第143回 欧州チャンピオンズリーグ、フランス勢全滅(4) 大会規定に泣いたリヨン

■最下位脱出、UEFAカップ3回戦をめざすオセール

 第140回から第142回までは欧州チャンピオンズリーグ1次リーグにおけるオセール、ランス、リヨンの第1節から第5節までの戦いを紹介してきた。オセールは最終節を迎える段階で最下位であり、2次リーグ進出はならなかったが、3位に入ればUEFAカップに出場することができる。ランス、リヨンはともにこの段階で3位であるが、最終節の相手はすでに脱落したチームとのアウエーでの戦いである。

■1人少ないアーセナルが引き分け、オセールUEFAカップ3回戦に

 最終節はグループAからグループDまでは11月12日、グループEからグループHまでは11月13日に行われた。グループAの最終戦はオセール-ボルシア・ドルトムント、アーセナル-PSVアイントフォーフェンの2試合がフランス時間で20時45分から行われた。ボルシア・ドルトムントとアーセナルがすでに2次リーグ進出を確定しており、このグループでは順位争いしか関心を集めなかった。勝ち点4のオセールにとって唯一のライバルは勝ち点5のPSVアイントフォーフェンであり、オセールの勝利だけでなく、アーセナルが引き分け以上の成績を残さなくてはならない。キャパシティの少ないオセールのアベ・デシャン競技場は1万9000人の観客で膨れ上がる。ロンドンの試合経過を気にしながらのキックオフとなったが、まず35分にロンドンでアーセナルのDFアビブ・ツーレが2枚目のイエローカードを受け、退場、アーセナルは10人での戦いを余儀なくされる。一方、目の前のオセールはなかなか得点に結びつくチャンスを得ることができない。ロンドンでもゴールネットが揺れる瞬間はなく、時間は過ぎていく。このまま2試合ともスコアレスドローで終われば、PSVアイントフォーフェンがUEFAカップの出場権を得る、と悲観的な空気が流れた76分、後半から交代出場したジンバブエ人のムワルワリ・ベンジャニが均衡を破りオセールがリードする。ハイベリーは相変わらずノースコア、オセールファンは1人少ないアーセナル守備陣が持ちこたえることを期待し、そのまま両試合とも試合終了。チャンピオンズリーグ予備戦から戦ってきたオセールは2次リーグ進出こそならなかったが、UEFAカップの3回戦に回ることになったのである。

■モチベーションを失った相手に苦戦するリヨン

 そして同じ時間にグループDの2試合も行われた。3位のリヨン(勝ち点7、得失点差+3)は4位のローゼンボリ(勝ち点3、得失点差-8)のホームのトロントヘイムに乗り込み、2位アヤックス(勝ち点8、得失点差+2)は1位のインテルミラノ(勝ち点8、得失点差+3)をアムステルダムに迎える。上位3チームは勝てば2次リーグ進出であるが、引き分け以下の場合は2次リーグ進出は微妙になる。
 リヨンの相手はすでに2次リーグにもUEFAカップにも進出の可能性がなくなったローゼンボリ。ホームでも5-0と大勝しており、アウエーの戦いとは言っても楽観的に考えるファンがほとんどであった。ところが、リヨンは前節のアヤックス戦同様、立ち上がりからリズムをつかむことができず、失点こそ許さないが、ゴールは遠い。両チーム無得点で前半を終える。

■アヤックス戦の連敗が響き、リヨン3位にとどまる

 一方、アムステルダムでの試合も前半は両チーム無得点。残り45分間、2試合とも無得点が続けば、アムステルダムで試合を行っている2チームが2次リーグに進出することになる。ところが、アルゼンチン代表として日本では見せ場のなかったインテルミラノのエルナン・クレスポが後半開始早々に爆発し、50分、51分と立て続けにゴールする。インテルミラノが勝ち、アヤックスが負けた場合、アヤックスの勝ち点は8にとどまる。そしてリヨンがローゼンボリと引き分けた場合のリヨンの勝ち点は8となる。ここで得失点差の争いか、と思われる読者の方も少なくはないであろう。ところが、大会規定では勝ち点が並んだ場合は当該チーム同士の対戦成績でその順位が決まることになっている。つまり、リヨンのホームでのローゼンボリ戦での大勝は意味がなくなり、リヨンがアヤックスに連敗したことにより、2位争いはアヤックスに軍配が上がる。
 アヤックスが大逆転をしない限り、リヨンは勝たなくてはならない。ところが、リヨンは69分にノルウェー代表のハラルド・ブラットバックが先制点。焦るリヨン。ホームで負けていても心のどこかに安心感のあるアヤックス。そして2点リードで逃げ切りに入るインテルミラノ。三者の心理状態は異なるが、試合の針は否応無しに進んでいく。残り6分となった84分にリヨンはようやくシドニー・ゴブーが同点ゴール。しかし、アヤックスが負けている限り、勝ち点1の引き分けでは2次リーグ進出につながらない。アヤックスはロスタイムに19歳のラファエル・ファン・デル・ファートが1点を返す。そしてここで両試合ともタイムアップ。アヤックスは負けながら、2次リーグ進出を決め、リヨンはアヤックスを得失点差で上回りながらUEFAカップに回ることになったのである。大会規定に泣いたリヨンであるが、この大会規定にはかつての欧州チャンピオンズカップ時代の一騎打ちの精神が脈々と受け継がれているのである。(続く)

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