第1251回 リール、57年ぶりのリーグ制覇(4) パルク・デ・プランスでゴールイン

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■地元でリールの優勝を見たくないパリのファン

 2試合を残して首位リールと2位マルセイユの勝ち点の差は6、第37節は5月21日21時にキックオフされた。<
 首位リールはパリサンジェルマンとパルク・デ・プランスで対戦する。前回の本連載で紹介したとおり、このカードは前週に行われたフランスカップ決勝と同じである。スタッド・ド・フランスで敗れたパリサンジェルマンは本拠地で相手の優勝を許すわけにはいかない。相手には優勝がかかっているが、4位パリサンジェルマンは試合開始の前の段階で3位リヨンを勝ち点2差で追い、5位レンヌに勝ち点2差で追われる立場にあり、チャンピオンズリーグ出場を狙っている。
 しかもこの試合は今期のパルク・デ・プランスでの最終戦である。本拠地最終戦と言うことでとなるが、クロード・マケレレ、グレゴリー・クーペと言うフランス代表でも活躍した選手がシーズン終了後に引退を表明していることから、4万以上の観衆が集まり、立錐の余地もない状態になった。2人は子供を連れてのピッチへの入場、4万大観衆から万雷のスタンディングオベーションをもって迎えられ、試合はキックオフされた。

■外国人勢が占めるリールの誇る攻撃陣

 開始早々からリールの誇る中央のムーサ・ソー、右のジェルビーニョ、左のエデン・アザールという3人の攻撃陣がパリのファンのため息を誘う。5分にアザールからのパスをソーがシュートし、そのこぼれた球をMFのルドビック・オブラニアックが先制ゴールを決める。ソーはセネガル、ジェルビーニョはコートジボワール、アザールはベルギー、オブラニアックはポーランドの代表であり、いずれもフランスの経済を支えてきた国から来た選手である。現在のフランスリーグで攻撃陣がこのように外国人ばかりで構成されているチームは珍しいであろう。
 先制点を許したパリサンジェルマンのファンにとって気になるのはマルセイユでの試合である。前半33分にマルセイユはバランシエンヌ相手に先制点を許す。前回の本連載で紹介したとおり、パリサンジェルマンは地元でリールに勝利しても、マルセイユが引き分け以下であればリールの優勝を目の前で見ることになる。ところが、パリのファンの気持ちが通じたのか、マルセイユは先制を許した1分後にアンドレ・アユーが同点ゴール、さらにその3分後にはロイック・レミが逆転ゴールを決める。

■前半ロスタイムに追いついたパリサンジェルマン

 一方のパリサンジェルマンの攻撃陣はフランス代表のギヨーム・オラオとトルコ代表のメブート・エルディングの2トップである。ボール試合率は圧倒的にリールであったが、少ないチャンスをこの2人につないで活路を見出そうとする。
 そして前半ロスタイム、パリサンジェルマンはブラジル代表のネネのFKからオラオが同点ゴールを決めて、ハーフタイムを迎える。パリサンジェルマンは勝ち越し点をあげ、マルセイユがそのままのスコアで残り45分を乗り切れば、パリサンジェルマンのファンは2週連続して目の前で相手の優勝を見せられるという屈辱を避けることができる。

■リール、敵地でドローに持ち込み、優勝決定

 しかし、今年のサッカーはリールのものであった。59分にソーの放ったシュートを、地元でのキャリア最終戦となるクーペが止めることができず、リールが2-1と勝ち越す。また、マルセイユでの試合も、66分にバランシエンヌがゴールを決めて追いつく。
 77分にパリサンジェルマンはリールのDFがヘディングでクリアしたボールを守備的MFのマチュー・ボドメールが決めて2-2とタイスコアになる。パリサンジェルマンが逆転し、マルセイユが勝ち越し点をあげれば、というファンの願いもむなしく、ボールを支配し続けたのは白いユニフォームのリールであった。そして、ひと足早くマルセイユの試合が終了してしまう。リールとパリサンジェルマンの試合も2-2と言う同じスコアでタイムアップ。
 リールは実に57年ぶりの優勝を果たしたのである。(続く)

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