第1360回 チャンピオンズリーグ、決勝トーナメント開始(2) リヨン、アポエルに1-0で辛勝

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■これまでのキプロス勢のチャンピオンズリーグ本戦出場

 キプロスからチャンピオンズリーグの決勝トーナメントに進出したのはこれまでに2回だけある。2008-09シーズンのアノルトシスが最初である。この時のメンバーに1996年のアトランタオリンピックで日本と対戦したブラジルのサビオ、そしてフランス人ではアンダーエイジのフランス代表として活躍したセドリック・バルドンがいる。これらのメンバーで、予備戦1回戦から3つ勝ち抜いてチャンピオンズリーグの本戦に出場し、初戦はアウエーでベルダー・ブレーメンと引き分け、第2戦はホームでギリシャのパナイナイコスに勝利という順調な滑り出しであったが、中盤で強豪のインテル・ミラノと対戦し1分1敗、結局1勝3分2敗という成績でグループリーグ最下位に終わっている。
 キプロスから2チーム目のチャンピオンズリーグ本戦出場はその翌年の2009-10シーズンのアポエルである。予備戦の2回戦、3回戦、プレーオフと3回勝ち抜き、本戦に出場、チェルシー(イングランド)、ポルト(ポルトガル)、アトレチコ・マドリッド(スペイン)という強豪との争いとなる。第1節でアウエーでアトレチコ・マドリッドとアウエーで引き分けたが、壁は厚く、3分3敗と勝ち星なくグループ最下位に終わっている。

■第5節で決勝トーナメント出場決定、首位で決勝トーナメントへ

 そして今回のアポエルは1勝2分の勝ち点5で首位でグループリーグを折り返している。後半戦最初の相手は勝ち点1差のポルトをホームに迎える。この試合アポエルは前半終盤にPKで先制したが、後半の終了間際にPKを与え追いつかれる。しかしロスタイムに決勝点をあげて劇的な勝利、首位をキープしたアポエルは決勝トーナメントが一気に近くなる。第5節で2位のゼニトと引き分けたアポエルはキプロス勢としては初めての決勝トーナメント進出を決め、最終節では最下位の確定しているシャフタールに敗れたものの、首位を保った。

■フランスのイタリア行きの夢を奪ったキプロスとのドロー

 さて、2012年になってフランスサッカー初の国際試合は2月14日にリヨンがアポエルを迎える試合である。アポエルはこれまでにフランス勢と欧州カップで対戦したのは1回、1993-94シーズンのカップウィナーズカップ1回戦のパリサンジェルマン戦である。このときはホーム、アウエーともパリサンジェルマンの苗に沈黙し、無得点で連敗している。しかし、今年のアポエルは手ごわい。フランスのサッカーファンにとっては1990年イタリアワールドカップ予選でミッシェル・プラティニ率いるフランス代表相手に引き分けに持ち込み、結果としてイタリア行きを逃した時のことを連想してしまうのである。しかもリヨンは直前の11日にリーグ戦でカーンに敗れている。

■20歳のアレクサンドル・ラカゼット、魂のゴールを決める

 このカーン戦の敗戦がリヨンにいい意味で緊張感を与えることになった。リヨンのレミー・ガルデ監督は選手を大幅に入れ替える。攻撃陣には20歳のアレクサンドル・ラカゼット、ブラジル代表のエデルソンなどを起用する。リヨンは開始早々から一方的に試合を支配し、次々とアポエルのゴールを襲うが得点はならず、試合は両チーム無得点のまま、後半に入る。後半に入り、58分にスコアボードが動く。この試合、終始動きがよかったのがラカゼットである。1991年生まれのラカゼットはキプロスにフランスが煮え湯を飲まされたことを知らない世代である。ラカゼットが58分に放ったシュートはアポエルの守備の要であるパオロ・ジョルジュに当たり、高く浮き上がり、2年前のチャンピオンズリーグでも活躍したアポエルのGK、ディオニシス・ヒオティスの頭上を越え、先制点となる。ラカゼットのこの試合でのパワーがそのままボールに乗り移った魂のゴールとなった。
 その後も、一方的に攻めるリヨンであったが、追加点はあげることができない。そして完全に沈黙していたアポエルも88分にビッグチャンスを迎え、この試合初めてのシュート、しかしフランス代表GKのウーゴ・ロリスのセービングにより、リヨンが1-0という僅差で勝利したのである。(続く)

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