第2579回 3連勝で折り返したパリサンジェルマン(4) まさかのミスに泣いたリヨン、95分に追いついたリール

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■欧州屈指の規模の育成機関を持つベンフィカ

 前回の本連載ではパリサンジェルマンがクラブ・ブルージュ(ベルギー)にも勝利したことを紹介した。万聖節明けの第4節のホームでの試合で決勝トーナメント進出を決めるのではないかという勢いがリヨンとリールに刺激を与えるかとフランスのファンが期待した10月23日の21時に両チームの試合はキックオフされ、いずれも試合終盤に劇的なゴールがあった。
 リヨンはベンフィカ(ポルトガル)をホームに迎える。ベンフィカはかつての本拠地ルッス競技場は西欧最大の規模を誇ったが、2004年に開催された欧州選手権のために近代的な競技場に生まれ変わり、収容人員は西欧最大ではなくなった。しかし、ベンフィカは現在は57ヘクタールという広大な土地に育成機関を設けた。かつては西欧で一番大きなスタジアムを本拠地とするチームとして有名だったベンフィカは、現在は欧州で最大の育成機関を持ったチームとして名をはせている。先日行われた19歳以下の欧州選手権のポルトガル代表23人のうち6人がベンフィカの所属、17歳以下となると22人中9人がベンフィカの育成機関に所属している。しかし、そのベンフィカも今季のチャンピオンズリーグは連敗スタートで勝ち点をあげていない。

■フランス勢が勝てないリスボンのルッス競技場

 第3節を迎える時点のグループGは第1節で引き分けたゼニト・サンクトペテルブルク(ロシア)とリヨンが勝ち点4で並び、RBライプチヒが勝ち点3で追っている。ベンフィカもホームの試合で勝利して望みをつなぎたいところであり、リヨン戦は2トップで攻撃的な布陣で臨む。
 フランスのファンにとってリスボンのルッス競技場といえば、1989-90シーズンのチャンピオンズカップの準決勝でベンフィカの選手のハンドによるゴールが認められ、マルセイユが敗れた悔しい思い出の舞台である。ベンフィカは本拠地ではフランス勢相手に10勝4分と滅法強く、現在5連勝中である。

■ポルトガル代表のアントニー・ロペス、痛恨のミスで決勝点を献上

 試合はベンフィカが立ち上がりの4分に先制点を奪う。しかしながら、試合を支配したのは青いユニフォームのリヨン、パスをつないで優勢に試合を進めるが、なかなか得点を奪うことができず、1点リードされて後半を迎える。リヨンは国内リーグでは負けが続き、順位を17位まで落としている。調子の悪いチームは優勢に試合を進めていても勝ち点が奪えないものである。ようやくリヨンが同点に追いついたのは70分、メンフィス・デパイが左足で至近距離から同点ゴールを放つ。何とか勝ち越しゴールを奪いたいところであるが、86分にリヨンのゴール前でそのプレーは起こった。リヨンのGKはポルトガル代表のアントニー・ロペス、ロペスが手でクリアしたボールが、ベンフィカのピッツィの足元へ、ピッツィは難なく無人のゴールに決めて決勝点となる。フランス生まれであるがポルトガル代表のロペスにとっては両親の故郷への辛い里帰りとなった。

■連敗スタートのリール、アディショナルタイムにジョナタン・イコネが同点ゴール

 そして連敗スタートとなったリールは本拠地のピエール・モーロワ競技場にスペインのバレンシアを迎える。グループHはアヤックス・アムステルダム(オランダ)が2勝、バレンシアとチェルシー(イングランド)が1勝1敗であり、リールは何とか勝利をあげて追いつきたいところである。昨年度のフランスリーグでの最優秀GKに輝き、フランス代表入りも果たしたマイク・マイニャンと9月に代表入りし、早速アルバニア戦で得点をあげたジョナタン・イコネに期待が集まる。
 リールは5万近い観衆の声援を受けて試合を支配し、積極的にシュートを放つが、前半は無得点に終わる。後半に入って先制点をあげたのはアウエーで守勢のバレンシアであった親子二代のロシア代表のデニス・チェリシャフが元フランス代表のケビン・ガメイロのアシストで先制点。チャンピオンズリーグで勝てないリールは今日も負けるのか、とファンが思ったアディショナルタイム、95分にゴールまでボールを受けたイコネが起死回生の同点ゴールを決め、チームに初めての勝ち点1をもたらしたのである。(この項、終わり)

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