第3630回 好調な序盤戦となったフランス勢(5) トップシードのローマを破ったリール
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■全試合が同じ日に開催されたヨーロッパリーグ第2節
これまでの本連載ではチャンピオンズリーグのリーグフェーズに出場したフランス勢のマルセイユ、モナコ、パリサンジェルマンの戦いについて紹介してきた。チャンピオンズリーグをはじめとする欧州カップの出場枠を決定するUEFAインデックスはヨーロッパリーグやカンファレンスリーグの成績もカウントされる。現在欧州では5番目の地位にあるフランスリーグであるが、その順位を上げることができるのであろうか。
ヨーロッパリーグの第2節は10月2日に行われた。18時45分にキックオフを迎えたのがリールとニース、21時キックオフがリヨンである。
■ハコン・アルナル・ハラルドソンが先制点を決めたリール
リールはアウエーでローマ(イタリア)と対戦、ともに第1節は勝利しているチームであるが、第1シードのローマは出場36チームの中でUEFAインデックスはトップである。すなわち、リールは最強の相手とアウエーでの試合となる。
ローマの会場のオリンピックスタジアムは6万以上の観衆で埋まる。厳しい条件ではあるが、先制点はリールであった。6分に右サイドのトマ・ムニエがプレスをかけてボールを奪い、フェリックス・コレイアを経由して前線のハコン・アルナル・ハラルドソンにつなぎ、右足での強烈なシュートがネットを揺らした。
試合はリールが組織的な守備でローマの攻撃を封じ、ローマはシュート数で上回るものの、得点に至らない。リールもゴールをあげることなく、時計の針は進んでいく。80分過ぎ、ローマがリールをゴール前に釘付けにする。80分にフランサがペナルティエリア内でハンドかと思われたが、主審はハンドを取らず、ゲーム続行、リールはCKに逃れる。ローマはCKのチャンス、ニアポストでメーメト・ゼキ・チェリクが合わせたが、競り合ったリールのアイサ・マンディがハンド、今度は主審はVAR判定の結果、ペナルティスポットを指さした。
■PKを3連続でストップしたベルケ・エゼル
同点に追いつくPK、キッカーは数分前にピッチに入ったアルテム・ドブビク、ウクライナ代表である。ドブビクのコースを読んだリールのGKベルケ・エゼルが止める。ローマの観衆は天を仰ぐが、リールの選手がPKが蹴られる前にペナルティエリア内に侵入していたということで主審はPKのやり直しを命じる。6万観衆は拍手喝采、ドブビクは2回目のPK、1回目と同じコースに蹴るが、エゼルがまたコースを読み、ストップし、オリンピックスタジアムにはため息が漏れる。さらに驚きの判定が続く。今度はGKがキッカーよりも先に動いたということで3回目のPKとなったのである。ローマはPKを2度失敗しているドブビクを交代、アルゼンチン代表のマティアス・スーレに託す。スーレはドブビクとは逆のコースを狙うが、エゼルはこのPKもはじき出す。
実に珍しいPKの3連続失敗、これではローマは勝てるはずがない。リールはアウエーの大観衆の前で1-0と勝利し、連勝スタートとなった。本連載第3623回で紹介した通り、ローマは第1節ではニースを2-1と破っており、リールはニースの仇をローマで討ったのである。
■66年前にフェネルバフチェをプレーオフの末破ったニース
そのニースの第2節はトルコのフェネルバフチェとアウエーでの戦いとなる。同時刻に行われていたローマ-リール戦ではリールのGKエゼルをはじめとしてトルコ人選手が活躍した。ニースとフェネルバフチェはこれまでに欧州カップで対戦したことがある。今から66年前のことである。当時のチャンピオンズカップで対戦し、イスタンブールでの第1戦はフェネルバフチェが2-1と勝利、ニースでの第2戦はニースが2-1と勝利した。現在のルールであれば、延長戦やPK戦で決着をつけることになるが、この時は中立地でプレーオフを行うことになっていた。第2戦の20日後にスイスのジュネーブで行われたプレーオフ、リールは攻撃陣が爆発し、5-1と大勝し、準々決勝に進出した。
これ以降、ニースはチャンピオンズカップ、チャンピオンズリーグの本戦に出場しておらず、これが最後の勝利となったのである。(続く)