第47回 伝統国スコットランドと対戦(4) ロベール・ピレス、負傷で長期離脱

■フレッシュなメンバーのスコットランド

 スコットランドとの試合の前週に両国からメンバーが発表された。まず、3月18日にスコットランドのメンバーが一足先に明らかになった。ベルティ・フォクツ新監督の人選に関心が集まったが、メンバーはスコットランドリーグあるいはプレミアリーグの所属であり、22人中8人が代表初選出というフレッシュな陣容になった。メンバー発表後、負傷によるメンバー入れ替えやメンバーの追加などあったが、選手としても監督としてもワールドカップで活躍したドイツ人のフォクツ新監督にアピールするために、グラスゴーレンジャースの主将であるバリー・ファーガソンと初選出でハーツのスコット・スティーブンは負傷しており、試合に出場できる状態ではなかったが、フランス遠征に帯同した。

■心機一転を期すユーリ・ジョルカエフ

 一方、フランスは21日に19人のメンバーを選出した。メンバーの数が少ないのはある程度選手が固定化していることに加え、リリアン・テュラム、ビリー・サニョル、アラン・ボゴシアン、クリストフ・デュガリーが負傷中であるためである。
 特に新しい選手の抜擢もなかったが、19人のメンバー発表で話題となったのがユーリ・ジョルカエフのメンバー落ちである。このところジネディーヌ・ジダンの代役の座をエリック・カリエールにとって代わられ、6月のワールドカップ後に引退を表明していることから、ブルーのユニフォームに対する思いも人一番強いはずである。しかも試合出場の機会に恵まれなかったことからドイツのカイザースラウテンからイングランドのボルトンに2月に移籍したばかりで、心機一転、最後の大輪を咲かせようとしている。今季はドイツではわずか4試合しか出場しなかったが、イングランドに移籍して1月で早くも5試合に出場している。試合に対する渇望が34歳のジョルカエフの原動力となっている。しかしながら、1996年の欧州選手権以降フランスの攻撃陣を中盤で支え、現役選手で最多得点(28点)をあげているジョルカエフに本連載の第5回から第12回までで紹介した昨年10月のアルジェリア戦以来代表入りの声がかからなかった。

■ロベール・ピレス、FAカップ準々決勝で負傷

 ところが、ジョルカエフはイングランドで起こったアクシデントによって5か月ぶりの代表ユニフォームを着ることになる。今年のコンフェデレーションズカップで最優秀選手に輝き、以降フランス代表の中心選手になったロベール・ピレスが帰国を目前にした3月23日に行われたFAカップの準々決勝のニューキャッスル戦でアクシデントに見舞われた。イングランドで今季の年間最優秀選手の最有力候補であるピレスは開始早々の1分に先制点を入れ、2点目のデニス・ベルカンプのゴールもアシストするという大活躍をする。しかし、20分すぎにギリシャ人DFのニコス・ダビザスのタックルを受け、右ひざを痛め、準決勝進出を知ることなくピッチを去る。そしてこの負傷はきわめて深刻で、日曜日に帰国の途についたピレスの行き先はフランス代表が合宿をするクレールフォンテーヌではなく、パリ市内の病院であり、ストラスブール大学病院からその道の権威であるジャン・アンリ・イエガー教授の診察を受けた。月曜日にはパリ南西のクレールフォンテーヌとは反対の方向にあるドイツ国境近くのストラスブールに向かった。その結果、6月に行われるワールドカップ出場にはかすかな望みしかないことが判明し、フランス代表にとって大きな打撃となったのである。

■背番号6、ジョルカエフが代表に合流

 現在、フランス代表は前々回紹介したように固定番号制である。試合の前々日にあたる3月25日、クレールフォンテーヌに本来いるべき背番号7はストラスブールに向かい、ピレスと同じイングランドのプレミアリーグから背番号6のジョルカエフがピレスに代わって招集されたのである。(続く)

このページのTOPへ