第3220回 再構築を進めるパリサンジェルマン(1) ユリアン・ナーゲルスマンとの交渉は打ち切り

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■フランスで最も人気があり、ブランド価値の高いプロチーム

 リーグ戦再開まで1月あまり、バカンスに入っていた各クラブは活動を再開し始めた。そして選手、監督の移籍が集中するのもこの時期である。フランスのクラブの中でやはり注目を集めるのはパリサンジェルマンである。
 2月にブランドスポーツバリュー社の行った調査によるとフランスのクラブで最も人気があり、もっともブランド価値のあるプロスポーツクラブはパリサンジェルマンであり、僅差でマルセイユを押さえた。

■国内では無敵も、チャンピオンズリーグでは優勝できず

 2011年にカタール資本下となってからは毎年のように大型補強を繰り返し、昨季は通算11回目のリーグ優勝を果たし、サンテチエンヌを抜いて単独最多となった。フランスを代表するクラブとして全国区の人気を誇り、ファンの期待値も高い。
 国内での無敵ぶりとは裏腹に欧州、すなわちチャンピオンズリーグでの成績はその期待にあうものではない。カタール資本となってからは12シーズン連続でチャンピオンズリーグに出場できる成績を残しており、昨季まで11シーズン連続でチャンピオンズリーグに出場している。そして11シーズン連続してグループリーグを突破し、決勝トーナメントに進出している。本連載でも毎年パリサンジェルマンの戦いを紹介してきたが、結局、優勝することはできず、11回の決勝トーナメントのうち、決勝進出は1回だけ、準決勝進出も決勝に進んだシーズンを含めて2回だけという成績に終わっている。

■就任1年目のクリストフ・ガルティエ監督を交代

 昨季は国内で実績のあるフランス人のクリストフ・ガルティエ監督を招聘した。ワールドカップ開幕までは順調で国内リーグでは独走、そしてチャンピオンズリーグでもグループリーグではベンフィカ(ポルトガル)と勝ち点、直接対決の成績、総得失点差で並び、総得点中のアウエーゴールの差で首位を譲ったものの、国内外では無敗でワールドカップを迎えた。ワールドカップでは7か国の11人の選手が活躍した。
 しかし、ワールドカップ明けのシーズン再開後には負けが込み、リーグ戦は優勝を果たしたものの、2位のRCランスとはわずか勝ち点1の差であった。フランスカップでも早期に敗退し、肝心のチャンピオンズリーグは決勝トーナメント1回戦でバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)に0-1,0-2と連敗し、早々に敗退した。
 ガルティエ監督とは2年契約であったが、すでにシーズン終盤には監督交代の意向をクラブの首脳陣が示し、1年で解約を解除、クラブは違約金覚悟で次の監督の人選に入った。

■バイエルン・ミュンヘンを率いたユリアン・ナーゲルスマンと交渉

 まず、候補となったのがドイツ人のユリアン・ナーゲルスマンである。ナーゲルスマンはまだ35歳であるが、28歳の時にブンデスリーガ史上最年少でホッフェンハイムの監督となる。シーズン終盤の就任であったが、高い勝率でチームを1部に残留させ、翌季には4位に入り、クラブ史上初めてチャンピオンズリーグの出場権を獲得する。これだけの逸材をビッグクラブが見逃すことはなく、2019年には心境著しいRBライプチヒの監督に就任し、チャンピオンズリーグでは準々決勝に進出する。2021年にはバイエルン・ミュンヘンの監督となり、就任1年目でリーグ優勝、チャンピンズリーグは準々決勝進出、そして2年目となる昨季はチャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦でパリサンジェルマンを破る。しかし、その直後にクラブから契約を破棄され、トーマス・トゥヘルに監督の座を譲った。自由の身となったナーゲルスマンにパリサンジェルマンが6月初めから手を伸ばしたのである。
 ナーゲルスマンは監督就任に当たってアシスタントコーチにティエリー・アンリの入閣を期待する。フランス代表のレジェンドであり、ベルギー代表のアシスタントコーチを務めている。モナコの監督としては満足な結果を残せなかったが、アシスタントコーチとして成果を残し、よき副官である。
 しかし、パリサンジェルマンとナーゲルスマンの交渉は不調になり、6月中旬に交渉が打ち切られたのである。(続く)

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