第3221回 再構築を進めるパリサンジェルマン(2) 新監督はルイス・エンリケ

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■ユリアン・ナーゲルスマンの次に上がった監督候補

 チャンピオンズリーグでは決勝トーナメント1回戦敗退、タイトルはリーグ戦だけという結果に終わり、パリサンジェルマンの首脳陣はクリストフ・ガルティエ監督を1年で交代させる。後任の監督としてドイツのバイエルン・ミュンヘンの監督を務めたユリアン・ナーゲルスマンとの交渉を開始したが、不調に終わってしまう。
 新指揮官の候補としてはクラブのOBであり、イタリアのボローニャの監督を務めるチアゴ・モッタ、スペイン代表監督を務めたルイス・エンリケ、ポルトガルのポルトの監督を務めるセルジオ・コンセイソン、現在はイタリアのASローマの監督を務めているジョゼ・モウリーニョなどビッグネームが並んだ。
 一方、シーズンが終了した段階でビッグネームの選手が去る。リオネル・メッシとセルヒオ・ラモスはパリサンジェルマンを去ることが決定している。
 攻守の中心選手が不在となることから、新指揮官はチームの大きな再構築に取り組むことになる。

■スペイン代表監督を務めていたルイス・エンリケ

 結局、新指揮官に選ばれたのはルイス・エンリケであった。昨年のワールドカップまでスペイン代表監督を務めており、日本の皆様にとってはグループリーグで対戦したことからよくご存じであろう。ルイス・エンリケは、2018年ワールドカップロシア大会の後にスペイン代表監督に就任した。
 初陣となった第1回UEFAネーションズリーグでは最上位のリーグAのグループリーグで2位、2019年は監督の仕事を譲ったが、2020年に行われた第2回UEFAネーションズリーグではグループリーグで首位となる。2021年に行われた欧州選手権ではベスト4、準決勝でイタリアにPK戦で敗れている。2021年10月に行われた第2回UEFAネーションズリーグのファイナルズでは準決勝でイタリアに雪辱、決勝に進出する。決勝ではフランスに敗れるが準優勝となる。そして2022年に行われた第3回UEFAネーションズリーグではグループリーグで首位となったところで、ワールドカップを迎えた。このように実質3年間の在任中の主要国際大会で不本意な結果となったのはカタールでのワールドカップだけであり、ワールドカップ終了後に解任となる。そしてルイス・エンリケが育てたスペイン代表は6月に行われた第3回UEFAネーションズリーグのファイナルズで優勝を果たす。

■バルセロナの監督として就任初年度に三冠を達成

 代表監督としてはカタールでの敗退が印象的だったルイス・エンリケであるが、クラブチームの指揮官としては3シーズン指揮を執ったバルセロナ(スペイン)での活躍は特筆すべきであろう。メッシとネイマールの所属するチームにおいて若手も起用し、就任初年の2015年にはチャンピオンズリーグで優勝しただけではなく、国内のリーグ戦とカップ戦でも優勝し、三冠を達成した。

■監督、選手としてパリサンジェルマンと対戦

 さて、ルイス・エンリケはこれまでパリサンジェルマンと何度も対戦している。優勝した2014-15シーズンのチャンピオンズリーグではグループリーグで1勝1敗、準々決勝でも対戦し、2試合ともバルセロナが勝利している。その2年後のチャンピオンズリーグでも決勝トーナメント1回戦で対戦、パリでの第1戦は0-4と敗れたが、バルセロナでの第2戦は6-1と大逆転勝利を収めて勝ち上がっている。
 そして選手としてもパリサンジェルマンと対戦している。レアル・マドリッドに所属していた1992-93シーズンのUEFAカップ準々決勝、その翌年のカップウィナーズカップ準々決勝、ルイス・エンリケは全試合に先発出場しているが、いずれもパリサンジェルマンに勝ち上がりを許し、監督時代とは対照的な結果に終わっている。特にパリサンジェルマンの歴史にとって最も誇るべき試合である1993年3月18日のパリでの第2戦、レアル・マドリッドは2試合通算得点でリードしていた70分にルイス・エンリケを下げて守備を固めたが、逆にそこから3点をあげたパリサンジェルマンが大逆転を果たす。
 選手、監督としてパリサンジェルマンと10試合戦ったルイス・エンリケはどのようなチームを作るのであろうか。(続く)

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