第2061回 欧州の舞台を目指すフランス勢(6) アウエーの勝利でプレーオフに進出したサンテチエンヌ

 平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。

■首都バクーで行われたリールの第2戦

 前々回と前回の本連載ではヨーロッパリーグ予備戦3回戦に出場したフランス勢のリールもサンテチエンヌも第1戦はホームで引き分けたことを紹介した。
 アウエーでの第2戦は1週間後の8月4日に行われた。フランスのファンにとって先に姿を現したのはリールである。フランスとは2時間の時差のあるアゼルバイジャンで21時キックオフ、フランスでは19時キックオフとなる。
 ガバラのホームゲームであるが、本来の本拠地のスタジアムの収容人員はわずか2000人、そのため、ガバラは首都バクーの8km競技場に場所を移してリールを迎える。奇しくも第1戦も第2戦も本来の本拠地でないスタジアムで試合が行われる。1万1000人収容のスタジアムに8000人ほどが集まり、アゼルバイジャンのロマン・アブラヒモビッチが率いるクラブへの関心は高いようである。

■欧州選手権の英雄エデル合流も得点をあげられなかったリール

 フランスリーグの開幕は8月12日であり、リールはリーグ戦の開幕前に国際試合を2試合戦うことになるが、この試合から欧州選手権の決勝で得点を決めたポルトガル代表のエデルがメンバーに加わる。ただし、シーズン開幕前というのに負傷者が続出しているのが気がかりである。
 対するガバラはアゼルバイジャンリーグが開幕しており、ガバラはすでに5試合を戦い、5得点をあげたリベリア代表のテオ・ウィークが注目選手である。
 少なくとも得点をあげなくてはならないリールは一方的に試合を支配し、ガバラのゴールにシュートを浴びせる。しかしながら、リールのシュートの多くは枠を外れ、得点をあげることができない。逆にガバラは34分にクロアチア人のフィリップ・オゾビッチが目の覚めるような一撃で、やや前で守備をしていたリールのビンセント・エニェアマの守るゴールを破り、1点先制する。リールは決定的なチャンスをつかむが、ガバラのGKのファインプレーに阻まれ、1点を返すことができず、2試合合計スコア1-2で予備戦3回戦での敗退となったのである。

■トップを入れ替えたAEKアテネとサンテチエンヌ

 そしてアゼルバイジャンでの試合に1時間遅れ、ギリシャ時間では21時であるが、フランス時間で20時にギリシャのAEKアテネとサンテチエンヌが対戦する。第1戦がスコアレスの引き分けに終わったサンテチエンヌも得点を奪わない限り勝ち抜くことができない。
 一方のAEKアテネも同様であり、得点を奪わないことには欧州の舞台に近づくことができない。両チームは第1戦と同じ色のユニフォームを着用して第2戦に臨むが、トップの選手を入れ替えた。サンテチエンヌのトップはノーラン・ルーに代えてロベール・ベリックが務め、AEKアテネはチェコ代表のトマーシュ・ペルクハルトに代えてギリシャ代表のアナスタシオス・バカセタスを起用する。この2人のトップが試合の明暗を分けることになった。

■昨年11月以来のゴールが決勝点となったロベール・ベリック

 最初にチャンスをつかんだのはAEKアテネである。16分にクロスからバカセタスがシュートを放つが、わずかにゴールポストの脇をかすめる。
 一方のサンテチエンヌのベリックが、この試合で初のゴールを奪う。23分にサンテチエンヌは相手ボールを奪い、ゴール前のクロスをベリックがヘディングで決めて、アウエーのサンテチエンヌが先行する。熱心なサポーターを有することで有名なサンテチエンヌはこの日も200人がアテネに駆けつけており、スタジアムの片隅で緑の一団が歓喜した。
 このベリックのゴールによってAEKアテネは2得点が必要となった。AEKアテネは攻め続け、サンテチエンヌは守勢一方という展開となった。またサンテチエンヌはブライアン・ダボ、ファビアン・ルモアンの2人が負傷でピッチを去る。
 得点をあげたいAEKアテネは早めの交代を仕掛けるが、得点をあげることなく時計の針は進む。昨年秋の膝の負傷が長引いていたベリックは、実に11月以来の得点であったが、この1点がサンテチエンヌをプレーオフへと導いたのである。(続く)

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