第322回 ソショー、リーグカップを制し、66年ぶりのタイトル

■欧州カップ出場権と国内タイトル

 欧州の頂点を決めるチャンピオンズリーグ、UEFAカップという欧州カップも準決勝を迎えており、前回までの本連載で紹介してきたところであるが、すでに来年の欧州カップへの出場権をめぐる争いも佳境を迎えているところである。欧州カップへの主な道は各国のリーグ戦で上位に入るか、カップ戦で優勝するかのいずれかである。フランスリーグはモナコが独走してきたが、年が明けてからリヨンが調子を上げ、モナコとリヨンの争いかと思われたが、ここになってパリサンジェルマンが両者の間に割って入り、三つ巴の様相となってきた。これらのチームは数字的にはほぼ来年のチャンピオンズリーグあるいはUEFAカップへの出場権を手中にしていると言ってもかまわないが、やはりタイトルを獲得してこそ欧州カップ出場という実感がわかないのではないだろうか。

■44チームが参戦したリーグカップ、記録的な観客動員

 今年のフランスの国内日程は5月29日のフランスカップ決勝まで続くが、フランス国内で最初にタイトルの行方が決まるのが3月17日に決勝が行われるリーグカップである。リーグカップは、フランスリーグ、フランスカップに次ぐ第3のタイトルという地位に甘んじているが、最初のタイトルということで一足先にUEFAアップ出場権を確保し、残り2つのタイトルのラストスパートへの足がかりにしたいとどのチームの感じることである。1部20チーム、2部20チームに加え、ナショナルリーグから4チームという合計44チームが参加し、昨年9月から熱戦が繰り広げられてきた。
 今年のリーグカップ決勝の顔合わせはソショーとナントとなった。ソショーは昨年も決勝で涙を飲み、一方のナントは初の決勝進出となる。ソショーはこの時点でリーグ4位、ナントはリーグ7位、ともに上位であるが、勝ち点はソショーが57、ナントが47と首位のリヨンの勝ち点66とはかなりの差があり、リーグ優勝は不可能であるといえよう。
 両チームともチームカラーの主体は黄色であるが、ナントが黄色のユニフォーム、ソショーが白のユニフォームを着用し、スタッド・ド・フランスのピッチに立った。両チームを迎えたのは78,409人という大観衆、今年で再開して10周年を迎えるリーグカップ史上最多の観客となった。このところフランス代表の試合では空席の目立つスタッド・ド・フランスであるが、サッカーでは久々の大観衆となった。そして大会43試合目となる決勝で通算の観客動員が史上初めて50万人の大台を突破し、フランスにおけるクラブ人気が健在であることを示した。

■古豪ソショー、PK戦の末に66年ぶりのタイトル獲得

 ソショーは自動車メーカーであるプジョーの支援を受けたフランス東部の中堅クラブである。アラン・レーマンのルノー、ジュリアン・モンターナルのシトロエンの陰に隠れた感じのあるプジョーであるが、その社員寮を活用した育成機関の存在は無視できない。古くはジョエル・バツ、フランク・シルベストルなどを輩出し、現在はディディエ・デシャンの再来と呼び声高いブルーノ・ペドレッティがこの育成機関から育ち、1部に復帰して3シーズン連続してリーグ上位を争うというソショーの活躍を支えている。
 フランスリーグが始まって3シーズン目の1934-35シーズンでリーグ優勝、そして1937-38シーズンには2回目のリーグ優勝を飾っている。一方、フランスカップも1937年に獲得し、1930年代に3つのタイトルを獲得している。1981年にはベルナール・ジャンニーニ、ヤニック・ストピラを擁してUEFAカップで準決勝に進出するというクラブ史上最高の成績を残している。しかしながらその後、タイトルから離れて久しい。第二次世界大戦後、3度フランスカップの決勝に進出するが、いずれも準優勝に終わる。昨年はリーグカップで決勝に残り、65年ぶりのタイトルなるかと注目を集めたが、モナコに1-4と大敗し、カップファイナルで1959年から通算して4連敗となった。
 ソショーの先発11人のうち、昨年の悔しい経験をしたメンバーが9人を占めた。試合は大観衆の期待にたがわぬ拮抗した展開となる。14分にナントのグレゴリー・プジョルが先制点をあげ、5分後の19分にはソショーがシルバン・モンソローのヘディングシュートで追いつく。ここから試合は一進一退となり、両チーム一歩も譲らず、互角の試合展開となる。90分経過し、試合は延長戦に突入。延長戦でも両チーム得点がないまま、時計の針は進み、120分、ナントのフレデリック・ダローシャがGKと一対一になる。このピンチをソショーのGKテディ・リチェールが防ぐ。このビッグプレーが、その直後に行われたPK戦に影響を与えないわけがない。ソショーはPK戦で5-4とナントを振り切り、ついに66年ぶりのタイトルを獲得したのである。(この項、終わり)

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