第826回 欧州カップ、8強への道(4) マルセイユも敗退、2年連続でフランス勢は8強を逃す

■楽観的なマルセイユ陣営

 フランス勢の最後の望みとなったマルセイユ、UEFAカップベスト8決定戦に相当する2回戦の第1戦は地元での3-1の勝利であった。猛攻を仕掛けながら、クロスバーや相手GKに阻まれて3得点にとどまり、終盤にアウエーゴールを奪われ、スコア的には不満は残るが、過去の欧州カップでは第1戦をホームで3-1と言うスコアで勝利したチームの4分の3は勝ち抜いたと言う統計がある。サンクトペテルブルクでの第2戦で0-2で敗れれば、アウエーゴールルールによってマルセイユの敗退となってしまうが、ジャン・シャルル・クルーアンならずともマルセイユ陣営は楽観的であった。
 その楽観論の根拠としては、まず本来の主将であるロリック・カナが累積警告の出場停止処分が解けて戻ってくること、カナはアルバニア代表の選手であり、アルバニア人としてロシアのチームとの対戦は特別な気持ちがあるであろう。そしてカナに代わってマルセイユでの第1戦で主将を務めたジブリル・シセが好調であることと、そのトップのシセを支える3人の攻撃的中盤には左からママドゥ・ニアン、中央にサミール・ナスリ、右にマチュー・バルブエナと若手で充実している選手が控えている。

■シーズン開幕前で、監督を欠くゼニト・サンクトペテルブルク

 一方のゼニト・サンクトペテルブルクは昨季のロシアリーグのチャンピオンである。ようやく長い冬を終え、ロシアリーグの開幕を控え、マルセイユを迎える直前の3月9日には昨季のロシアカップの勝者であるロコモティフ・モスクワとスーパーカップを戦い、2-1で勝利を収めたばかりである。しかし、ロシアのチームにとって、この時期の試合はチームコンディションが万全ではなく、シーズンたけなわの他の欧州勢との戦いは苦戦を強いられるのが常である。ゼニト・サンクトペテルブルクにとっての国内の最大のライバルであるスパルターク・モスクワは2月にマルセイユに敗れている。さらにゼニト・サンクトペテルブルクを率いるオランダ人であり元韓国代表監督であるディック・アドフォカート監督は1回戦のビジャレアル(スペイン)戦での退席処分を受け、3試合出場停止となっており、まだベンチに入って指揮を取ることができない。

■エルミタージュ博物館を見学した余裕のエリック・ジェレ監督

 第1戦の試合内容だけではなく、このような状況からマルセイユ陣営には楽観論が漂った。エリック・ジェレ監督は試合の前日にはエルミタージュ博物館を1時間半に渡って見学し、フランドル派よりも自分はフランス印象派やヴァン・ゴッホの作品に関心があると報道陣に対応する余裕を見せた。
 そしてサンクトペテルブルクのペトロフスキー競技場のピッチに立ったマルセイユのイレブンにとっても最大の敵は目の前のゼニト・サンクトペテルブルクではなかったかもしれない。それは、その直後に控えるフランスカップのベスト8決定戦で戦うCFA2部で唯一勝ち残ってきたカルクフーの存在だったに違いない。カルクフーがナントのボージョワール競技場を借用して行われる試合の入場券は早々に完売、このサンクトペテルブルクの2万2000人の観衆を大きく越える3万50000人と戦わなくてはならないのである。

■数々の好機を逃し、アウエーゴールルールで敗退したマルセイユ

 その余裕や雑念が災いしたのであろう。試合はゼニト・サンクトペテルブルクにとっては理想的な展開となった。試合開始直後にマルセイユは2度のチャンスを得たが、得点ならず。ボール支配でマルセイユはゼニト・サンクトペテルブルクに優位に立たれてしまう。そして1週間前にマルセイユで雨あられのようにシュートを浴びせた攻撃陣は沈黙、特に第1戦勝利の立役者となったシセが大ブレーキとなった。39分にゼニト・サンクトペテルブルクはパベル・ポグレブニアクのシュートで先制する。そしてその直後の42分にシセがGKと1対1になる好機を得たが、同点のチャンスを逃してしまう。
 後半に入り、互角の戦いとなったが、78分にポグレブニアクが追加点をあげて、ゼニト・サンクトペテルブルクがアウエーゴールルールにより優位に立った。マルセイユは2年前同様、ゼニト・サンクトペテルブルクに敗れ、ベスト8進出を阻まれたのである。(この項、終わり)

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