第2843回 二冠を狙う欧州選手権(5) ブルガリアに勝利し、本大会を迎える

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■フランスを下したワールドカップ米国大会で4位になったブルガリア

 欧州選手権に向けたスパーリングマッチの第1戦は6月2日にニースで行われた。フランスは、前回大会四強で世界ランキング17位のウェールズに対し、3-0と完勝した。 続く第2戦は6月8日、スタッド・ド・フランスにブルガリアを迎えて行われ、本大会前最後の試合となる。ブルガリアというと、ワールドカップ米国大会予選の最終戦のアディショナルタイムの失点がいまだにフランスのファンの脳裏には焼き付いている。この予選ではホームだけではなくアウエーでもフランスはブルガリアに敗れている。フランスを退けて新大陸での本大会に出場したブルガリアは準決勝に進出、欧州予選で同組だったスウェーデンと3位決定戦を戦っている。

■低迷の続く近年のブルガリア

 しかし、その後は低迷し、今世紀に入ってからは2004年の欧州選手権に出場しただけで、その時もグループリーグで3戦全敗であった。さらに昨年9月以降に代表チームの試合が再開してからの成績は目を覆わんばかりである。9月から3月にかけてUEFAネーションズリーグ、欧州選手権予選プレーオフ、ワールドカップ予選を戦ったが、その戦績は3分7敗と勝利していない。6月に入って親善試合を3試合行い、その3戦目がフランス戦であるが、スロバキアに引き分け、ロシアに敗れており、昨年9月以降は12試合連続で勝ちがない。また、欧州選手権プレーオフではフランスがグループリーグで対戦するハンガリーに1-3で敗れており、フランスとハンガリーの力関係を知る参考となるであろう。

■5,000人の有観客試合、ウェールズ戦とほぼ同じ先発メンバー

 6月9日からフランスでは外出制限の解除の第3段階が適用される。1日早いが、スタッド・ド・フランスでの試合はこの第3段階を先取りする形で5,000人の観客を入れて行われた。この観客はフランス代表のサポーター集団以外に、学生、医療従事者、救命士などを招待している。
 フランスの先発メンバーであるがGKはウーゴ・ロリス、DFは右からバンジャマン・パバール、ラファエル・バラン、プレスネル・キンペンベ、ルカ・エルナンデス、MFは4人であるが、低い位置にエンゴロ・カンテ、中盤の右にはポール・ポグバ、左にはコランタン・トリッソ、高い位置のトップ下にはアントワン・グリエズマン、FWは2トップで右にムバッペ、左にベンゼマという陣容である。ウェールズ戦の先発メンバーと比較するとアドリアン・ラビオが退き、カンテが加わっただけであり、ほぼベストメンバーでの試合を続けていくというのがディディエ・デシャン監督の方針であろう。

■カリム・ベンゼマが負傷退場、アントワン・グリエズマン、オリビエ・ジルーが得点

 上から下まで白一色のユニフォームのフランスは久しぶりの観客の前での試合となる。立ち上がりから積極的に攻め続け、次々とブルガリアのゴールをめがけてシュートを放つ。27分にはベンゼマとのワンツーパスでムバッペが相手のGKと一対一になるが、シュートはGKに阻まれてしまう。しかし、フランスの先制点は時間の問題であった。29分には再びムバッペがシュート、このシュートがブルガリアの守備陣に当たって跳ね返ったところをグリエズマンがアクロバティックな左足シュートでゴール。代表37ゴール目、そしてスタッド・ド・フランスでの24ゴール目となる。ファンの前での先制点となったが、35分にはベンゼマが倒され、その後にプレー継続不可の意思を示し、38分にベンゼマはピッチを後にする。オリビエ・ジルーが交代出場し、前半はフランスの1点リードで終える。
 後半に入って先にブルガリアは選手交代を仕掛けてくる。フランスはシュートを放つもなかなか追加点を奪うことができない。ようやく追加点が生まれたのは83分、右サイドのパバールからのクロスをニアポストで待ち受けていたジルーが混戦の中から左足でシュートする。ベンゼマに代わってフランス代表の背番号9を担ってきたジルーがその通りの働きをする。さらにジルーは90分にも右足のグラウンダーのシュートでこの日2得点目を決める。ジルーはこれで代表46点目となり、トップのティエリー・アンリに5点差に迫った。
 フランスはブルガリアに3-0と勝利し、欧州選手権の初戦の場であるドイツのミュンヘンに向かうのである。(この項、終わり)

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