第1656回 一転、波乱の連続、フランスカップ(2) 2部勢3チーム、すべて1部勢を倒す

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■オセール、ディジョンとの2部対決を延長後半ロスタイムのゴールで制す

 前回の本連載ではフランスカップのベスト16決定戦で2部初昇格で現在最下位のCAバスティアが同じ2部に所属するニオールに試合終了直前に追いつき、PK戦で勝ち進んだことを紹介した。もう1つの2部勢対決はオセール-ディジョン戦である。このカードはリーグ戦ではディジョンですでに対戦しており、ディジョンが1-0と勝利している。リーグ戦の順位もディジョンが5位でオセールは12位、しかしホームのオセールが試合を支配し、先制点をあげ、64分に追加点をあげてからディジョンの反撃が始まり、2点差を追いつき、試合は延長戦へ突入する。」イエローカードが荒れる試合となり、ディジョンは退場者を出す。オセールの決勝点は延長後半のロスタイムであった。オセールが3-2で競り勝ったのである。

■2部カーン、今大会初の1部勢との戦いに勝利

 ファンの注目は今回のフランスカップのベスト32決定戦で実現しなかった2部勢の1部勢へのチャレンジである。ベスト16決定戦で最初に行われた試合でこの組み合わせは実現する。1月21日18時、2部のカーンは1部のアジャクシオの本拠地、フランソワ・コティ競技場に乗り込む。観衆はさびしく、わずか1500人。1部で最下位のアジャクシオへのファンの期待も少ない。前半こそ両チーム無得点であったが、後半に入りカーンは2得点を奪い、2部と1部の今大会初対決は2部のカーンがアウエーを苦にせず勝利したのである。

■SCバスティアを倒したRCランス、ソショーを下したアンジェ

 そしてこのアジャクシオでの試合に遅れること30分、同じコルシカ島の誇るもう1つの1部勢であるSCバスティアがRCランスとアウエーで対戦する。2部で3位と1部復帰を目指すRCランス、ファンの期待も大きく、フェリックス・ボラール競技場には2万人以上のファンが集まった。試合は1部のSCバスティアが67分に先制、しかし、勢いのあるRCランスは先制点を奪われても動じることなく、87分に追いつき、試合は延長戦となる。血と黄金のニックネームのRCランスが延長戦に入って決勝点をあげた。デメ・エンディアが20メートルのミドルシュートを決め、RCランスは2-1と勝利してベスト16に残ったのである。
 2部勢の勢いは止まらない。さらに30分遅れてキックオフされたこのラウンドで最後の1部2部対決は2部のアンジェが1部のソショーを迎え撃つ。アンジェは2部の2位、一方のソショーは1部で19位と対照的な成績である。この試合も勢いの差が出る。後半の70分過ぎにアンジェがゴールをあげて1-0と勝利する。
 なんと2部勢は3試合の1部勢との対戦ですべて勝利するという結果になったのである。

■CFA2部のイール・ルース、PK戦でボルドーに勝利、古豪セトも勝利

 さらにこのベスト16決定戦は2部勢が1部勢を倒しただけではなかった。5部に相当するCFA2部のイール・ルースが1部のボルドーと対戦、試合はボルドーが一方的に押し込むが、なかなか得点を奪うことができない。結局延長になっても両チーム無得点、試合はPK戦となり、最後はボルドーのキックをイール・ルースのGKがストップして、コルシカ勢は先述の通り1部の2チームが2部のチームに敗れたが、前回紹介した2部のCAバスティアとCFA2部のイール・ルースが勝ち残ったのである。
 ベスト16決定戦を戦う32チームの中で最も下部のクラブは5部に相当するCFA2部に属している3チームである。1部のリールに挑戦したクロワは0-3と敗れたが、イール・ルースはボルドーに勝利している。
 そしてもう1つ残ったチームが古豪セトである。セトはベスト16決定戦で1つ格上のCFAのジュラシュッドと対戦し、2-0と勝利している。小さなジャイアントキリングであるが、この結果を見て喜ぶファンは少なくない。セトは財政問題で下部に低迷しているが、フランスカップには最初の2回に出場しなかっただけで、その後は94回連続出場、1930年代にはリーグとカップを2回ずつ制した名門で、フランスサッカー史上初の二冠を記録したクラブなのである。(続く)

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