第3382回 パリサンジェルマン、フランスカップを制す(7) 注目のカード、リヨン-パリサンジェルマン戦

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■初めてイール・ド・フランス以外で行われる

 前回の本連載で紹介した通り、フランスカップの決勝にはリヨンとパリサンジェルマンが進出した。
 決勝は5月25日に行われるが、スタッド・ド・フランスがオリンピックの準備のため利用できないため、リールのピエール・モーロワ競技場で行われる。フランスカップの107回の歴史で、初めてパリならびにその周辺(イール・ド・フランス)以外で決勝が行われることになった。

■リヨンの優勝の壁となってきたパリサンジェルマン

 決勝の見どころとしてはいくつかある。国内リーグこそ3連覇を果たしたものの、チャンピオンズリーグでは準決勝で敗れたパリサンジェルマンが、国内タイトルを独占できるかということである。フランスカップでは最多の14回の優勝を誇り、カップ戦のスペシャリストと言われるパリサンジェルマンも過去2年は優勝を逃している。
 この王者に対して、12年ぶりに決勝に進出したリヨンがどう戦うかである。2000年代にはリーグ7連覇を誇ったリヨンであるが、近年はタイトルから見放されている。最後のタイトルが、前回決勝に進出した2012年のフランスカップである。そして、欧州カップにも連続出場を重ねてきたが、その記録も22年でストップし、過去2季は出場できなかった。今季も前半は最下位を低迷するなど不振であったが、後半戦になって順位を上げてきた。結局最終的に6位に入り、リーグ戦の成績で来季のヨーロッパリーグへの出場権を獲得している。後半戦だけの戦績で言えば12勝1分4敗(勝ち点37)、優勝したパリサンジェルマンは10勝6分1敗(勝ち点36)であるから、秋の王者ならぬ、春の王者と言える。ただし、パリサンジェルマンとの対戦はホーム、アウエーとも1-4で敗れている。
 リヨンは2012年にフランスカップを優勝した後、リーグ戦では2回2位になり、リーグカップでも2回準優勝している。注目すべきはこれらの4回のすべてでパリサンジェルマンが優勝し、リヨンのタイトルを最後に阻止しているのである。また、リーグでもカップでも優勝できなかったが、リヨンはこの間に2015年と2016年の2回、チャンピオンズトロフィーに出場、いずれもパリサンジェルマンと対戦し、敗れている。

■一足先に女子はリヨンがパリサンジェルマンを退ける

 男子のリヨンがこのところ、タイトルから離れているのに対し、女子のリヨンはフランス最強の座にある。フランスの女子サッカーは、リーグ戦のウエイトが大きく、カップ戦はそれほど注目されない。これまでリヨンがリーグ戦を16回制してきたが、これに対抗しているのがパリサンジェルマンである。リーグ戦はレギュラーシーズンが終わってから上位4チームによるプレーオフが行われる。このプレーオフの決勝は2016-17シーズン以来リヨンとパリサンジェルマンの間で争われ、パリサンジェルマンが勝利したのは2020-21シーズンだけである。これがパリサンジェルマンの唯一のリーグ優勝である。
 今季もレギュラーシーズンの成績は1位がリヨン、2位がパリサンジェルマンであった。双方、準決勝を勝ち上がり、決勝は8年連続で同じ顔合わせとなる。男子のフランスカップ決勝より早く、5月17日にリヨンのグルーパマ競技場で行われた決勝では、リヨンが2-1と勝利し、男子より先にパリサンジェルマンを下し、男子の結果がどうなるかが注目を集めた。

■キリアン・ムバッペ、パリサンジェルマンでの最終ゲーム

 また、優勝の行方とは別に、ファンの注目が集まるのは、この試合が今季の国内のサッカーの最後の試合、すなわち、パリサンジェルマンから離れることが決まっているキリアン・ムバッペのパリサンジェルマンの一員としての最後の試合だからである。リーグ戦では今季も2位以下に大差をつけて得点王となったムバッペであるが、肝心のチャンピオンズリーグでは最後の準決勝のボルシア・ドルトムント(ドイツ)戦では精彩を欠いた。そしてこれはムバッペにとってはフランスのクラブでの最後の試合となるであろう。ムバッペがどのようなプレーをフランスのファンに見せるのか、興味は尽きない。(続く)

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