第527回 欧州カップ決勝トーナメントへ(4) リヨン、宿敵PSVアイントホーヘンにアウエーで先勝

■リバプールを復活させたジェラール・ウリエ

 過去1年間で5回も対戦することになるリヨンとPSVアイントホーヘン、両チームの監督も熱い火花を散らしている。
 リヨンの監督はジェラール・ウリエ、かつてのフランス代表監督で1992年夏にミッシェル・プラティニの後をついで就任したが、1994年ワールドカップ米国大会予選で敗退した責任を取って辞任している。1998年から2004年までイングランドのリバプールの監督を務め、2001年には国内ではFAカップ、リーグカップ、チャリティシールド、そして欧州ではUEFAカップ、欧州スーパーカップという5つのタイトルを獲得している。実はウリエは英語学を大学で専攻し、若き日にリバプールで教員を務めており、リバプールのファンになったという経緯がある。2001年秋には心臓疾患で倒れたが、プレミアリーグ発足以来これといったタイトルを獲得できなかった名門を復活させたのである。ウリエの経歴を紐解くとプラティニ時代は副官として代表チームのコーチを務め、代表監督を辞した後もリバプールの監督に就任するまで18歳以下ならびに20歳以下のフランス代表の監督を務めており、現在のフランス代表の主力を育ててきた。昨年7月にポール・ルグアンの後任としてリヨンの監督に就任し、5連覇に向って邁進している。

■豪州代表監督を兼任するフース・ヒディング

 一方のPSVアイントホーヘンのフース・ヒディング監督であるが、ご存知の通り前回のワールドカップでは韓国をベスト4に導いており、韓国代表監督を辞してからは古巣のPSVアイントホーヘンの監督になる。また昨年7月からは豪州代表の監督にも就任し、極めて異例な二束のわらじを欧州とオセアニアと言う地域的に離れたチームではいている。欧州ではアヤックス、フェイエノールトそしてPSVアイントホーヘンという3強の力が抜け出ているオランダリーグで就任以来3シーズンのうち2度優勝、豪州監督就任によるパワーダウンが心配されたが、今季も首位を独走している。チャンピオンズリーグ1回戦で各国リーグ首位同士が対戦するのはチェルシー-バルセロナ戦とPSVアイントホーヘン-リヨン戦だけである。

■アフリカ選手権でブレイクしたアルーナ・コネ

 また、PSVアイントホーヘンには注目したい選手がいる。コートジボワール代表のアルーナ・コネである、ワールドカップではコートジボワールとオランダは同じグループになっているため、コネは6月には多くのチームメートと敵と味方に別れて戦うことになる。そしてコートジボワールから多くの若きタレントがフランスリーグを目指すが、コネも例外ではなかった。コネは18歳のときにフランスのランスの練習に参加するが、契約されず、ベルギーのリールセと契約を結ぶ。翌年には隣国のオランダのローダへ移籍し、2シーズン活躍する。そのローダでの活躍に目をつけたのがPSVアイントホーヘンである。欧州に渡って4回目の夏、コネはビッグクラブに移籍し、ランスを見返したのである。ところがこのビッグクラブではまったく試合出場の機会に恵まれなかった。やはり力不足かと思われたこの冬、コネはアフリカ選手権で大活躍、決勝進出の立役者となる。その活躍が認められ、チャンピオンズリーグでリヨンとの対決は秘密兵器コネのデビュー戦となる。

■名手ジュニーニョのFKでリヨンがアウエーで勝利

 さて、PSVアイントホーヘンの本拠地、フィリップス競技場には1200人がリヨンから駆けつけた。この中には第523回の本連載で紹介したモナコに行きながら応援することができなかったファンも少なくないであろう。このところ国内では調子を落としているリヨンはファンの期待に応え、攻撃し続けた。次々と相手ゴールに襲いかかり、65分にブラジル代表のジュニーニョがゴール前25メートルの地点からFKを蹴る。名手のキックしたボールは相手ゴールに吸い込まれ、リヨンが先制する。この1点をフランス代表の正GKを狙うグレゴリー・クーペをはじめとする守備陣が守りきり、リヨンはアウエーで貴重な勝利を上げる。昨年4月以来3試合連続で引き分けだった相手に勝利し、第2戦を迎えることになるのである。(この項、終わり)

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