこの段階で本大会出場を決めれば、11月に行われるモルドバ戦、アルバニア戦を本大会に向けた選手のテストの場として活用することができる。そのためにも一気にトルコ戦で勝利してしまいたいところである。

■問題となった得点直後の敬礼のポーズ

 本大会出場をかけた大一番とあって関心が高まったが、グラウンドの外の動きが影響を与えた。それはトルコのシリア国内での軍事行動である。軍事行動が起これば国内に愛国心を高める動きが起こる。トルコは先述のアイスランド戦の試合終了間際にトスンが得点をあげた直後にトルコの選手は自国の軍事行動を支持するかの如く並んで軍隊式敬礼を行った。さらにトスンはこの敬礼しているポーズの写真をトルコ軍に対する賛辞のメッセージとともにSNSに投稿した。この投稿に対しトルコを出自とするドイツ代表のイルカイ・ギュンドアンとエムレ・ジャンが「いいね」と反応、これが大きな問題となる。昨年のワールドカップ直前にもトルコ出身のドイツ代表のメスト・エジルがトルコのエルドアン大統領との撮影に応じたことに対する非難が集中したことの記憶も新しい中でのトルコ系選手の政治的行動であった。

■トルコの軍事行動を非難するフランス、大勢のサポーターが押し寄せるトルコ

 トルコの軍事行動をフランス政府は強く非難していることから、このトルコ代表の敬礼に対してはサッカーファンならずとも激しく抗議したのである。
 そしてドイツほどではないがフランスにもたくさんのトルコ系の住民が住んでいる。かつては欧州では最弱国のグループに入っていたトルコも、今世紀に入ってからは国際舞台で勝負できるようになりファンが熱いことでも知られるようになった。会場となるスタッド・ド・フランスには7万8000人が押し寄せると想定されるが、この中の3万人あるいは4万人がトルコを応援すると予想された。そして、試合の勝敗だけではなく政治的な問題からもトラブルの生じる可能性は少なくない。警備を担当する当局は通常は1,100人で臨むが1,400人に増員し、警察も通常の400人に対して600人を配置した。試合前にはトルコのサポーターがスタッド・ド・フランスの周辺で発煙筒をたくなどの騒ぎを起こし、異様な雰囲気の中での試合開催となったのである。(続く)

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