第1700回 フランスカップ、ファイナル(5) ギャンガンに対し10年ぶりの勝利を目指すレンヌ

 おかげさまで第1700回の連載を迎えることになりました。2001年の連載開始以来、読者の皆様に支えられ、連載回数を重ねることができました。読者の皆様に改めて感謝するとともに、引き続きのご愛読よろしくお願いいたします。

■決勝戦で複数回戦ったカードは強豪チームが目白押し

 前回の本連載はフランスカップの決勝で複数回対戦したことのあるカードを紹介してきた。過去の顔ぶれをみると、マルセイユ、ボルドー、パリサンジェルマン、モナコ、ナント、そして時代をさかのぼればサンテチエンヌ、セート、リール、RCパリとその時々の強豪チームが名を連ねている。フランスカップと言えばノックアウト方式でジャイアントキリングの連続であるが、決勝で2度以上顔を合わせるのはその時々で実力のあるチームであることがわかる。

■強豪チーム同士の対戦に負けない盛り上がりを見せるレンヌ-ギャンガン戦

 これらのメンバーと比べると、5年ぶりの決勝対決となったレンヌとギャンガンはいささか小ぶりな感じは否めない。フランスカップ決勝を迎える段階での両チームの順位はレンヌが15位、ギャンガンは16位と下位に低迷しており、5年前もレンヌは7位、ギャンガンは2部の13位という成績であった。この2シーズンだけではなく、それ以外の年度の成績を見ても、リーグ優勝の経験がなく、フランスカップ決勝で複数回同一カードを戦ったチームはこの両チームだけである。
 しかし、両者の対戦は他の強豪チームの対戦以上の盛り上がりを見せている。それはなんといってもブルターニュという地域のクラブ同士のダービーであるということが多いであろう。前回の本連載で紹介した過去の対戦を見ても同一地域での決勝戦という例はない。しいて言えば地中海沿いのマルセイユ-モナコ戦であろうが、ブルターニュほどの強い結びつきはない。実は5年前の決勝戦の観衆は80,056人、この数字はスタッド・ド・フランスのサッカーの試合における最多観客動員の記録である。そして奇しくも両チームのチームカラーは赤と黒、スタッド・ド・フランスは赤と黒、さらにはブルターニュを表す黒の白の横縞の旗で埋め尽くされ、フランスカップ史上最も盛り上がった決勝戦となったのである。

■赤と黒、黒と白の旗があふれるスタッド・ド・フランス

 今回も5年前同様に盛り上がりを見せた。両チームのファンのためにフランス国鉄はTGVの臨時列車を運行させる。スタッド・ド・フランスは5年前同様、赤と黒の両チームのチームカラー、そして黒の白のブルターニュのカラーで染まる。スタンドには恒例によりフランソワ・オランド大統領をはじめとする国家首脳、さらにワールドカップ代表メンバー選考を控えたディディエ・デシャン監督の姿も見える。また、レンヌのオーナーであるフランソワ・アンリ・ピノーももちろん観戦している。ピノーは世界でも有力なラグジュアリーのコングロマリットであるケリングの総帥である。ケリングはグッチ、サンローラン、プーマなどのブランドを扱っており、レンヌのユニフォームのサプライヤーはもちろんプーマである。レンヌはこの決勝戦のために本来であれば来季から着用するはずの新しいユニフォームを着用する。新素材で選手のパフォーマンスが向上するためのつくりとなっており、プーマとしても期待の新作である。
 そしてピノーはケリンググループの総帥であるが、バラック・オバマ米大統領とポール・マッカートニーの訪日に挟まれるような日程で日本を歴訪したニコラ・マルテルの先輩にあたる。ピノーはビジネスマンとしてフランスを代表する存在であるが、「フリーダ」で有名な女優のサルマ・ハエックと結婚している。もちろんサルマ・ハエックも赤と黒のコスチュームに身を包み、ピノーの隣に寄り添っている。

■今季のリーグ戦での対戦は2試合ともギャンガンが2-0で勝利

 当時2部のギャンガンはレンヌに5年前の決勝で勝利しているが、その後も2部に低迷し、ようやく1部に今季戻ってきた。したがって今季のリーグ戦が両チームにとって久しぶりの公式戦での対戦となる。リーグ戦では第9節の10月5日にギャンガンで対戦したが、ギャンガンが2-0と勝利、そして後半戦は3月1日の第27節でレンヌで対戦、舞台と季節が変わっても同じくギャンガンが2-0と連勝している。実はレンヌがギャンガンに最後に勝利したのは今からちょうど10年前の2004年1月31日のリーグ戦、それ以来10年ぶりの勝利を目指すレンヌは今回の決勝戦に臨む意気込みが強いのである。(続く)

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