第3063回 チャンピオンズリーグ開幕(3) クラブ史上初の準決勝で連敗した1992-93シーズン

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■パリサンジェルマンにとって転機となった1991年

 1989年のイタリアのユベントスとの2回目の対戦は連敗、パルサンジェルマンは力の差を感じさせられた。意外なことにこの時点でパリサンジェルマンは欧州三大カップで強豪国のチームや強豪チームとはこのユベントスとしか対戦していなかったということである。
 しかし、この敗戦を機にチームの歴史は変わった。まず、ビッグクラブへの脱皮である。パリ財界のバックアップでできたとはいえ、市民クラブであった。クラブの実権を握っていた放送業界出身のミッシェル・デニゾであった。司会者としても人気のあったデニゾは出身地のシャトールーの会長となり、1991年にはパリサンジェルマンの会長に就任する。デニゾの会長就任とほぼ同時に契約型テレビのカナルプリュスがパリサンジェルマンに資本参加する。

■新体制初年度にリーグ3位、3季ぶりに欧州三大カップ出場

 ボスマン判決前で外国人選手の登録に制限のある中で大物選手を獲得してきた。1991-92シーズンはそれまでクラブを支えてきた36歳のレジェンド、サフェット・スジッチは残留を望んだものの、2部のレッドスターに移籍、クラブには後にアメリカワールドカップの優勝メンバーとなるブラジル勢がやってきた。ビッグクラブ宣言初年度はリーグ戦3位となり、1992-93シーズンは3年ぶりに欧州三大カップに復帰する。

■伝説のレアル・マドリッド戦の次の準決勝の相手はユベントス

 この大会からパリサンジェルマンは欧州の強豪クラブと戦うこととなる。1回戦(ベスト32決定戦)ではギリシャのPAOKテッサロニキと対戦し、連勝(アウエーの第2戦はリードしている段階で観衆がグラウンドにおりてきたため中断)する。ベスト16決定戦はイタリアのナポリが相手、すでにディエゴ・マラドーナはいなかったが、のちに柏レイソルで活躍するカレッカを擁するチームであった。ナポリでの第1戦で勝利し、パリでは引き分けて、勝ち抜く。ベスト8決定戦の相手はベルギーの名門、アンデルレヒトである。ピエール・カルパンティエが支援する強豪である。この難敵に対し、ホームでの第1戦はスコアレスドロー、アウエーの第2戦では先制されたがアントワン・コンブアレが同点ゴール、1-1のドローであったがアウエーゴール2倍ルールでベスト8入りする。
 準々決勝はスペインのレアル・マドリッドとの対戦、この歴史的な試合については本連載でも何回か紹介しているが、マドリッドでの第1戦は1-3と敗れ、パリでの第2戦は後半のアディショナルタイムを迎える時点で3-0とパリサンジェルマンがリードしていたが、92分にレアル・マドリッドが得点をあげ、延長戦かと思われたが、96分にコンブアレが決勝のヘディングシュートを決める。 このシーズンは準々決勝のレアル・マドリッド戦が記憶に残るが、クラブ史上初の準決勝を忘れてはならない。その相手こそユベントスであった。

■パリサンジェルマン、ロベルト・バッジョのユベントスに連敗

 ユベントスとは初対戦から10年もたたないうちに3回目の対戦となった。レアル・マドリッドとの劇的な勝利の直後ということもあり、ファンは期待する。これまでの2回はパリで第1戦であったが、今度はトリノで1993年4月6日に第1戦を迎える。3年前の試合を知る選手は誰も出場していない。試合はアウエーのパリサンジェルマンが先制する。このシーズンにモナコから加わったリベリアの怪人ことジョージ・ウェアが先制点を決める。ユベントスとの初対戦以来、ほぼ10年ぶりにリードした。5回目の対戦で初勝利を願うアルプスの向こうのパリのファンの希望を砕いたのは3季前はフィオレンティーナの一員としてユベントスに敗れたロベルト・バッジョであった。バッジョは53分に同点ゴール、そして終了間際の89分に決勝点をあげ、ユベントスが2-1で勝利した。
 4月22日、パルク・デ・プランスはレアル・マドリッド戦の再現を望む4万6000人のファンでぎっしりと埋まった。しかし、試合は無得点が続き、77分、ゴール前でユベントスはFKのチャンスを得る。直接狙うかと思われたが、左サイドに蹴って折り返し、ゴール前でつないで決勝点をまたもバッジョが決める。バッジョの一撃でパリサンジェルマンは準決勝で敗退したのである。そしてユベントスは決勝でドイツのボルシア・ドルトムントに勝利、パリサンジェルマンと対戦した欧州三大カップで三度欧州の頂点に立ったのである。(続く)

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