第1548回 サンテチエンヌ、32年ぶりのタイトル (5) 緑の歓喜、名門サンテチエンヌ初優勝

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■リーグカップ創設時には低迷期にあったサンテチエンヌ

 リーグカップの決勝はいずれも初めてのファイナルとなるレンヌとサンテチエンヌの顔合わせとなった。リーグカップの決勝進出は初めてとは言ってもレンヌは、リーグ優勝はないが、これまでにフランスカップで2回優勝(1965年、1971年)したことがあり、近いところでは2009年の決勝でギャンガンに敗れている。一方のサンテチエンヌは過去のタイトル数を見ればフランスを代表するクラブと言え、これまでにリーグ優勝10回、フランスカップ優勝6回を誇る。これだけの実績を誇るサンテチエンヌがリーグカップで決勝進出の経験がない理由は簡単である。サンテチエンヌの黄金時代が1960年代と1970年代であり、1981年のリーグ優勝を最後にタイトルから遠ざかっており、1990年代の半ばに始まったリーグカップのファイナルにこれまで縁がなかったのもうなずける。
 その古豪サンテチエンヌは今季はリーグ戦でも上位争いをし、第32節を終えた段階で4位、3位のリヨンとは勝ち点で2の差であり、十分にチャンピオンズリーグ出場を狙える位置にある。

■日本でも活躍したフレデリック・アントネッティ監督率いるレンヌ

 一方のレンヌは10位、1990年代末にフランソワ・ピノーが経営権を握り、2000年代に入るとリーグでは上位になり欧州カップにもしばしば出場しているが、来季の欧州行きのチケットを獲得するラストチャンスがこのリーグカップ決勝、42年ぶりのタイトルを狙う。レンヌの監督はフレデリック・アントネッティ、かつて日本のガンバ大阪を率いたことから日本の皆様ならばよくご存じであろう。リーグ戦での不振から更迭がうわさされており、この試合で負ければ今季限りでレンヌを去るであろう。

■緑のサポーターが占拠したスタッド・ド・フランス

 4月20日、サンテチエンヌにとっては初めてのスタッド・ド・フランスでの試合となる。サンテチエンヌは最後にフランスカップで優勝した1977年のメンバーをはじめとして、多数の緑のユニフォームを着たサポーターが集まる。1977年優勝時のキャプテンはGKのイワン・クーコビッチ、フランス以外の国籍の主将として初めてフランスカップを受け取っている。今や外国人主将は珍しくないがその嚆矢が36年前のサンテチエンヌである。
 一方、レンヌもチームカラーの赤と黒のサポーターが数では劣勢ながら集結し、スタッド・ド・フランスは7万9000人を超える観衆で埋まる。
 両チームともリーグカップでは5試合目となる。レンヌは準決勝までの4試合、90分で勝利しているのに対し、サンテチエンヌは4試合中3試合はPK戦で勝利している。そしてこの3度のPK戦でサンテチエンヌは驚異的な成功率を誇り、準決勝のリール戦で1本失敗しただけでそれ以外の15本は成功させている。またカップファイナルにつきものであるが、試合はロースコアになり、先制点を取ったチームが逃げ切るというパターンがこの数年続いている。

■サンテチエンヌ勝利、三大タイトルすべてを獲得した8番目のクラブに

 試合はホームゲームのような多くの緑のサポーターからの声援を受けたサンテチエンヌが予想通り攻める。サンテチエンヌの攻撃陣は中央にブラジル人でかつてマルセイユにも所属していたブランドン、右にはガボン代表のピエール・エメリック・オーバメヤン、リーグ戦での得点ランキングはズラタン・イブラヒモビッチに次ぐ2位である。そして左サイドはヨアン・モロ、この3人の攻撃陣に期待がかかる。そしてこの試合で先制点を奪ったのはサンテチエンヌである。オーバメヤンからのクロスが混戦となったが、ブランドンが交わして無人のゴールにボールを押し込む。反撃したいレンヌはCFのメフルト・エルディンが25分に負傷でピッチから離れてしまう。
 試合は終始サンテチエンヌが優勢に進め、1-0というスコアで今年もリーグカップの決勝は決着がつく。サンテチエンヌは1981年のリーグ優勝以来32年ぶりのタイトルを獲得する。そして、リーグ戦、フランスカップ、リーグカップという国内の三大タイトルを獲得したのはこれまでにマルセイユ、リヨン、パリサンジェルマン、モナコ、ボルドー、ストラスブール、ソショーの7チームである。サンテチエンヌは遅ればせながら国内の3つのタイトルをすべて獲得した8番目のクラブとなったのである。(この項、終わり)

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