第3665回 1部勢が参戦したフランスカップ(3) 苦戦して勝ち抜いたリールとアンジェ、PK戦で敗れたブレスト

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■ポルトガル系のクラブのサン・モール・ルシターノ

 前回の本連載では4部に相当するナショナル2部のチームと対戦した1部首位のRCランスと最下位のメッスがいずれも勝利したことを紹介した。
 リーグ戦では対照的な成績の両チームであるが、いずれもジャイアントキリングを狙う近隣のチームとのダービーマッチを制した。
 ナショナル2部勢と対戦した残り3チームはいずれも苦戦した。リーグ戦4位でウインターブレイクを迎え、ヨーロッパリーグでも健闘しているリールはサン・モール・ルシターノと対戦する。ルシターノはポルトガル原産の馬の種類であり、このクラブはパリ南東のサン・モール・デ・フォッセにあるポルトガル系のクラブである。会長はポルトガル人、選手もポルトガル人が多く、クラブのエンブレムもポルトガル国旗と同じ赤と緑の配色となっている。
 サン・モール・ルシターノのホームゲーム、本来の競技場は3500人しか収容できないため、クレテイユのドミニク・デュボーシェル競技場で試合を行う。収容人員1万2000人のスタンドには6500人が集まった。

■試合終盤に決勝点を上げたリール

 開始早々にサン・モール・ルシターノはCKのチャンスを得るなど、健闘する。それでもリールが優勢に進めるが、圧倒するには至らない。ボール支配率で劣るサン・モール・ルシターノも攻撃をシュートまでつなげる。前半は両チームとも無得点、後半に入り、52分にはオリビエ・ジルーがインターセプトしたチャンスからハコン・アルナル・ハラルドソンがシュートし、ネットを揺るがしたが、反則があって取り消され、66分のハラルドソンのシュートはバーに当たるなど、ゴールが遠い。90分無得点となればPK戦となるが、ようやくリールが得点をあげたのは80分、今季新加入となった20歳のノルウェー人のマリウス・ブロホルムがハラルドソンからのパスを得点した。リールは苦戦しながらも年内最終戦を白星で飾ったのである。

■2018年の準優勝チームをPK戦で下したアンジェ

 リーグ中位のアンジェとブレストも苦戦した。リーグ10位のアンジェはレゼルビエと対戦した。レゼルビエは2018年のフランスカップ準優勝チームである。当時ナショナルリーグ(3部相当)のレゼルビエは準決勝で同じナショナルリーグのシャンブリーを下すなど1度も1部リーグのチームと戦わずして決勝に進出、決勝ではパリサンジェルマンと対戦し、0-2で敗れている。このレゼルビエ相手にアンジェはなかなか得点が奪えない。53分にはレゼルビエの選手が2枚目のイエローカードとなって退場し、数的有利になったが、ゴールが奪えず、PK戦となる。PK戦でも5人目が終わったところで、両チーム4人が成功、サドンデスとなり、ようやく8人目でアンジェが勝利した。

■主将が退場処分、PK戦で敗れたブレスト

 退場者が出て、PK戦になったという試合展開はブレストも同様であった。ブレストはアブランシュと対戦した。アブランシュは19世紀に創立したクラブであり、130年近い歴史を誇る。アブランシュはモンサンミッシェルの近くにあり、ユニフォームにもモンサンミッシェルのシルエットが描かれている。これまでフランスカップでの最高成績は2017年の準々決勝進出である。
 ブレストは、昨季はチャンピオンズリーグでも決勝トーナメントのプレーオフまで進出し、フランスカップでも準々決勝に進出し、リーグ戦は9位となり、今季のリーグ戦ではこの時点で11位である。ブレストは主将のジュリアン・ルカルディナルが21分に一発退場となってしまう。数的不利になったブレストは24分に先制点を奪われる。しかし、ブレストは34分に追いつく。その後は両チームとも得点をあげることもできず、前後半の90分を終える。PK戦となり、先蹴はブレスト、ところが最初のキッカーのロマン・デルカスティージョが失敗する。ブレストは2人目から5人目まで成功させたが、アブランシュは5人全員が成功させる。ブレストPK戦で敗れ、年を越すことができなかったのである。(続く)

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