第3055回 パリサンジェルマンの明暗(2) スター選手同士の確執とファイナンシャルフェアプレー

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■モンペリエ戦のPKで起こった事件

 前回の本連載で紹介した通り、パリサンジェルマンは開幕から3戦連続で大量点をあげて勝利している。リーグ開幕前の日本ツアー、チャンピオンズトロフィーも含めると7連勝となる。リーグ戦でのスコアと比較すれば、日本のクラブのレベルが高さを認識せざるを得ない。パリサンジェルマンが欧州チャンピオンとなり、クラブワールドカップに出場した場合は、日本勢は高い壁になるであろう。
 さて、ゴールラッシュに沸くパリサンジェルマンであるが、グラウンドの内外でトラブルが生じた。まずは、スター選手同士の確執である。前回の本連載で紹介した第2節のモンペリエ戦は5-2と危なげないスコアであったが、先制点のチャンスをキリアン・ムバッペがPKを外し、逃してしまう。実はムバッペはPKの成功率がいいわけではなく、21本蹴って4本失敗している。そして問題が起こったのはムバッペがPKを失敗した20分後であった。モンペリエの選手がペナルティエリア内でハンドの反則で再びパリサンジェルマンがPKを得た際にネイマールがムバッペにPKを蹴らせるのではなく、自らが蹴って成功させた。

■爆弾を抱えるチームを指揮するクリストフ・ガルティエ監督

 このプレーをめぐり、ネイマールとムバッペの間に確執が生じ、クラブが2人の仲裁に入るという事態となった。
 日本ツアーから、クリストフ・ガルティエ監督はトップ下にリオネル・メッシ、この2人を2トップに起用、得点面では成功しているが、爆弾を抱えながらの戦いとなる。

■クラブ経営の健全化を図るためのファイナンシャルフェアプレー制度

 そしてグラウンドの外での心配事がファイナンシャルフェアプレー制度の適用である。ファイナンシャルフェアプレー制度とはUEFAが各クラブの財政健全化を図るためにミッシェル・プラティニ会長時代の2011年に導入されたものである。高騰する移籍金や人件費を抑制するために、スタジアムの建設や育成にかかわる経費以外の移籍金や人件費、すなわち選手に係る費用がクラブの総収入を上回ることを禁じたものである。
 過去にも制裁を受けたクラブがあり、ギリシャのパナシナイコスはUEFA主催の欧州カップへの出場権を剥奪された。またイタリアのインテル・ミラノは制裁を科され、主力選手を次々と放出せざるを得なくなった。おなじミラノ勢のACミランも2012年に制裁を受ける。ズラタン・イブラヒモビッチ、チアゴ・シウバという選手はこの制裁により、パリサンジェルマンに移籍してくることとなった。ちょうど当時のパリサンジェルマンはカタール投資庁が経営に参画したばかりであり、潤沢な資金を元に黄金時代を築くことになる主力選手を獲得したわけである。しかし、そのパリサンジェルマンも2014年にはファイナンシャルフェアプレー違反ということで罰金を科される。
 その後もパリサンジェルマンはネイマール、ムバッペ、メッシなどの大型補強を行うたびに他のクラブや他の国からファイナンシャルフェアプレー違反ではないかと嫌疑をかけられ、監視され続けてきた。
 今年の6月には、スペインリーグがパリサンジェルマンとイングランドのマンチェスター・シティは継続的にファイナンシャルフェアプレー違反であると異議申し立てを行った。事実、パリサンジェルマンは昨年度は300億円以上の赤字を計上している。

■パリサンジェルマン、マルセイユにファイナンシャルフェアプレーで制裁の動き

 このような中で英国のタイムズ紙はUEFAが10のクラブにファイナンシャルフェアプレーで制裁を科す動きがあることをスクープした。この10クラブの中にはフランスからはパリサンジェルマンとマルセイユの名があがり、罰金が科せられる模様である。
 ファイナンシャルフェアプレーに抵触しないようにモナコから当初はレンタルで獲得したムバッペは、契約の切れた今夏、レアル・マドリッド(スペイン)からのオファーを断り、パリサンジェルマンと再契約して残留した。そのムバッペの今季の年俸は5000万ユーロとも言われているが、同じ2018年にチームに加わったネイマールとの確執がこのファイナンシャルプレーの制裁によってどのような展開になるのか、気がかりである。(この項、終わり)

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