第2899回 UEFAネーションズリーグファイナルズ(4) テオ・エルナンデスのゴールで決勝進出

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■過去の決勝トーナメントで例のない前半だけで2点のビハインド

 2点のリードを許してフランスが前半を終えたのは公式戦では2年前の欧州選手権予選のトルコ戦以来のことである。この時はリーグ戦方式の予選であったため、その後挽回をすることができたが、今回はノックアウト方式の準決勝である。フランスが主要国際大会の決勝トーナメントで2点のリードを許したのは欧州選手権では2012年大会の準々決勝のスペイン戦、1960年の3位決定戦のチェコスロバキア戦、ワールドカップでは1986年大会の準決勝の西ドイツ戦が該当するが、いずれも前半に1点を奪われ、後半の終了間際にスペイン戦はシャビ・アロンソ、チェコスロバキア戦はラディスラフ・パブロビッチ、西ドイツ戦はフェラーに追加点を決められている。前半だけで2点をリードされたことはワールドカップ、欧州選手権の決勝トーナメントでは経験したことがないのである。

■カリム・ベンゼマの個人技で1点返す

 ここまで厳しい結果となった前半のフランスはなかなか最前線のカリム・ベンゼマ、キリアン・ムバッペにボールを供給することができなかった。後半になって反撃のゴールをあげたのはベンゼマであった。ムバッペがドリブルでベルギーの守備陣を抜き去り、ゴール前のベンゼマにパス、ベンゼマが個人技でシュート、代表通算32点目のゴールを決め、1点差に詰め寄る。

■キリアン・ムバッペのPKで追いついたフランス

 そして67分にアントワン・グリエズマンがペナルティエリアの中でユーリ・ティーレマンスに倒される。VARの判定の結果、フランスにPKが与えられる。ペナルティスポットに向かうのはムバッペ、ムバッペはスピードのあるキック、ベルギーのGKチボー・クルトワも正しく反応したが、ムバッペのシュートの速度が勝り、フランスが追いついたのである。
 76分にフランスはユベントスに所属するご当地のアドリアン・ラビオがピッチを去り、オーレリアン・チュアメニが入れ替わってピッチに入ってきた。これがフランスにとって最初の選手交代であるが、90分間で同点の場合は前後半15分ずつの延長戦が行われる。それを意識してか、ディディエ・デシャン監督は最初の選手交代は76分という我慢の采配であった。

■テオ・エルナンデスが決勝ゴールを決める

 77分には入ってきたばかりのチュアメニがシュート、これはクルトワの両手に阻まれたが、ここから試合はゴール前から目が離せないシーンが連続する。86分にはペナルティエリア内でベンゼマとワンツーパスをしたムバッペが右足でシュートを放ったが、惜しくもゴールポストの外をボールは通過した。
 世界ランキングで1位のベルギーも負けてはいない。87分にはヤニック・カラスコからのクロスをロメル・ルカクが右足でシュート、勝ち越し点かと思われたが、VARとなり、結局ルカクのポジションがオフサイドであり、ゴールは認められなかった。歓喜が一転して落胆となる。
 さらにドラマは続く。90分にフランスはゴール前25メートルの位置でFKのチャンスを得る。これをポール・ポグバが直接狙う。しかし、このシュートはバーに当たり、ゴールはならない。いよいよ延長戦かと思われたが、その直後にフランスはバンジャマン・パバールがクロスをあげる。このクロスをベルギーのDFのトビー・アルデルバイレルトが触ることができず、ボールはファーサイドに流れる。これを左サイドで上がってきたテオ・エルナンデスが左足で豪快にシュートを放つ。クルトワも反応したが、勢いのあるシュートはクルトワの手をかすめて、ゴールネットを揺らした。テオ・エルナンデスは代表出場2試合目、デビュー戦の9月7日のフィンランド戦は兄のルカはメンバーから外れていたが、この試合では兄弟で先発した。その記念すべき試合で決勝点を決めたのである。
 フランスは2点差を逆転して、3-2でベルギーを下し、決勝に進出したのである。(続く)

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