第2444回 荒れる幕開け、フランスカップ (2) ヨーロッパリーグ出場のマルセイユとボルドーも敗退

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■サンテチエンヌで試合を行ったアンドレジュー・ブテオン

 土曜日の1月6日に1部のアンジェ、モンペリエ、ニームが下位リーグのチームン次々と敗れたフランスカップのベスト32決定戦、翌日の日曜日も1部勢が敗れた。
 最大の驚きはマルセイユの敗退であろう。リーグ前半戦を6位で折り返し、ヨーロッパリーグにも出場している。マルセイユの相手は4部に相当するN2のアンドレジュー・ブテオンである。アンドレジュー・ブテオンはサッカーどころのロワール地方、サンテチエンヌから10数キロ離れたところにある小都市である。フランス語で飛翔という意味のエンボルという名の競技場が本拠地であるが、座席数はわずか2500、当然、サンテチエンヌのジェフロワ・ギシャール競技場を借りてのマルセイユ戦となった。

■25年前はパリサンジェルマンが歴史的勝利

 アンドレジュー・ブテオンがフランスカップで急勾配のスタンドで有名なこの競技場を使用するのは初めてのことではない。今から25年前の1994年1月のフランスカップでパリサンジェルマンと対戦している。当時のパリサンジェルマンはライー、バウド、リカルド・ゴメスという3人のブラジル代表選手、ダビッド・ジノラ、ブルーノ・ジェルマンなどのフランス代表選手を連ね、そのシーズンでは2回目のリーグ優勝を果たすことになる。3万5000人の観客が集まって声援を送ったが、試合はパリサンジェルマンが10-0と大勝する。なお、この10-0というスコアはパリサンジェルマンの公式戦における最多得点差記録である。

■またもジャイアントキリングに遭遇したマルセイユ

 それから四半世紀、夢のチームとの対戦となり、ジェフロワ・ギシャールには1万人のファンが集まった。試合は意外な展開となる。17分にアンドレジュー・ブテオンがスティーブ・マンダンダの守るゴールを破って先制する。マルセイユは酒井弘樹をアジアカップのために欠くものの、フローリアン・トーバン、ディミトリ・パイエ、今季新加入のドゥイエ・チャレタ・ツアル、ルイス・グスタボなど国内外の代表をそろえた布陣である。マルセイユはなかなか追いつくことができず、逆に試合終盤の82分には追加点を奪われてしまう。結局0-2でマルセイユは初戦敗退となってしまい、ファンを大きく失望させたのである。
 実はマルセイユはしばしばフランスカップで下位リーグのクラブに敗れている。2015年はベスト32決定戦でCFA(4部相当)に所属していたグルノーブルにPK戦で敗れ、2012年は準々決勝でナショナルリーグ(3部)のクビリーに延長戦で競り負け、2008年にはベスト16決定戦でCFA2部(5部)のコンカルノーに0-1と敗退しており、ジャイアントキリングの対象となってきたのである。

■2年連続でベスト32決定戦で下部のチームに敗れたボルドー

 そしてこの日マルセイユとともに下部リーグのチームに敗れたのがボルドーである。ボルドーもヨーロッパリーグに参戦し、リーグ戦は12位で後半戦を迎えるが、10月28日のリーグ戦でニースに敗れたのを最後に4勝6分と10試合連続で負けていない。そのボルドーの相手は2部のルアーブルである。ボルドーは後半の立ち上がりに失点し、その1点を返すことができず、0-1で敗退する。ボルドーは昨年もベスト32決定戦でN2のグランビルに敗れており、2年連続で下位のチーム相手に金星を配給した。
 その他の1部勢は前回の本連載で紹介したパリサンジェルマン、スタッド・ド・ランス、サンテチエンヌ以外に、レンヌが2部のブレストとのブルターニュ対決をPK戦で制した。また唯一の1部勢対決となったトゥールーズ-ニース戦はトゥールーズがゴールラッシュで4-1と突き放した。
 月曜日にはリールが勝利し、グラウンドコンディション不良のため延期となった試合ではストラスブールが勝利している。
 結果的に下部リーグのクラブに敗れた1部勢は5チーム、これは6チームが敗れた2013年以来、過去10年間では3回しかなかったことであり、フランスサッカーの2019年は波乱含みで始まったのである。(この項、終わり)

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