第1842回 フランスカップのファイナリスト決定(1) 2部のオセール、10年ぶり6回目の決勝進出

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ベスト4の四者四様の注目

 前回の本連載ではフランス国内の3つのタイトルのうちで最初に王者が決定するリーグカップでパリサンジェルマンが優勝したことを紹介したが、今回はフランスカップについて紹介しよう。今季のフランスカップについて派本連載第1824回から第1829回にかけて準々決勝までの戦いを紹介してきた。ベスト4の顔ぶれは1部のパリサンジェルマン、サンテチエンヌ、ギャンガン、2部のオセールである。
 パリサンジェルマンについては前回の本連載のとおり、国内三冠、さらにはチャンピオンズリーグと合わせて四冠なるかが注目である。サンテチエンヌについては名門が33年ぶりの決勝進出成るかに関心が集まった。そしてギャンガンは昨年の優勝チーム、フランスカップで連覇を達成すれば1999年から2000年にかけてのナント以来の偉業となる。そして唯一2部で勝ち残ったオセールも長らく低迷が続くが、このチームを一躍飛躍させたのは1979年のフランスカップでの決勝進出であり、今回のフランスカップで再起のきっかけをつかみたいところである。
 このように四者四様の注目が集まるわけであるが、準決勝は4月7日にオセールでオセール-ギャンガン戦、8日にパルク・デ・プランスでパリサンジェルマン-サンテチエンヌという組み合わせとなった。

■くじ運に恵まれたオセールとギャンガンが対戦

 2部のオセールは7回戦から参戦し、6試合を勝ち抜いて準決勝に進出した。これまでの6試合で1部勢とは試合をしたことはなく、準々決勝で対戦した2部のブレストが唯一のプロ相手の勝利である。また、ベスト8決定戦のポワレー・シュール・ビ(ナショナル)、準々決勝のブレスト戦と2試合連続して競り勝ってきた。くじ運に恵まれたことは事実であるが、かつてのオセールの国内外での活躍を知るファンにとってはそろそろ1部に復帰してもらいたいチームである。
 一方のギャンガンであるが、ベスト32決定戦から参戦し、4チームを下して準決勝に進出したが、4試合のうちプロチームとの対戦はベスト16決定戦の2部のシャトールー戦だけであり、こちらもくじ運に恵まれてのベスト4であり、準決勝の相手も唯一の2部チームとなった。2005年以来、フランスカップでは下部のリーグのチームに23連勝、ジャイアントキリングの多い中でこれもまた素晴らしい記録である。

■戻ってきた強いオセール

 会場のアベ・デシャン競技場、1万8500人のファンで満員になることは2部に降格して以来なかったが、当日券の2000枚を含め、満員の観衆の中でキックオフされた。
 オセールの指揮を執るのは44歳のジャン・リュック・バヌッチ監督、オセールというと長年このチームを率いてきた現在76歳のギ・ルー元監督のイメージが強いが、1979年のフランスカップで準優勝した時、40歳であったというと本連載の読者の皆様は驚かれるであろう。
 試合は2部で8位のオセールが1部で11位のギャンガンを圧倒する。かつて国内チーム相手の試合だけではなく、チャンピオンズリーグなどで欧州の強豪を何度も沈めてきたオセールが戻ってきた。攻守ともディフェンディングチャンピオンを圧倒し、ギャンガンは全く攻撃をつくれず、オセールの白いユニフォームが縦横無尽にグラウンド内を走り回る。

■フレデリック・サマリターノのゴールで10年ぶりの決勝へ

 唯一の得点は15分、フレデリック・サマリターノが決める。出身地のバンヌ、ナントの下部組織時代にフランスの19歳以下の代表に選出、ウーゴ・ロリス、ヨアン・カバイエ、ヨアン・グルクフらとともに活躍した。プロになってからは2009年のリーグカップで2部のバンヌが決勝に進出する立役者となった。2010年にオセールに移り、2年間アジャクシオに在籍し、2年前にオセールに戻ってきた。
 オセールはこれがフランスカップの決勝は6回目となる。過去5回の決勝戦の戦績は4勝1敗、すなわちセンセーショナルなデビューを飾った1979年のナント戦以外はすべて勝利しているのである。(続く)

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