第526回 欧州カップ決勝トーナメントへ(3) リヨンの宿敵、PSVアイントホーヘン

■国内リーグで独走するリヨンに高まる期待

 前々回と前回の本連載ではUEFAカップの決勝トーナメント1回戦のフランス勢の戦いについて紹介したが、現在の欧州サッカー界で欧州カップと言えばチャンピオンズリーグである。フランス勢は1993年にマルセイユが幻の優勝を果たしただけであるが、国内で無敵のリヨンに今年こそ優勝を飾って欲しいものである。
 リヨンは本連載第486回、第501回で紹介したとおり、グループリーグを5勝1分と他を寄せ付けない強さで突破する。国内リーグでも独走してきた。年が明けてから、国内リーグ戦では調子を落としていることが気がかりであるが、リーグ戦では十分に2位との勝ち点差があり、余裕をもってチャンピオンズリーグに臨戦態勢を整えることができる。

■注目カードが目白押しの決勝トーナメント1回戦

 昨年12月16日に行われた欧州の16強が対戦するドローは例年になく関心を集めた。チェルシー(イングランド)-バルセロナ(スペイン)、レアル・マドリッド(スペイン)-アーセナルと言うスペインとイングランドの対戦、さらにバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)-ACミラノ(イタリア)など注目の対戦が目白押しである。リヨンのジェラール・ウリエ監督はドローの前にチェルシー、バイエルン・ミュンヘンという強豪との対戦を避けたがっていたが、リヨンは因縁の相手であるオランダのPSVアイントホーヘンと対戦することになった。PSVアイントホーヘンは決勝トーナメントに進出するまではグループEを3勝1分2敗という成績でかろうじて通過している。得失点差は-2であり、得失点差がマイナスで決勝トーナメントに進出した唯一のチームである。楽々と決勝トーナメント進出を決めたリヨンとは対照的であるが、ウリエ監督はチェルシー、バイエルン・ミュンヘンについで三番目に避けたい対戦相手であると表明している。

■昨年の準々決勝は2引き分けの末、PK戦でリヨンが惜敗

 記憶力のよい読者の皆様ならば覚えておられるように、昨年もチャンピオンズリーグでリヨンとPSVアイントホーフェンは準々決勝で対戦している。この模様は本連載第438回と第440回で紹介しているが、第1戦をリヨン、第2戦をアイントホーヘンで戦い、いずれの試合もリヨンは先制しながら追いつかれ、結局第2戦は延長戦を戦っても決着がつかず、PK戦の末、リヨンは2-4で惜敗している。

■韓国のピースカップでも2大会連続で対戦

 さらに、この両チームは欧州以外でもライバルである。日本の皆様ならよくご存知のピースカップ、韓国で行われるこのトーナメントは2003年に始まり、世界中から強豪クラブが集い、さながらクラブ版のワールドカップである。韓国でのテレビ視聴率は代表チームの試合を上回り、サッカーの世界でも欧州化の進む韓国ならではの現象であろう。第1回の決勝を争ったのがリヨンとPSVアイントホーヘンであり、豪雨の中で行われた決勝は前半にPKによる得点をあげたPSVアイントホーヘンが地元の大観衆の声援の中で記念すべき初代王座の座についた。
 そして2年後すなわち昨年の夏に第2回ピースカップが行われた。この大会は8チームを4チームずつの2つのグループに分け、グループリーグの上位1チームが決勝に進出するが、なんとリヨンとPSVアイントホーヘンはグループAに入り、決勝進出をかけてグループリーグ最終戦で対戦した。この試合、チャンピオンズリーグでの対戦とは逆にPSVアイントホーヘンがリードする。リヨンも後半早々に追いつき、試合は3たび1-1のドローに終わる。両チームならびにコロンビアのオンセ・カルダスの3チームが勝ち点4、得失点差+1で並んだが、規定により総得点で上位のリヨンが1位、PSVアイントホーヘンが2位となった。2大会連続の決勝進出となったリヨンであるが、決勝では1991年キリンカップでの雪辱に燃えるイングランドのトットナム・ホットスパーズの前に1-3と敗れ、2大会連続で準決勝にとどまった。
 このように昨年4月以来3度対戦している両チームは、今回の対決を含めるとわずか1年間の間に5回も対戦することになるのである。(続く)

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