第431回 トーナメント戦に突入した欧州カップ (5) リヨンは歴史的大勝、モナコは連敗

■逆転がお家芸のベルダー・ブレーメン

 フランス勢は第1戦をアウエーで戦ったチャンピオンズリーグのベスト8決定戦は3月8日にリヨン、3月9日にモナコで第2戦が行われた。
 アウエーでの第1戦を3-0というスコアで先勝したリヨンであるが、油断大敵である。というのもベルダー・ブレーメンはこの欧州カップ戦で何度も「世紀の大逆転」を演じてきたからである。前回の本連載で紹介した1999-2000シーズンのUEFAカップでのリヨン戦(第1戦0-3、第2戦4-0)だけではない。1987-88シーズンのUEFAカップベスト16決定戦ではスパルターク・モスクワ戦で第1戦を1-4と落とし、第2戦は規定の90分間を終えて4-1となり延長戦に突入、延長戦で2点を追加して勝ち抜いている。そしてその翌シーズンにはチャンピオンズカップのベスト32決定戦でディナモ・ベルリンと対戦、第1戦0-3、第2戦5-0、合計スコア5-3と見事な逆転勝利。さらに1993-94シーズンはチャンピオンズカップのグループリーグのアンデルレヒト戦で、65分まで0-3とリードされていたが、残り25分で5得点あげて逆転勝利を飾っている。このように3点ビハインドで迎えた状況で非常に強いベルダー・ブレーメンであるが、この逆転はいずれも本拠地のベーゼル競技場でなされたものであり、今回の3点ビハインドで迎えた舞台はリヨンのジェルラン競技場である。

■リヨン、ゴールラッシュで7得点、準々決勝へ

 国内リーグでも好調なリヨンは今季ジェルラン競技場では無敗であるが、ポール・ルグアン監督はそれでも慎重な態度を崩さない。これはすでにリヨンがチャンピオンズリーグにおいては挑戦者ではなく、常連であると言うことの自身の現われであろう。しかし、4万人の観衆の前ではルグアン監督の試合前の態度からは想像も付かない、そして集まったファンすら予想もしない試合展開となった。
 まず、ブレーメンでの試合同様、先制点はシルバン・ビルトールが8分に決める。そして17分、30分にミカエル・エシアンが立て続けにゴールを決めて3-0、逆転がお家芸のベルダー・ブレーメンは32分にフランス代表のジョアン・ミクーが1点を返して、ハーフタイム。ブレーメンはこれ以上の失点を防ぐべく、守備的な布陣に変えて、後半に入るが、リヨンのゴールラッシュの勢いは衰えなかった。55分にビルトール、60分にフローラン・マルーダ、そして64分にビルトールがハットトリック達成となる3点目、80分にはPKのチャンスを得る。この際ペナルティスポットに立ったのは20歳のジェレミー・ベルトー、難なくこれを決めるが、ベルトーにとってこれがプロとしての初ゴールとなったのである。試合はリヨンが7-2と大勝し、前年に続き準々決勝に進出する。

■爆発的な得点力を示したリヨン

 ベルダー・ブレーメンはバレリアン・イスマエルが1点を返したが、得点者は2人ともフランス人という結果となった。過去の欧州カップでフランスのチームが7得点を記録したことは何度かあるが、強豪国のクラブとチャンピオンズリーグで7得点を奪ったことはもちろん今までに例のないことである。リヨンは今季のチャンピオンズリーグ8試合で27得点と言う爆発的な得点力で2年連続のベスト8に進出した。これはベスト8に進出したチームの中で最多であり、2位のインテル・ミラノ(イタリア)が18得点であると言うことを考えれば圧倒的な数字であることがよくお分かりいただけよう。

■モナコ、ホームで完敗、2年連続のベスト8入りを逃す

 このリヨンの圧勝の翌日、もう1つのフランス勢であるモナコはPSVアイントホーヘンをホームに迎える。昨年はモナコで引き分けたことが両チームの明暗を分け、UEFAカップに回ったPSVアイントホーヘンはオセールと対戦、アイントホーヘンでは勝ったものの、オセールでは引き分け、どうもPSVアイントホーヘンはフランスでの戦いを苦手としているようである。
 しかし、オランダリーグで首位を好走するPSVアイントホーヘンの勢いは前年度準優勝チームを上回っていた。26分にヤン・フェネホール・オフ・ヘッセンリンクのゴールで先制した段階で、モナコは3得点が必要になった。ところがモナコにとってゴールは遠く、69分には米国代表のダマーカス・ビーズレイが追加点を奪う。朴智星、李栄杓という2人の韓国代表も出場しており、さながら太平洋地域の勝利と言えよう。地中海に面するモナコはなすすべがなく、試合終盤にはいらだったガエル・ジベがレッドカードを受けて1人足りなくなり、0-2と連敗する。
 昨年は2チームがベスト8に進出したフランス勢であるが、今年はリヨンだけがベスト8に進出するにとどまったのである。(続く)

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