第3021回 2021-22フランスリーグフィナーレ(7) オセール、サンテチエンヌをPK戦で破って1部復帰

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■1960年代と1970年代のフランサッカーの主役だったサンテチエンヌ

 1980年代から2000年代にかけて国内外で活躍してきたオセールが10年ぶりの1部復帰をかけて対戦する相手はサンテチエンヌである。サンテチエンヌはこれまでリーグ優勝回数10回、今季優勝したパリサンジェルマンと並んで最多優勝を誇る。しかし、サンテチエンヌの最後の優勝は1980-81シーズン、すなわちオセールが1部に昇格した最初のシーズンのことである。オセールの出現とともに低迷したと言えるであろう。
 第二次世界大戦後のフランスサッカーは炭鉱都市の歴史であった。1950年代は北部の炭鉱都市への移民選手が支え、スタッド・ド・ランスが主役であった。そして1960年代は都市であるサンテチエンヌの時代となった。初優勝は1956-57シーズンであるが、黄金期を迎えたのは1960年代である。1967年から1970年まではリーグ4連覇、21世紀になってリヨンに抜かれるまで最多連覇記録であった。1960年代末の指揮を執ったのは1950年代にスタッド・ド・ランスの黄金期を築いたアルベール・バトーである。そして1970年代にも3連覇を果たしたが、1976年にはチャンピオンズカップ(チャンピオンズリーグの前身)で決勝に進出し、ドイツのバイエルン・ミュンヘンと対戦し、0-1と惜敗している。

■1980年代からの低迷を脱し、2010年代は1部で安定した成績

 そのサンテチエンヌに予期せぬ落日の時が到来した。最後のリーグ優勝となった1980-81シーズンの翌季は2位にとどまり、フランスカップでも準優勝したが、その次の1982-83シーズンは14位となる。サンテチエンヌがリーグ戦で二桁順位となるのは2部に降格した1961-62シーズン以来21年ぶりのことであった。そして監督がジャン・ジョルカエフに代わった1983-84シーズンには18位となり、今季同様に2部3位チームとの入替戦に臨むこととなった。相手はラシン・パリ、第1戦はコロンブでスコアレスドロー、しかし、ホームの第2戦では0-2と敗れ、1963年以来守ってきた1部から転落した。2年で復帰したものの、タイトルとは程遠く、1996年には再び2部に陥落した。その後、昇降を繰り返したが、2004年以降は1部の座にとどまり、2013年にはリーグカップ優勝、そして2010年代には欧州カップにも出場した。ちょうどオセールが2部に降格するのと対照的に1部で安定した成績を残した。

■オセールでの入替戦第1戦は1-1のドロー

 入替戦の第1戦はオセールの本拠地アベ・デシャン競技場、5月26日に行われた第1戦は満員の観衆となったが、サンテチエンヌのファンが1000人入場した。試合は15分にサンテチエンヌがカウンターアタックを仕掛け、アディル・オーシシュからザイドゥ・ユスフのタテパスが見事に決まり、GKと一対一となり、左足で先制点を決める。1点リードされたオセールは積極的に攻め、ボール支配率、パス成功数、シュート数でサンテチエンヌを圧倒するが、東京オリンピックに出場して日本の皆様もよくご存じのGKポール・ベルナルドーニに阻まれる。しかし、86分にオセールはボールを奪い、ガエタン・ペランが同点ゴールを奪い、第1戦は1-1のドローとなる。

■サンテチエンヌでも1-1、延長、PK戦の末、オセールが1部に復帰

 3日後にジェフロワ・ギシャールで行われた第2戦、サンテチエンヌは第1戦と同じ緑、オセールは第1戦とは変えて紺のユニフォームで決戦に臨んだ。この試合もアウエーチームが先制した。51分にオセールのアムザ・サキがゴールネットを揺らす。片隅のオセールファンが歓喜する。しかし、満員のファンに後押しされたサンテチエンヌは77分にマーディ・カマラの同点ゴールで追いつく。試合は1-1のまま90分が経過、ここで延長戦が行われる。大会規定はチャンピオンズリーグとは異なり、アウエーゴール2倍ルールが適用されるクラシックなものであり、オセールは得点を奪えばアドバンテージ、一方のサンテチエンヌは30分多くホームで戦うことができる。しかし、延長の30分間でも両チームノーゴール、入替戦としては37年ぶりのPK戦となる。
 PK戦は先蹴のサンテチエンヌ、1人目のリャド・ブーデブーのキックはオセールのGKドノバン・レオンが両手でセーブ、失敗となる。これ以降は両チームとも全員成功させ、オセールの5人目、ビラマ・トゥーレが成功させて、オセールが10年ぶりに1部復帰を決め、サンテチエンヌは2004年以来守ってきた1部の座から陥落したのである。(この項、終わり)

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