第1341回 秋の王者はパリサンジェルマン (3) 観客動員でもトップのパリサンジェルマン

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ホーム、アウエーとも観客動員数でトップのパリサンジェルマン

 前回までの本連載ではパリサンジェルマンが前半戦トップのチームに与えられる称号である「秋の王者」となったことを紹介したが、パリサンジェルマンが王者になったのはその戦績だけではない。
 前半戦を終えた時点でパリサンジェルマンが観客動員でもナンバーワンになっている。前半戦においてパリサンジェルマンは19試合のうち10試合をホームで戦い、1試合当たりの平均観客動員数は41,490人である。アウエーゲーム9試合の平均観客動員は24,383人である。マルセイユも10試合のホームゲームを行い、1試合当たりの平均観客動員数は40,372人、アウエーゲームは23,118人であり、ホーム、アウエーともパリサンジェルマンに及ばず2位となっている。

■2016年欧州選手権のために改修を始めたベロドローム

 パリジャンにとってはゲームだけではなく、観客動員でもマルセイユに勝ったと喜ぶ向きもあるが、少々この数字には解説が必要である。パリサンジェルマンの本拠地はパルク・デ・プランス、1970年代以降フランスでナンバーワンの競技場であったが、1998年のワールドカップ開催に向けて、国を代表するスタジアムの地位をスタッド・ド・フランスに譲った。パリサンジェルマンも本拠地を収容人員8万人のスタッド・ド・フランスに移すのでは、と言う憶測もあったが、4万8000人収容の愛着のあるパルク・デ・プランスを継続して使用している。そして、この1998年のワールドカップの自国開催の際に、フランス国内の主要競技場は改修が行われ、マルセイユの本拠地であるベロドローム競技場も収容人員を4万8000人から6万人へと拡大した。この結果、パルク・デ・プランスは国内の競技場としては3番目の規模になり、ベロドロームの改修後は、常にマルセイユが観客動員ではナンバーワンの座にあった。
 このベロドローム競技場はマルセイユ市が所有者であるが、2016年の欧州選手権開催に向けて、スタジアムを3年間かけて改修する工事が今シーズンから始まり、収容人員が4万3000人に縮小されているのである。この改修工事による影響によってマルセイユは観客動員トップの座をパリサンジェルマンに明け渡したわけである。事実、収容人員に対する入場者数の「充足率」を比較するならば、パリサンジェルマンが87%であるのに対し、マルセイユは94%であることから、パリサンジェルマンがマルセイユを観客動員で上回ったと断言することは早計であろう。

■昨季に比べてホーム、アウエーとも大きく動員数をアップしたパリサンジェルマン

 しかしながら、今季のパリサンジェルマンに対してこれまで以上のファンが注目しているということは間違いのない事実である。まず、パルク・デ・プランスでの観客動員について言うならば、昨年のシーズン全体での平均観客動員数は29,317人であり、1部リーグ20チームの中ではマルセイユ、リヨン、RCランスに次いで4番目であったが、今季の前半戦はそれに比べて4割近く多い観客を動員している。また、アウエーゲームにおいては、単純には比較できないが、昨年は平均で19,943人であり、今季前半は2割以上多い観客を動員した。観客動員は成績に依存する部分が大きいが、いかに魅力的なチームであるかという要素もあり、特にアウエーゲームでその傾向は強くなる。カタール資本の参画による大型補強により、成績だけではなく、魅力的なチームになったことがこのホーム、アウエーでの観客動員の増加を物語っているといえよう。

■満員御礼が続く仮住まいのリール

 パリサンジェルマンとマルセイユ以外のチームについては、昨季二冠を獲得したリールは、仮住まいの本拠地でほぼ全試合満員と言う状況が今季も続いている。今季の充足率はマルセイユに次ぐ93.7%であり、新本拠地の完成が望まれる。一方、秋の王者パリサンジェルマンと競り合って前半戦のリーグ戦のリーダーであるモンペリエは観客動員は昨季と比べて観客動員数が微減している。そして収容率は5割に満たず、20チームの中で下から2番目であり、チームの成績が観客動員には結びついていないようである。
 そしてマルセイユ同様、大きく観客動員を減らしたもう1つのチームがサンテエチエンヌであるが、理由はマルセイユと同様であり、スタジアム改修の影響である。
 フランスリーグは年末年始の中断、フランスカップベスト32決定戦によって、1月14日から後半戦が再開される。スタジアムへ足を運ぶファンの楽しみは尽きないであろう。(この項、終わり)

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