第1058回 曲がり角のリーグカップ (4) 「第2のカップ戦」でしかないフランスのリーグカップ

■第3のタイトルであるリーグカップ

 フランスは、リーグ戦、カップ戦、リーグカップと言う国内3大タイトルがあるが、同じ3大タイトルのあるイングランドや日本に比べてリーグカップの人気が低迷していることを前回の連載で紹介したが、その理由はどこにあるのだろうか。
 まず、誤解してはならないことであるが、イングランドにおいてリーグカップの人気がプレミアリーグやFAカップよりも上回っていることはなく、リーグカップは人気の面でも第3のタイトルなのである。これは日本においても同様である。日本においてはリーグカップの決勝が天皇杯の決勝よりも盛り上がりを見せているが、これは開催時期ならびに決勝のカードがかなり前にわかっていることが作用しているであろう。とはいいながら天皇杯の決勝も常に満員の観衆の前で行われている。

■フランスカップとの差が見えにくいリーグカップ

 イングランドや日本とフランスのリーグカップを比較した際に明らかに異なるのが、フランスのリーグカップはフランスカップに次ぐ「第2のカップ戦」であるということである。フランスにおいては参加チーム数こそ異なるが、フランスカップとリーグカップは同一の大会形式で行われている。フランスカップもリーグカップも国内のリーグ戦、欧州カップ戦、代表の試合のない日程を選び、準決勝までは1回戦制、そして決勝はメインスタジアムであるスタッド・ド・フランスで開催されている。マーケティング的に言うとほぼ同じ商品であり、フランスカップとの差を見出しにくい。

■若手選手の活躍の場となっているイングランドと日本

 ところが、イングランドならびに日本のリーグカップには特徴がある。それは若手選手の活躍の場としての存在を明確にしているところである。日程的にも代表チームが試合を行うインターナショナルマッチデーに近いスケジュールで行うこともある。したがって各チームとも若手選手を積極的に登用している。11人の先発メンバーのうち2、3人は通常のリーグ戦には出場できないような若手選手が名を連ね、彼らの登竜門となっている。ウェイン・ルーニーがエバートン時代に頭角を現したのもこのリーグカップであるし、昨年末には以前から注目を集めていたチェルシーのガエル・カクタがデビューを果たしている。代表クラスのビッグネームではなくユースチームに所属する原石の活躍を見るために観客は足を運ぶのである。
 また、日本においても同様である。日本の場合、ニューヒーロー賞を設け、若手選手にとって1つの目標となっている。また決勝トーナメントに入る前にグループリーグを設け、ノックアウト方式ではないため、若手選手の登用の機会もある。
 イングランドや日本では、ファンが若手選手に対して注目すると言う素地があるからこそ、このようにリーグカップは他のタイトルとは異なる存在意義を持ち、多くのファンを集めるのであろう。

■若手選手に関心のないフランスのファン

 一方、フランスでは、若手選手の育成に定評があるとは言っても、若手選手に対する注目度は低い。日本のように高校スポーツの全国大会がテレビ中継されたり、マスコミで大きく取り上げられたりすることもない。あくまでも完成品としてのトップ選手だけが注目されるのである。そしてトップ選手となるために若手選手の育成があるのである。
 フランスではリーグカップも1990年代半ばまではシーズン前あるいはシーズン後に行われ、若手選手の貴重な経験の場として機能してきた。しかし、1990年代以降、これまで紹介しているように第3のタイトルとしてテレビ中継、賞金、決勝戦の舞台、優勝チームへの欧州カップへの出場権など、ビッグタイトルにふさわしいものが与えられ、成功をしたかに見えた。しかし、現在、「第2のカップ戦」という過密日程と人気低迷に悩んでいるのである。
 イングランドや日本に比べ、フランスはサッカーに限らず若年層の大会が注目されない。これは日本やイングランドのようにスポーツが文化として定着している国との違いなのであろうか。(続く)

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