第2900回 UEFAネーションズリーグファイナルズ(5) 復調したスペインと決勝で対戦

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、第2900回の連載を迎えることができました。連載開始以来19年で2900回もの連載を続けることができたのは読者の皆様のおかげです。読者の皆様に改めて感謝するとともに、引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。

■歴史的な逆転劇となったベルギーとの準決勝、決勝の相手はスペイン

 ベルギー相手に2点を先行されながら逆転勝利したフランス、前回の本連載で紹介した通り、これまでワールドカップ、欧州選手権の決勝トーナメントで前半だけで2点をリードされたことはなく、また2点差を逆転あるいは追いついたこともない。フランスは歴史的逆転勝利に沸いた。
 もう1つの準決勝はフランス-ベルギー戦の前日に行われ、スペインが欧州選手権優勝チームのイタリアを退けて、決勝に進出した。

■2014年のワールドカップ以降不本意な成績の続いたスペイン

 スペインのここまでの道のりを紹介しよう。2008年の欧州選手権、2010年のワールドカップ、2012年の欧州選手権と3大会連続で優勝したことは世界のサッカーファンに鮮烈な記憶となった。ところが、その後、主要国際大会では低迷する。2014年のワールドカップでは初戦でオランダに1-5と大敗し、チリにも敗れ、豪州に勝利したのみで1998年大会以来のグループリーグ敗退となる。2016年の欧州選手権は決勝トーナメント1回戦でイタリアと対戦し、0-2で敗れる。2018年のワールドカップは決勝トーナメント1回戦でロシアと対戦、開催国との戦いはPK戦となり、全員が成功させたロシアの前に屈する。

■ルイス・エンリケ監督が就任、UEFAネーションズカップで欧州選手権予選で復調

 3大会連続で不本意な結果となったあと、ルイス・エンリケ監督が就任する。ルイス・エンリケ監督の最初の仕事は第1回のUEFAネーションズカップであった。開幕戦ではロンドンのウェンブリーでイングランドと対戦、2-1と勝利し、幸先の良いスタートを切る。ホームの初陣はクロアチア戦、この試合で6-0と大勝、2000年代から2010年代にかけての無敵艦隊が戻ってきた、とファンは期待した。しかし、セビリアにイングランドを迎えた試合で2-3と敗れ、ウェンブリーでの勝利が帳消しとなる。さらにクロアチアとのアウエーゲームも落としてしまう。この結果、クロアチアに対してホームで勝利し、アウエーでスコアレスドローに持ち込んだイングランドに勝ち点で1及ばず、グループ2位にとどまったが、確実に復調の兆しを見せたのである。
 2019年は欧州選手権予選の年であった。スペインは予選でグループFに入り、スウェーデン、ノルウェーにアウエーで引き分けた以外の8試合はすべて勝利、グループ首位で本大会出場を決めたのである。

■ファイナルズ進出を決めた第2回UEFAネーションズリーグ

 2020年に開催されるはずの本大会は新型コロナウイルスの感染拡大のために2021年に延期となり、2020年は秋に第2回のUEFAネーションズリーグが開催された。最上位のリーグAのスペインはグループ4で前回大会で準決勝に進出したスイス、ドイツ、ウクライナと対戦した。初戦はアウエーでのドイツ戦、これをスコアレスドローで乗り切り、ホームでのウクライナ戦、スイス戦で連勝して折り返す。しかしアウエーでのウクライナ戦に敗れ、スイスとも引き分ける。最終戦を迎える時点で前半の貯金はなくなる。最終戦はホームでのドイツ戦であるが、この時点でドイツが勝ち点9で首位、スペインは8で2位である。ファイナルズにスペインが進出するためには勝利が必要である。セビリアで無観客で行われた試合で、スペインはアルバロ・モラタが先制点、フェルナンド・トーレスがハットトリック、さらにロドリの代表初ゴールなどで6-0と大勝し、ファイナルズ進出を決めたのである。
 2021年はワールドカップ予選と欧州選手権の年である。3月に行われたワールドカップ予選3試合はギリシャとホームで引き分けてしまったが、アウエーのジョージア、ホームのコソボ戦に勝利する。
 そしていよいよ6月には欧州選手権の本大会を迎えた。グループリーグでスペインは3試合ともホームのセビリアで戦うことになったが、思わぬ苦戦を強いられ、初戦のスウェーデン戦はスコアレスドロー、第2戦のポーランド戦は前半にモラタが先制したが、後半にロベルト・レバンドフスキーのゴールで追いつかれ、2試合連続で引き分けてしまったのである。(続く)

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