第2691回 パリサンジェルマン、フランスカップ制覇(3) 四冠に向けて始動したパリサンジェルマン

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■フランスカップでは強いパリサンジェルマン

 38年ぶりのフランスカップ決勝進出となるサンテチエンヌについて前回の本連載では紹介したが、今回は6年連続の決勝進出となるパリサンジェルマンを紹介しよう。1982年のフランスカップ初優勝以来、まさにカップ戦の王者と言える成績を残している。1970年に誕生して今年で50周年を迎えるチームであるが、1982年にフランスカップで優勝するまでのリーグ戦の戦績は最高が5位、1部での一桁順位は1981-82シーズンも含めて4シーズンのみである。そのチームがフランスカップで1982年に優勝してからは、翌年の1982-83シーズンも優勝し、翌年は初戦で敗退したが、1984-85シーズンは準優勝、リーグ初制覇となった1985-86シーズンも準決勝に進出している。リーグ戦ではリヨンが前人未到の7連覇を果たした2002年から2008年の間も優勝2回、準優勝2回、準々決勝2回と卓越した成績を残している。一方、リーグカップについては優勝1回、準優勝1回にとどまっている。

■カップ戦のスペシャリスト、パリサンジェルマン

 そして2013年にリーグ優勝してからは国内の三大タイトルのほとんどを独占している。フランスカップは2015年から6年連続で決勝進出(そのうち5回で優勝)、リーグカップについても2014年から2018年まで5年連続で優勝を果たしており、フランスカップ12回、リーグカップ8回という圧倒的な戦績である。もちろんリーグ戦でも2013年以降、優勝を逃したのは1回だけという実績を残しているが、2013年以降を黄金時代と称すならば、それ以前はリーグ優勝がわずか2回だったのに比べて、フランスカップは8回、1994-95シーズンから始まったリーグカップは3回の優勝を誇り、カップ戦のスペシャリストと言える。

■シーズン前に四冠を目指す、厳しい夏の連戦

 今季もリーグ戦では圧倒的な強さで途中打ち切りながら優勝、フランスカップ、リーグカップでも決勝に勝ち残り、チャンピオンズリーグでも準々決勝進出を決めている。国内三大タイトルに加えて欧州制覇の四冠獲得が現実のものとなっている。一方、リーグ戦開幕前に、負ければ終わりという精神的にも厳しい試合を最大で5試合も行うチームはないであろう。

■6月22日に練習再開、7月12日には観客の前でルアーブルに大勝

 パリサンジェルマンの主力選手は感染状況が深刻なブラジルのネイマール、チアゴ・シウバ、マルキーニョスなどもいるが、この夏の試合のために6月22日から練習を再開したのである。
 また、再開の初戦となるフランスカップの決勝前に2試合の親善試合を行いたいと考えていたが、3試合を行うことになった。初戦は7月12日に2部のルアーブルと対戦した。ルアーブルのオセアン競技場で行われた試合、この試合が注目を集めたのは、もちろんパリサンジェルマンが夏の陣に向けてどのようにチームを仕上げてきたか、というだけではない。まず、対戦相手のルアーブルの監督はポール・ルグアン、かつてのパリサンジェルマンの選手であり、監督を務めた男である。ルアーブルは2009年に2部に陥落してから、なかなか1部に復帰できないが、コンスタントに2部上位の戦績を残している。昨季からルグアンが指揮を執り、初年度は7位、古巣相手にどのような試合をするかが楽しみである。そして、この試合は観客を入れて行われた。フランスでは3月8日のリールーリヨン戦以来の観客を入れた試合となり、約5000人の観衆の前で試合はキックオフされた。
 両チームとも前後半で選手を入れ替えた。ルアーブルは下部組織の選手も交えたチーム構成となった。一方のパリサンジェルマンは前半はネイマール、キリアン・ムバッペ、アンヘル・ディマリア、マウロ・イカルディという4人のファンタジスタが前線に並ぶベストメンバーである。両チームとも各選手は45分間のプレーに収まり、積極的に攻撃する。ルアーブルはパリサンジェルマンに臆することなく攻撃的なプレーを続ける。しかし、これが結果的に大差となり、パリサンジェルマンが9-0と大勝したのである。(続く)

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