第2711回 パリサンジェルマン、初の決勝進出 (2) フランス人の若手選手が3人先発するRBライプチヒ

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■若い選手を他のクラブから獲得するRBライプチヒ

 クラブ創設11年でチャンピオンズリーグの準決勝に進出したドイツのRBライプチヒ、レッドブルという大スポンサーがついているが、決して大型補強を繰り返して戦力をアップしてきたわけではない。
 このクラブの特徴はクラブ自身も若いが、選手も若いことである。また、その若い選手の多くは自前の下部組織で育成したのではなく、他のクラブの所属する若手選手を世界各国から獲得しているのである。準決勝の先発メンバーのうち、25歳を超えているのはGKのペテル・グラーチ(30歳)、FWのユスフ・ポウルセン(26歳)、MFのマルセル・ザビツァー(26歳)、ケビン・カンプル(29歳)だけである。

■フランス代表のダヨ・ウパメカノ、モンペリエから移籍したノルディ・ムキエレ

 一方、最も若いのはフランス人のダヨ・ウパメカノで21歳である。ウパメカノは本連載でも紹介したことがあるが、フランス生まれで、フランス育ちであり、年代別代表の常連で2015年には17歳以下の欧州選手権の優勝メンバーとなっている。当時はバランシエンヌに所属するアマチュア選手であったが、その後、オーストリアのレッドブル・ザルツブルグとプロ契約を結ぶ。そして系列チームであるRBライプチヒに2017年に移籍し、フランス代表にも選出されている。
 2番目に若いのはスペイン人のダニ・オルモであるが、3番目と4番目に若いのはフランス人選手である。3番目に若いのが右サイドDF、22歳のノルディ・ムキエレである。このポジションは2016年のリオデジャネイロオリンピックの銀メダリストのルーカス・クロシュターマンの先発が予想されていたが、ムキエレが出場する。ムキエレはパリの郊外の生まれでアマチュア時代はパリFCに所属していた。ラバルでプロ契約を結び、その後モンペリエに移籍し、ここで頭角を現し、20歳の2018年の夏、RBライプチヒに移籍した。

■パリサンジェルマンでも活躍したクリストファー・ヌクンク

 そして4番目に若いのが左ウイングの22歳のクリストファー・ヌクンクである。本連載の読者の方であれば、パリサンジェルマンの若手のFWとして主力が出場しない試合で活躍したことをご記憶であろう。しかし、パリサンジェルマンでは主力になりえないことは認めなくてはならない。パリサンジェルマンの下部組織からプロ契約を得るに至ったが、昨年の夏、RBライプチヒに活躍の場を求めて移籍、早速レギュラーとして活躍している。
 なお、パリサンジェルマン出身の選手は今回ベスト4に入ったチームすべてに所属している。リヨンにはムーサ・ダンベレ、ドイツのバイエルン・ミュンヘンにはキングスレー・コマンが所属している。いずれもフランス人選手であり、今季のチャンピオンズリーグでは必ずフランス人、しかもパリサンジェルマンに在籍した選手が王者に輝くのである。

■33歳の青年監督、ユリアン・ナーゲルスマン監督

 そして若いのはクラブと選手だけではない。ユリアン・ナーゲルスマン監督は33歳になったばかりの、ブンデスリーガで最も若い監督である。コンピューターを駆使し、チーム分析を行う若き知将は、準々決勝でタイラー・アダムズの起用が成功、準決勝でもムキエレの起用は注目である。そして、このナーゲルスマン監督も多くの選手同様、若くして移籍してきたのである。同じドイツのホッフェンハイムを率い、就任2年目には4位、3年目には3位とクラブ史上最高の成績を残し、2019年の夏にRBライプチヒに移籍し、就任初年は国内リーグで3位、そしてチャンピオンズリーグではこの躍進である。
 ナーゲルスマン監督はこれまでにパリサンジェルマンのトーマス・トゥヘル監督と3回対戦したことがある。ナーゲルスマン監督がホッフェンハイムの監督を4季務めたわけだが、2016年から2017年にかけてボルシア・ドルトムントの監督を務めていたトゥヘル監督と対戦したのである。この結果はドルトムントのトゥヘル監督が2勝1分とホッフェンハイムのナーゲルスマン監督を圧倒しているが、両者が率いるチームを変えた今回の対戦はどうなるであろうか。(続く)

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