第2277回 新春を飾るフランスカップ (1) 呼称の変わった地域リーグから勝ち残った4チーム

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■今年もフランスカップベスト32決定戦で幕開け

 前回までの本連載ではワールドカップイヤーの幕開けということでワールドカップ展望を取り上げたが、今年もフランスのサッカーはフランスカップで始まる。
 今年も新年最初の週末は1部勢20チームが参戦するフランスカップのベスト32決定戦が行われる。このベスト32決定戦の見どころは下位のリーグに所属するチームが休み明けの1部勢を迎えてジャイアントキリングを起こすかどうかである。そしてこのベスト32決定戦の段階では思わぬ下位のアマチュアのクラブも残っており、そのようなクラブがパリサンジェルマンと同じステージで戦い、その対比も興味が尽きない。

■呼称が変更となった下部リーグ

 さて、今年は下位のリーグの呼称が変更となった。フランスでは1部と2部がプロリーグ、そして3部に相当するナショナルリーグはプロとアマチュアの選手が混在している。昨年までは4部に相当するのがCFA(フランスアマチュアサッカー選手権)、5部に相当するのがCFA2(フランスアマチュアサッカー選手権2部)と言われていた。ナショナルリーグまでは全国1つのリーグ、CFAは全国を4つのブロック、CFA2は全国を12のブロックにわけてリーグ戦を行う。
 今年からはリーグの編成は変更せずに、CFAをナショナルリーグ2部、CFA2部をナショナルリーグ3部とした。実はこれは1998年までの呼称と同じである。
 そして、6部以下に相当するのが地域リーグということで、6部相当がDH、7部相当がDHR、8部相当がDSRとなっている。これをそれぞれR1、R2、R3と呼称を変更した。

■1部勢と対戦したR1のアーズブルック、R3のスティル1930

 この地域リーグのチームは1回戦あるいは2回戦から参戦しており、年明けのベスト32決定戦に進出するには8回または7回勝ち抜かなくてはならない。3回戦からはN3、4回戦からはN2、5回戦からはN1、そして7回戦からは2部のチームが参戦してくる。7回戦から参戦した2部のチームですら、2回勝ち抜いてベスト32決定戦位残ったのは半数強の12チーム、その中で地域リーグのチームでベスト32決定戦までたどり着いたチームが今年は4チームもあった。昨年は地域リーグで年越しをしたのは1チームだけであったことから注目を集めた。
 その4チームのうち2チームがベスト32決定戦で1部勢と対戦することとなった。北部のノール県のアーズブルックはR1に所属し、カーンを迎える。オランダ語の地名からわかるとおりフランドル地方、ダンケルクの近くの町であり、古くから戦いの舞台となってきた人口2万2000人の都市である。3000人が集まり、カーンとの対戦に奇跡を願ったが、前後半1点ずつ奪われて、0-2と敗れたが、市民は大きな拍手を送ったのである。
 そしてアルザス地方のスティル1930はR3のチームである。人口1800人の町スティルには適切なスタジアムがなく、モルスアイムに移動してのホームゲームとなる。スティル1930はトロワと対戦し、前半から好機を作るが、次第に試合はトロワのペースとなる。しかし、GKが好セーブを続け、失点を許さない。しかし、終盤の80分にトロワの主将、バンジャマン・ニベにヘディングシュートを決められ、夢が終わった。

■敗退後にうれしい招待を受けたウイユ

 またR1の南ニベール・アンフィ・デシズは1つ格上のリーグのR3のカネ・ルシヨンに1-3と敗れている。
 ここまで紹介した3チームはいずれも地方のチームであったが、最後に取り上げるR3のウイユはイール・ド・フランス、パリ近郊のベッドタウンにある。ウイユの相手はナショナルリーグ、すなわち3部に相当するリーグに所属するコンカルノーである。3つ上のカテゴリーであり、フランスカップでもしばしばベスト32決定戦に登場している強豪である。
 ウイユはコンカルノーに0-3と敗れてしまったが、試合後にうれしいニュースが入った。イール・ド・フランスのビッグクラブであるパリサンジェルマンがウイユのメンバーをチャンピオンズリーグの試合に招待することになった。欧州を代表するビッグクラブが国内8部に相当するクラブと連携する、まさにフランスカップの素晴らしさである。(続く)

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