第1698回 フランスカップ、ファイナル(3) モナコを延長戦で下したギャンガンも決勝進出

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■もう1つのブルターニュ勢のギャンガンが刺激になったレンヌ

 前回の本連載ではフランスカップ準決勝で現在リーグ14位と振るわないレンヌが2部で上位のアンジェに逆転勝ちしたことを紹介したが、レンヌが決勝に進出することができた理由は本拠地のルート・ド・ロリアンを埋め尽くしたファンの大声援だけではない。レンヌの選手、スタッフに通常以上のモチベーションを与えたのは、もう1つの準決勝、ギャンガン-モナコ戦の存在である。ギャンガンもレンヌ同様ブルターニュのチームであり、リーグ戦ではレンヌよりも低い順位の17位、今季10季ぶりに1部に復帰してきたチームである。しかし、5年前のフランスカップ決勝戦、レンヌは当時2部だったギャンガンと対戦し、敗れている。このブルターニュのライバルと再び決勝で対戦し、今度こそ勝利したい、という選手、スタッフ、そしてファンの気持ちが準決勝の逆転勝ちを呼んだと言えるであろう。

■10季ぶりの1部で苦戦するギャンガン、多彩な攻撃陣のモナコ

 一方のギャンガン、リーグ戦での成績は10季ぶりに1部復帰、しかもこの間には3部に相当するナショナルリーグにも降格している。2部8シーズンで一桁順位は4回しかない。昨季2位になって1部に復帰し、降格を免れうる17位という成績は健闘とも言えるであろう。リーグ17位という成績が期待よりやや上のものであるならば、フランスカップの準決勝は期待をはるかに上回るものである。準決勝の相手はギャンガンとともに近畿1部に復帰したモナコであるが、大型補強が功を奏し、現在2位、難敵である。モナコとは前半戦いアウエーで対戦し、0-2と敗れている。
 パリサンジェルマンに次ぐ成績を残しているモナコの強みは攻撃陣の多彩さである。ラダメル・ファルカオ(現在負傷中)、ハメス・ロドリゲスというコロンビア勢、エマニュエル・リビエール、アントニー・マーシャル、ジェルマンに加え、1月にはディミタル・ベルバトフが加入した。これら競争の激しいFWは出場選手が与えられたチャンスの中で成果をあげようとする、その結果としてリーグ戦33試合で54得点という高い得点につながっているのであり、ベスト4が出そろった時点で優勝の本命と目す意見が多数であった。

■準決勝進出に沸くギャンガン、先制点をあげる

 モナコを迎え撃つギャンガンは、戦力的にモナコに劣ることは明白であるが、ホームのアドバンテージを活かしたい。ギャンガンの本拠地ルドルー競技場は1万800人収容であるが、試合の3日前の段階で残りのチケットは2000枚、平日の夜の試合であることを考えるとこの売れ行きは異例であろう。ギャンガンにとっては1部残留が最重要であるが、これだけのファンの前で張り切らないわけにはいかない。そして同じブルターニュ勢のレンヌとの対戦を望む気持ちは試合開始早々のゴールになった。
 6分過ぎに、ギャンガンはチームの得点王のムスタファ・ヤタバレが先制点をあげる。左サイドからのFKにうまく合わせて、準々決勝のカンヌ戦に次ぐゴールを決め、赤と黒のチームカラーに染まったスタンドを歓喜させる。

■延長後半に2点をあげたギャンガン

 戦力では上回るモナコ、注目の攻撃陣はベルバトフとジェルマンである。開始10分はギャンガンにボールを支配されるが、徐々に地力を発揮してくる。1点目のFKのきっかけとなるファウルを犯したファビーニョが右サイドを駆け上がり、クロスをあげる。このクロスをベルバトフが決めてモナコは追いつく。
 後半の終了間際はギャンガンが攻めたてるが、決勝点を奪えず、延長戦に突入する。モナコは3人の交代枠のうち2人は攻撃陣に使い、2トップをリビエールとマーシャルに代える。
 延長前半も両チーム無得点であったが、勝ち越し点を奪ったのは延長後半の112分、ギャンガンの交代選手のファティ・アティク、満員の観衆が歓喜する。さらにギャンガンは先制点をあげたヤタバレが117分にもダメ押し点を決める。ギャンガンが3-1とビッグクラブのモナコを破って決勝に進出したのである。(続く)

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